テストの要素を含んだシステムとメンバーで
チームのターゲットとなる来年6月開幕の世界大会へ向けて、SAMURAI BLUE(日本代表)が新たな領域へ踏み出している。様々なテストを目的として、10月6日に『キリンカップチャレンジカップ2017』に臨んだのだ。
愛知県の豊田スタジアムで対峙したのは、14年3月にも『キリンチャレンジカップ』で対戦したニュージーランドだ。1か月後に重要な公式戦を控えるオセアニア地区の雄は、高いモチベーションで日本に挑んできた。
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本は、スタメンの顔ぶれとシステムにテスト的な要素を含んでいた。「できるだけ多くの選手に出場機会を与えたい」と話していたとおりに、指揮官は今回の『キリンチャレンジカップ2017』をメンバー選考の重要な舞台と位置づけていたからである。
この日の日本は、過去数試合の4-3-3ではなく4-2-3-1のシステムでスタートした。ゴールキーパーは川島永嗣(FCメス/フランス)で、DFラインは右サイドバックが酒井宏樹(オリンピック・マルセイユ/フランス)、センターバックが吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)と槙野智章(浦和レッズ)、左サイドバックが長友佑都(インテル・ミラノ/イタリア)だ。槙野は昨年10月以来の出場で、センターバックでの起用は約2年ぶりとなる。この日が23試合連続スタメンの吉田は、ゲームキャプテンを任された。
中盤では山口蛍(セレッソ大阪)と井手口陽介(ガンバ大阪)が、ダブルボランチを形成する。2列目には右から久保裕也(KAAヘント/ベルギー)、香川真司(ボルシア・ドルトムント/ドイツ)、武藤嘉紀(1.FSVマインツ/ドイツ)が指名された。香川は6月の『キリンチャレンジカップ2017』以来、武藤は15年11月以来の出場だ。1トップを務めるのは大迫勇也(1.FCケルン/ドイツ)である。
19時23分にキックオフされた一戦は、キックオフ直後から日本の意欲的な姿勢がスタンドを沸かせていく。1分、香川が右足シュートを放つ。6分、右サイド深くまで侵入した久保のクロスに合わせて、大迫がニアサイドに飛び込む。
8分にはあわやゴールという場面が訪れる。香川のシュートが右ポストを直撃したのだ。
日本の攻撃は続く。22分に武藤が、23分に香川が、33分には久保が、相手ゴールを脅かす。前線の選手のコンビネーションやパスワークだけでなく、吉田や槙野からのロングフィードも攻撃のきっかけとなっていた。
前半の日本は得点こそ奪えなかったものの、ニュージーランドに1本のシュートしか許さなかった。チームの意欲的な姿勢が、試合内容に反映されていたと言っていいだろう。
鮮やかな揺さぶりから決勝点を奪取!
前半から降り注いでいた雨が、後半開始直後から激しくピッチを打ちつける。それでも、日本の攻撃は勢いを失わない。
50分には先制点が生まれる。右サイドからペナルティエリア内へ持ち出した山口の左足シュートが、相手のハンドを誘ってPKを獲得する。キッカーの大迫が、GKの逆を突く右足シュートを突き刺した。
スコアが動いたことで、ゲームは白熱の度合いを増す。それまで攻撃の糸口をつかめなかったニュージーランドも、ロングスローやCKを足掛かりに日本のゴールへ迫ってくる。59分には長身FWクリス・ウッドにヘディングシュートを喫し、同点に持ち込まれてしまった。
1対1となった直後の60分、香川に代わって小林祐希(SCヘーレンフェーン/オランダ)が登場する。山口が中盤の底に位置するアンカーのポジションを取り、その前に小林と井手口が並ぶ。
小林と同時に杉本健勇(セレッソ大阪)も投入され、大迫がベンチへ下がる。前線は右から久保、杉本、武藤の3トップとなり、システムは4-3-3となった。
この変更が奏功する。小林が積極的にボールに触ることで、厚みのある攻撃を取り戻すのだ。70分に武藤が退いて乾貴士(SDエイバル/スペイン)が左サイドに入ると、攻撃がさらに活性化される。運動量が落ちてきた相手守備陣に、吉田、杉本、長友らがシュートを浴びせていく。
ハリルホジッチ監督は78分に久保を下げて浅野拓磨(Vfbシュツットガルト/ドイツ)を、82分には井手口に代えて倉田秋(ガンバ大阪)を起用する。観衆の声援を受けて攻撃がさらに迫力を増していくなかで、日本はニュージーランドのゴールを打ち破る。
87分、左サイドを突破した乾のクロスを、ファーサイドの酒井がヘディングで折り返す。これをゴール前の倉田が頭でプッシュし、ネットを揺らしたのだ。相手守備陣を完璧に揺さぶったファインゴールである。倉田は国際Aマッチ初得点だ。
失点シーンを除けば、守備も危なげなかった。GK川島を中心として、日本は最後までスキを見せなかった。後半アディショナルタイムに山口と交代で送り込まれた遠藤航(浦和レッズ)も、2対1での逃げ切りを成功させたひとりだ。
「勝利はしたが楽な試合ではありませんでした」とは、試合後のハリルホジッチ監督である。それでも、テストの要素を含みながらニュージーランドを退けたのは、評価に値するものだっただろう。3万8千人を超える観衆の惜しみない拍手は、日本の戦いぶりが素晴らしかったことを物語っている。
試合データ
■10月6日 豊田スタジアム
日本代表 [2-1] ニュージーランド代表
<代表監督> ヴァイッド・ハリルホジッチ
<出場選手>
■10月6日/豊田スタジアム
日本代表 (0) 2 | <大迫 勇也 倉田 秋> | |
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ニュージーランド代表 (0) 1 | <クリス・ウッド> | |
日本 | ||
GK | 川島 | |
DF | 長友 酒井 槙野 吉田 | |
MF | 井手口(倉田) 香川(小林) 山口(遠藤) | |
FW | 武藤(乾) 久保(浅野) 大迫(杉本) | |
ニュージーランド | ||
GK | ステファン・マリノビッチ | |
DF | ウィンストン・リード マイケル・ボクスオール デーン・インガム キップ・コルビー(トム・ドイル) アンドリュー・デュランテ | |
MF | マイケル・マグリンチィ(ビル・トゥイロマ) ライアン・トーマス | |
FW | コスタ・バーバルーゼス(シェーン・スメルツ) クリス・ウッド マルコ・ロハス(テミ・ツィモプロス) |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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