開始早々から激しい攻防が繰り広げられる
6月13日にイラクとの公式戦を控えるSAMURAI BLUE(サッカー日本代表)が、7日夜に『キリンチャレンジカップ2017』に挑んだ。東京スタジアムに迎えたのは、シリア代表である。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本にとって、イラクを想定した最終チェックの機会だ。
試合前から小雨が降りしきるコンディションのなかで、ゲームは19時25分に動き出す。
日本のシステムは4-3-3だ。ゴールキーパーは川島永嗣(FCメス/フランス)で、DFラインには右から酒井宏樹(オリンピック・マルセイユ/フランス)、吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)、昌子源(鹿島アントラーズ)、長友佑都(インテル・ミラノ/イタリア)の4人が並ぶ。昌子は国際Aマッチ3試合目の出場で、吉田とのコンビは初めてだ。吉田はキャプテンマークを巻く。
中盤は逆三角形の立ち位置で、アンカーと呼ばれるポジションを山口蛍(セレッソ大阪)が託され、右インサイドハーフを今野泰幸(ガンバ大阪)、左インサイドハーフを香川真司(ボルシア・ドルトムント/ドイツ)が務める。
前線は大迫勇也(1.FCケルン/ドイツ)を中央に配し、右に久保裕也(KAAヘント/ベルギー)、左には原口元気(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)が入る。先発11人の平均年齢は、27.9歳だ。
日本は3月下旬以来の国際Aマッチだが、シリアは6月2日にテストマッチを消化していた。また、海外クラブに所属する日本人選手は、各国のリーグ戦終了から数週間の空白がある。そうした事情も重なり、アウェイのシリアの押し込まれる場面もあった。
局面の攻防も序盤から激しく、10分に日本はアクシデントに見舞われる。相手選手との接触で左肩を痛めた香川が、交代を余儀なくされてしまうのだ。代わって倉田秋(ガンバ大阪)がピッチに立つ。
シリアの激しいプレッシャーを受けながらも、日本は相手ゴールへ迫る。18分、倉田のスルーパスから大迫が左足でゴールを狙う。20分、DFラインからボールを運んだ吉田のタテパスを大迫がワンタッチでDFラインの背後へ流し、今野が相手ゴール前へ飛び出す。あと一歩でシュートへ持ち込める際どさだった。
35分にはダイナミックな展開でゴールへ迫る。山口が右サイド深くへロングパスを通すと、酒井がDFと競り合いながらクロスを入れる。ゴール前の密集でパスを受けた原口が、右足で狙った。
前半終了間際には、ペナルティエリア外から久保が左足を振り抜く。シリアの4本を上回る7本のシュートを記録して、日本は前半の戦いを終えた。
途中出場の選手が攻撃を活性化!
後半開始とともに、ハリルホジッチ監督は選手交代に動く。久保をベンチに下げ、本田圭佑(ACミラン/イタリア)を投入するのだ。ところが、選手交代の効果が表れる前に、シリアにゴールを許す。48分、相手のミドルシュートはGK川島が弾き出したものの、直後の右ショートコーナーからヘディングシュートを喫したのだった。
53分、ハリルホジッチ監督は山口に代えて井手口陽介(ガンバ大阪)を起用する。チーム最年少の20歳は、これが国際Aマッチデビュー戦だ。
4万3千人の観衆で埋め尽くされたスタンドに、歓喜が走り抜けたのは58分だ。長友、原口、大迫とパスがつながり、長友が左サイドからペナルティエリアへ侵入する。グラウンダーのパスを、今野がプッシュしたのだった。
1対1となった直後の58分、原口が退いて乾貴士(SDエイバル/スペイン)が左ウイングに入る。さらに63分、今野から浅野拓磨(VfBシュツットガルト/ドイツ)へスイッチし、浅野が右ウイングのポジションへ。今野がプレーしていた右インサイドハーフには、本田が右ウイングからスライドした。
選手交代をこれだけ行い、なおかつ選手の立ち位置も変わっているだけに、混乱が生じでもおかしくない。それでも、選手たちはハリルホジッチ監督の意図をしっかりと表現していく。
60分以降は日本がボール支配率で圧倒し、74分に本田圭佑がペナルティエリア内から決定的な一撃を見舞う。77分には乾がペナルティエリ内でDFをかわし、至近距離からゴールを襲う。83分にも長友のクロスを浅野が頭で合わせるが、相手GKにクリアされる。
攻撃陣は相手ゴールへ鋭く迫りつつ、守備陣はシリアにスキを見せない。カウンターへ持ち込まれそうな場面では、アンカーの井手口がセカンドボールを素早く回収し、ロングボールやスルーパスは吉田と昌子の両センターバックが跳ね返す。
2点目を貪欲に狙うハリルホジッチ監督は、85分に3トップ中央を大迫から岡崎慎司(レスター・シティー/イングランド)にスイッチする。その直後だった。乾のドリブルをきっかけに岡崎、倉田、浅野がゴール前で粘り、ボールは本田にわたる。背番号4は右足で狙うが、ワクを捕らえられなかった。
最後まで攻勢を仕掛けた日本の姿勢は、観衆の心をとらえたのだろう。試合は1対1で終了したものの、スタンドからピッチへ拍手と歓声が降り注がれた。
試合後のハリルホジッチ監督は、「我々にとって非常に良いテストになりました。多くの交代をして多くを試して、多くの点で得るものがあったと思います」と総括した。現時点での習熟度や改善点を確認できたシリア戦は、未来への確かな助走となったのである。
試合データ
■6月7日 東京スタジアム
日本代表 [1-1] シリア代表
<代表監督> ヴァイッド・ハリルホジッチ
<出場選手>
■6月7日/東京スタジアム
日本代表 (0) 1 | <今野 泰幸> | |
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シリア代表 (0) 1 | <マルデク・マルドキアン> | |
日本 | ||
GK | 川島 | |
DF | 長友 吉田 酒井 昌子 | |
MF | 今野(浅野) 香川(倉田) 山口(井手口) | |
FW | 大迫(岡崎) 原口(乾) 久保(本田) | |
シリア | ||
GK | イブラヒム・アルマ | |
DF | オムロ・アルミダニ ムアイアド・アルアジャン アハマド・アルサレハ アムロ・ジェニアト | |
MF | ハレド・アルムバイド(モハマド・ワエル・アルレファイ) マハムード・アルマワス(アハマド・アルドゥーニ) モハメド・ザヒル・アルグナミ・アルメダニ(ナッスーフ・ナックダハリ) タメル・ハグ・モハマド ファハド・ユーセフ(ウダイ・アブドゥル・ジャッファル) | |
FW | マルデク・マルドキアン(アラー・アルシュブリ) |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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