果物ではなく、ミルクで作ったジャムに出会いました。
その名も、ミルクジャム。仏語では、コンフィチュール・ドゥ・レ。昔、お母さんがミルクと砂糖を入れた鍋を温めようと、木炭ストーブにおきっぱなしにしていたところ偶然できあがったのがはじまり、といわれているそうです。20年前、ミルクジャムのお店をはじめたガスンさんのレシピでは、80%のミルクと20%の砂糖を、カラメルになる直前まで煮つめて作ります。煮つめる時間を長くしてとろみをだした(もうひと工夫あるけれど、それは秘密!)ミルクの濃厚な味わいと、砂糖を焦がした香ばしさが特徴。長年研究を重ねて、いまの味を作ったそうです。
「ミルクジャムの人気の秘密は、ソフトキャラメルのようなやわらかで濃厚なコク。時間と愛情をかけて作るから、いつも同じ味ではないのよ」とガスンさん。新鮮なミルクがとれる土地で、ミルクをおいしく保存しようという知恵から生まれた、昔ながらのおいしさを発見しました。
ミルクジャムの秘密をもっと知りたくて、ミルクジャム作りがお得意なガロさんのお宅を訪ねました。
74歳のガロさんは、5人のお孫さんを持つおばあちゃん。1泊朝食つきのB&B(Bed&Breakfast)を営まれていて、お客さんが来るとミルクジャムをよく作るそうです。作り方は、新鮮なミルクと砂糖をまぜて(割合は、ミルク2:砂糖1程度)、5時間くらいコトコトとろ火で煮こむだけ。
「最初にまぜたら、あとはほうっておけばできあがるわ」と、ガロさん。
家庭によっては、バニラやカルバドス(りんごのブランデー)、チョコレートなどを入れるそうです。
ミルクを煮つめていくと、色が白から薄茶色、茶色へと変わり、とろみがでて、ミルクそのままの味わいとはちがう濃厚なコクがうまれます。その変化が不思議でとても楽しい!パンにつけたり、クレープにかけたり、楽しみ方はさまざまだそうです。2ヵ月ほど持つという保存食。酪農地帯ならではの知恵だと思いました。