これまでの取材でフィンランドとデンマークを訪れていた北欧諸国。今回はノルウェーとフィンランドに挟まれる形でスカンディナヴィア半島の中央に位置するスウェーデン王国を訪れました。
日本に比べて国土面積は約1.2倍程度にもかかわらず人口は約1/12、さらに人口密度は約1/19というスウェーデン。国土の65.9%は森林に覆われ、南部の地域を除けば農業には適さず酪農が農林水産業の中心となっていながらも、高い生産性によって穀物の自給率は128%(2007年)にも達するのだそう。
私たちがスウェーデンを訪れたのは、11月下旬から12月頭の期間。例年では気温が氷点下となり、雪が積もるようですが、暖冬のため気温が2~3℃の日が続き、雪もほとんど降っていませんでした。とはいえ日照時間は例年通りで、朝9時を過ぎた頃からようやく明るくなってきたかと思えば、夕方4時にはもう真っ暗。天気には恵まれていたものの、想像していた以上に太陽が出ている時間が短く感じられました。
雪が降り始める11月から3月頃まで続く、スウェーデンの長くて厳しい冬。そんな冬の行事として人々が楽しみにしているのがクリスマスです。クリスマスイブの約4週間前からはじまるアドベントの期間には、ロウソクを飾り、日曜日が訪れるごとに火をともしロウソクの数を増やしていく習わしもあります。取材で訪れた家の窓辺にもロウソクが飾られていて、みんながクリスマスの到来を楽しみにしている様子が伝わってきました。
スウェーデンでは12月24日には家族で集まり、ユールボードという食事でクリスマスを祝います。ユールボードとは、何種類もの料理をビュッフェ形式で楽しむ北欧の伝統料理スモーガスボードのクリスマス版です。滞在中、私たちもユールボードを初体験!テーブルの上に並んだのは、ニシンの酢漬け、トナカイ肉のスモーク、豚のクリスマスハム、グラバラックスと呼ばれるサーモンのマリネ、ハードブレッドなど様々な料理。実は、これらはスウェーデンで昔から食べられている保存食なのだそう。
日照時間が短く、厳しい寒さが続く冬の間は十分な農作物に恵まれず、かつては各家庭で作った塩漬け肉や干し魚などの保存食に頼りながら、スウェーデンの人々は冬を過ごしていました。冬でも輸入された野菜や果物が手に入るようになった現在では、保存食はお祝いのときにいただく伝統料理という位置づけとなっているようです。しかし果物を使ったジャムなどの保存食は一般家庭でも作られ続けていると聞き、食べ物を保存する文化が今も暮らしの中に深く根付いていることを知りました。