私たちのために、たくさんのベリーのお菓子を作ってくれたエイヤさん。ラズベリーのパイ、ベリーのタルト、そしてベリーとホワイトチョコのマフィン。「マフィンやタルトといった焼き菓子では、ラズベリーとホワイトチョコをよく組み合わせるの。ホワイトチョコがラズベリーの酸味をほどよく緩和してくれるのよ」と、焼いたラズベリーのおいしさと、ホワイトチョコの相性の良さを教えてくれました。
続いていただいたのが、黒カシスと赤カシスで作った蒸しベリーのジュース。夏に摘んだベリーを保存するために作るこの濃縮ジュースは、メフスティンというフィンランドではほとんどの家庭にあるスチームジューサーで作られます。なぜベリーを蒸してジュースを作るのか、と訊ねると「おいしさや栄養分を残したまま保存できるから。ベリーは私たちにとって大切なビタミン栄養源なのよ」という答えが。また最近ではジュースステーションと呼ばれる、持っていったベリーをジュースにしてくれる場所が村に登場し、重宝されているのだそう。
氷点下の日々が続く長い冬の間も“夏の味”を楽しめるようにと、各家庭でたくさんのベリーが冷凍保存されているフィンランド。冬に備え、様々な方法で保存されたベリーを見せてもらい、「ベリーは私たちの生活の一部、いつもそばにあるものよ」というエイヤさんの言葉を深く理解することができました。
続いて、湖のほとりに住むマッティさんとアンニさんご夫婦のお宅を訪れました。このお宅でも、たくさんのベリーのお菓子を作っていただきました。
まずいただいたのが、フィンランドの伝統的なベリーのスープ、キーセリ。蒸しベリーのジュースに、赤カシスとラズベリー、水と砂糖を加え、ポテトスターチでとろみをつけた冷たいスープです。「冷凍保存したベリーで、よく作るのがこのキーセリ。解凍したベリーはそのまま食べるより、加工した方がおいしくいただけるの」とマッティさん。
ボウルいっぱいに作ってくれたのはラズベリーラハカ。ラハカと呼ばれる乳製品と生クリームと砂糖、そして新鮮なラズベリーを組み合わせた簡単なお菓子ですが、フィンランドでは最も人気のあるデザートなのだそう。「ベリーと乳製品の組み合わせは、とってもおいしいの。キーセリにラハカや生クリームを混ぜることもあるのよ」と、教えてくれました。
そして印象的だったのが、フィンランドに古くから伝わるムスティッカ・クッコという、ライ麦の生地にブルーベリーをかけて焼いたタルト。ひとくちいただくと、焼いたブルーベリーの程よい甘酸っぱさが口の中いっぱいに広がり、ライ麦独特の食感と共においしく味わえました。焼くことによって引き出されるベリーのおいしさを、フィンランドの人たちが昔から知っていた…そんなことを感じさせられた、ひとくちでした。