夜が長くて雪深い冬、そして春を経てやってくる日照時間が長い夏はスウェーデンに暮らす人たちにとっては待ち遠しい季節です。6月の第3土曜日は夏至祭の祝日とされていて、クリスマスと並ぶ大切な伝統行事となっています。夏至祭では、この時期に旬を迎える新じゃがやイチゴ、そしてニシンの酢漬けやサーモンを食べて、国全体が夏の到来を喜びながら祝います。
夏になると、森や庭などあちこちでベリーがたくさん実ります。ひとくちに「ベリー」と言っても、その種類は実に豊富!日本の私たちでもなじみのあるラズベリーやブルーベリーにはじまり、リンゴンベリー(コケモモ)、グースベリー(西洋スグリ)、レッドカラント(赤スグリ)、ブラックカラント(黒スグリ)、クラウドベリー、などなど。そしてベリーのおいしい食べ方を熟知しているお母さんたちは、お菓子だけでなく、肉料理や魚料理にもベリーを上手に組み合わせます。
北欧では『自然享受権』という、誰もが自然を楽しむ権利が守られています。これにより、森が個人所有であっても国有であっても、ルールさえ守れば誰もが森や湖へ自由に入って散歩をしたり、野生のキノコやベリーを摘んだりすることができます。ベリーが実る6~7月になると夏の風物詩のように、どの家でも森や庭でベリー摘みをすると聞き、いかにベリーがスウェーデンの人々にとって身近な食材であるかを感じました。
今も各家庭で作られている保存食のひとつに、家族みんなで摘んだベリーをたっぷりと使った『サフト』という飲み物があることを知りました。砂糖が入った濃縮果汁で、水で割って飲むサフトは、新鮮な野菜や果物が食べられない冬のビタミン補給源として作られたと言われています。一般家庭ではベリーでサフトを作ることが多いようですが、街中のスーパーではエルダーフラワー、りんご、白樺、モミの木の新芽など、様々な種類のサフトが売られていました。
私たちが宿泊したホテルでも、サフトが朝食に用意されていました。飲んでみると、ベリーの味がギュッとつまっていながらも後味はさっぱりで、起きたばかりの身体に栄養がすっとしみこむように感じました。陽射しをたっぷりと浴びたベリーで作られたサフトは、夏の訪れを待ち焦がれながら長い冬を過ごすスウェーデンの人たちにとって元気の源であることが実感できるおいしさでした。
各家庭で作られるサフトは材料だけでなく、作り方も違うと聞き、私たちは何人かのお母さんの家へお伺いし、実際にサフトの作り方を教えてもらいました。