国内では昨年7月の『キリンチャレンジカップ2012』以来となる国際試合に、なでしこジャパン(日本女子代表)が挑んだ。6月20日、『キリンチャレンジカップ2013』が佐賀県のベストアメニティスタジアムで開催され、なでしこジャパンはニュージーランド女子代表と対戦したのである。
九州地方でなでしこジャパンの国際試合が行われるのは、史上初めてのことだ。当日はあいにくの雨模様となったが、それでも9千人に迫る観衆が集まった。佐々木則夫監督率いるチームへの、期待度の大きさの表われだろう。
ほぼ1年ぶりに招集された選手もいるなかで、佐々木監督は4-5-1の布陣でスタートした。GKには福元美穂(岡山湯郷Belle)が指名され、最終ラインは右から有吉佐織、岩清水梓(いずれも日テレ・ベレーザ)、熊谷紗希(1.FFCフランクフルト/ドイツ)、宇津木璃美(モンペリエHSC/フランス)が構成する。ダブルボランチは澤穂希(INAC神戸レオネッサ)と阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)が組み、2列目には右から川澄奈穂美(INAC神戸レオネッサ)、安藤梢(1.FFCフランクフルト/ドイツ)、宮間あや(岡山湯郷Belle)が並ぶ。1トップは大儀見優季(1.FFCトゥルビーネ・ポツダム/ドイツ)だ。安藤が大儀見と同じラインに入り、2トップのような形になることもある。
最初のシュートは12分だった。前線からプレスをかけた大儀見がボールを奪い、そのままシュートへ持ち込む。惜しくもゴールの枠を逸れたが、ゴールへの意欲に溢れるシーンだ。
今回の招集メンバーは、数年前からチームを形成してきた選手ばかりだ。ただ、代表で久しぶりにプレーする選手も含まれている。チームとして機能には多少なりとも時間がかかると思われたが、さすがは実力者が揃うなでしこジャパンだ。彼女たちらしいパスワークが、前半のうちからピッチ上で表現されていくようになる。
21分だった。センターバックの熊谷が右サイドへ展開し、攻め上がった有吉がクロスを入れる。GKが飛び出せず、DFがクリアできないクロスは、ファーサイドから飛び込んだ大儀見が右足ボレーで合わせた。鮮やかなファインゴールである。
1対0とした直後の26分にも、決定的なシーンを生み出す。右サイドの川澄の動きに、宮間が反応する。DFラインの背後へ抜け出し、右足のダイレクトボレーでシュートを放つ。GKに反応を許さなかった一撃は、惜しくもゴール右へ逸れた。
その後は決定機を作れなかったが、ニュージーランドにもチャンスを与えていない。両チームの選手が抱く勝利への思いは、ボール際の攻防を激しくしていく。ハイレベルな国際試合ならではだ。
ここで、なでしこジャパンを予想外の出来事が襲う。前半終了間際の45分、相手選手にスライディングを仕掛けた宮間が二度目の警告を受けてしまう。前半は間もなく終了したが、なでしこジャパンは後半を10人で戦うことになってしまった。
佐々木監督は後半開始とともに、福元に代えて海堀あゆみ(INAC神戸レオネッサ)を送り出す。10人となったことで安藤が2列目の左サイドに入り、4-4-1-1と言ってもいい布陣で後半に挑む。
数的不利に立たされただけに、攻撃よりも守備の時間が長くなるのは避けられない。それでも、なでしこジャパンは粘り強い対応で相手の攻めをしのいでいく。
素早くしっかりと身体を寄せ、大型の選手をフリーにしない。体格差をどのように埋めるのかは、なでしこの選手たちにとって既知のものだ。
59分、澤と安藤がピッチをあとにする。代わって出場した田中明日菜(INAC神戸レオネッサ)と大野忍(オリンピック・リヨン/フランス)は、豊富な活動量でチームを活性化する。78分に行なわれた川澄から丸山佳里奈(スペランツァFC大阪高槻)への交代も、前線からのディフェンスを強化した。
10人で勝利へ近付いていたなでしこジャパンだが、83分に同点弾を喫してしまう。試合はそのまま、1対1で終了となった。
数的不利に立った後半はシュート1本に終わり、相手には7本のシュートを浴びた。互角の攻防が繰り広げられた前半から一転して難しい試合となったが、それでもドローで試合を終えたのは悪くない結果だろう。
試合後の佐々木監督は「連携やボールを動かす力に課題を残しました」と反省点をあげつつ、攻撃の仕掛けについては「トレーニングの成果が出ました」と評価を与えた。
なでしこジャパンはこの試合を経て、6月下旬にアウェイでイングランド、ドイツと対戦する。7月20日からは前回女王として、『EAFF女子東アジアカップ2013 決勝大会』に臨む。世界の強豪との厳しい戦いへ向けて、『キリンチャレンジカップ2013』は貴重な強化の機会となったに違いない。
■6月20日 ベストアメニティスタジアム
日本女子代表 [1-1] ニュージーランド女子代表
1) MF 澤 穂希 2) DF 宇津木 瑠美 3) DF 熊谷 紗希 4) MF 阪口 夢穂 5) GK 福元 美穂 6) FW 大儀見 優季 7) MF 宮間 あや 8) DF 有吉 佐織 9) FW 安藤 梢 10) DF 岩清水 梓 11) MF 川澄 奈穂美 |
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1) MF 澤 穂希
2) DF 宇津木 瑠美
3) DF 熊谷 紗希
4) MF 阪口 夢穂
5) GK 福元 美穂
6) FW 大儀見 優季
7) MF 宮間 あや
8) DF 有吉 佐織
9) FW 安藤 梢
10) DF 岩清水 梓
11) MF 川澄 奈穂美
<代表監督> 佐々木 則夫
<出場選手>
■6月20日/ベストアメニティスタジアム
日本女子代表 (1) 1 | <大儀見優季> | |
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ニュージーランド女子代表 (0) 1 | <アナリー・ロンゴ> | |
日本 | ||
GK | 福元(海堀) | |
DF | 有吉 岩清水 熊谷 宇津木 | |
MF | 阪口 安藤(大野) 宮間 川澄(丸山) 澤(田中) | |
FW | 大儀見 | |
ニュージーランド | ||
GK | エリン・ネイラー | |
DF | リア・パーシバル アビー・アーセグ アリー・ライリー レベカー・ストット | |
MF | ケイティー・ホイル カースティー・ヤロップ(アナリー・ロンゴ) ベツィー・ハセッ | |
FW | アンバー・ハーン サラ・グレゴリウス ハンナ・ウィルキンソン(ヘレン・コリンズ) |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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