日本で「りんごのケーキ」といえば、アップルパイやオーブンで焼いたケーキが一般的。でもデンマークには、焼かないりんごのケーキが昔からあるのだそう。ちょっと固めに煮たりんごを使って作られる、焼かないりんごのケーキの作り方を料理研究家であり、考古学者でもあるビー・スコロップお母さんに教わりました。
「エーブルグロッド」と同じように、砂糖とバニラビーンズを加えて、ちょっと固めに煮たりんご。これを深みのあるお皿の一番下にしき、その上へライ麦パンを細かくして砂糖と一緒にサラサラになるまで炒めたもの、そしてホイップクリームを重ねていき、最後にクリームの上にレッドカラントのジュレをのせれば「焼かないりんごのケーキ」のできあがり。
「1800年以前は、デンマークの台所にあるオーブンは石のものが主流だったの。でも石のオーブンを温めるには大量の燃料が必要で、ケーキを焼くのは簡単なことではなかったのよ。そんな中から生まれたのが、この焼かないりんごのケーキのレシピ。乾燥して固くなったパンをムダなく食べる、生活の知恵もこめられているのよ」とデンマークの台所の歴史と、焼かないりんごのケーキが誕生した背景を教えてくれたビー・スコロップお母さん。いつの時代のお母さんも『家族のみんなにおいしいものを食べさせたい』と思いながら台所に立っていることを、あらためて感じることができました。
「焼かないりんごのケーキ」に続き、『りんごは本当に万能!』と感じさせられたのが、リーセお母さんに教わった「エーブルフレスケ」という料理。
カリッと炒めた豚肉やベーコンと、その脂を使って炒めたタマネギとくし形切りにしたりんごをライ麦パンにそえていただく「エーブルフレスケ」。シンプルな料理にもかかわらず、りんごの自然の甘みと風味が加わることによって実に深い味わいが。そして、りんごの酸味が肉の脂っぽさをさわやかな後味にしてくれるので、何度もおかわりをしたくなるおいしさでした。
今ではユールフロコストと呼ばれるクリスマスパーティーでの一品として食べられることが多くなりましたが、かつては家庭で一年中食べられていた料理なんだそう。リーセお母さんにとっても思い出の味で「よく私のお母さんも作ってくれていたわ。台所のそばでおいしいご飯を食べるのは、とてもヒュッゲな時間ね。ダイニングで食べるよりも、不思議と会話がはずむのよ」と話してくれました。
冷凍の食材ではなく、自分の畑でとれた旬のものをなるべく使い、家族の健康に気を使いながら料理をすることを心がけているリーセお母さん。デンマークの昔ながらの台所で、今日も家族のためにおいしいご飯を作っているのでしょう。