北ヨーロッパのバルト海と北海にはさまれたユトランド半島と、400以上の島々からなるデンマーク。酪農品の輸出国であり、世界的な童話作家であるアンデルセンの故郷として有名ですが、近年では「世界一の幸福国」とも言われています。
首都のコペンハーゲンを歩いていて気がついたのは、新しい建物があまりなく、数百年以上も昔に作られた建物が今でも使われていること。どの建物も手入れがしっかりと行き届いている様子から、人々がずっと昔から変わらない街並みを大切にしていることがうかがえました。
また街では、国旗とハートのモチーフを何度も見かけました。聞くと、デンマークの人々は国旗が大好きで、記念日だけでなく日々の暮らしの中でうれしいことがあると国旗を掲げる習慣があるのだそう。そして貨幣に刻印されているだけでなく、王室の伝統的な家紋にも使われているハート。幼稚園では子供たちがお絵かきをするときにハートを描く練習をするほど、デンマークの人たちにとって古くから慣れ親しみのあるモチーフだと知りました。 そんな愛国心の高さが街並みからも伝わってくるデンマークを、私たちが訪れたのは1月の初旬。午前9時をまわり、ようやく空が明るくなりはじめたかと思えば日中でも薄暗い、明るい日差しが恋しくなる季節でした。
滞在中、デンマークの人たちの会話の中でよく耳にしたのが「ヒュッゲ」という聞き慣れない言葉。一言では説明しにくいというこの言葉には「至福の時」「楽しい」「心地よい」「心が落ち着く」など色々な意味がふくまれているそう。そして誰もが、それぞれの「ヒュッゲな時間」を求めて生活していることを教えてくれました。
ホテルのロビー、コンビニエンスストア、オフィスや学校など、デンマークのいたるところで見かけるりんご。スーパーの離乳食コーナーにはりんごを使ったものが並び、そして訪れる家の庭には必ずといってよいほどりんごの樹が植えられています。子供の頃にりんごの樹へ登ったこと、実ったりんごをみんなでとったこと、お母さん手作りのりんごのデザートがどれほど好きだったか…お会いした人、誰もがりんごにまつわる思い出を持っていました。デンマークに生きる人たちにとってりんごはただの果物ではなく、人生そのものに深いかかわりのある大切な存在であることを感じました。