もう一組、印象的だったのがオーガニックの認知度を高める活動をしているモニカお母さんとハンスお父さん夫妻。哲学者であるハンスさんはジュースを、モニカさんはジャムをオーガニックの果物から作って販売しています。
「ジャム作りは家でできるから、子どもと一緒に過ごす時間をキープできて良かったの」と話すモニカさんが作るジャムは、スウェーデンではちょっと知られた存在。でも、どこのお店でも手に入るわけではないそうです。
「私たちのオーガニック精神に共感してくれるお店にしか卸さないようにしているんです。そのために、商談は何度も重ねるようにしています」と話すハンスさん。「人がものを食べるという行為を支えているのは農家や生産者です。私たちが生きることを支えてくれている彼らを守らなければいけないという思想のもと、私たちは活動を続けています」。その熱心な話しぶりに、命や自然に対する真剣な考えが強く伝わってきました。スウェーデンでオーガニックを推進している農家は全体の20%で、輸送などの交通発達による自然破壊を防ぐために地産地消も大切にされているのだそう。
自分の健康のためだけでなく、農家や生産者の生活を支えるため、近代科学に頼りすぎない豊かな土壌を残すために、取り入れられているオーガニック思考。それは庭や森で採れる果実や草花といった身近な素材を余すことなく使い、家族全員でおいしくいただく料理を作るお母さんたちの姿にも、ちょっと重なるように思えました。
スウェーデンに暮らす人々にとってベリーは貴重な自然からの恵み。その恵みがもたらす栄養を余すところなく、おいしくいただくために生まれたサフトという保存食。生きる上で大切な“食べる”という行為は自然の恵みをいただくこと、“自然と共存しながら生きる”ことの大切さを、あらためて教わる旅となりました。