なでしこジャパン(日本女子代表)対オーストラリア女子代表に続いて、7月11日の19時55分から『キリンチャレンジカップ2012』の第2試合がキックオフされた。U-23日本代表対U-23ニュージーランド代表の顔合わせだ。関塚隆監督率いるこのチームが『キリンチャレンジカップ』に登場するのは、今回が初めてとなる。
国際大会を間近に控える両チームにとって、チームの仕上がり具合を確認する重要な機会である。U-23ニュージーランド代表は3人のオーバーエイジを先発で起用し、本番さながらのモチベーションで臨んできた。
対するU-23日本代表も、激しい生存競争を勝ち抜いた精鋭の集まりである。GKには権田修一(FC東京)が起用され、最終ラインは右から酒井宏樹(ハノーバー96/ドイツ)、鈴木大輔(アルビレックス新潟)、山村和也(鹿島アントラーズ)、徳永悠平(FC東京)の4人で形成する。28歳の徳永は、オーバーエイジでの参戦だ。
ダブルボランチはセレッソ大阪のコンビだ。扇原貴宏と山口螢である。扇原は鋭い縦パスで攻撃にスイッチを入れ、山口は巧みなカバーリングで最終ラインをサポートする。
2列目には右から清武弘嗣(1.FCニュルンベルク/ドイツ)、東慶悟(大宮アルディージャ)、永井謙佑(名古屋グランパス)の3人が並ぶ。多彩な能力を持つ彼らは臨機応変にポジションを変え、1トップの大津祐樹(ボルシアMG/ドイツ)をサポートする。
これまで課題とも言われてきたゲームの入り方は、申し分のないものだっただろう。
8分には山村のロングフィードが清武へわたり、その瞬間に複数の選手が連動する。酒井が右サイドのタッチライン際を駆け上がり、東がトップ下からペナルティエリア内へ侵入する。清武のスルーパスから東がゴールへ迫り、相手守備陣をいきなり慌てさせる。『キリンチャレンジカップ2012』へ賭ける思いが、ピッチ上でほとばしる。
直後の10分、U-23日本代表が決定的なチャンスを作り出す。左サイドを一気に加速した永井が、巧みな切り返しからラストパスを中央へ。走り込んだ東が右足ボレーで合わせたが、DFにブロックされてしまった。
11分には清武と酒井で右サイドを崩し、16分には左ショートコーナーから山村が際どいヘディングシュートを放つ。U-23日本代表のアグレッシブな姿勢が、U-23ニュージーランド代表を追い詰めていく。
アクロバティックなプレーが、スタジアムを沸かせたのは30分だ。徳永のクロスを受けた大津が、鮮やかなオーバーヘッドでゴールを襲ったのだ。大津は36分にも決定的なヘディングシュートを浴びせ、相手ゴールを脅かす。
前半終了間際の43分にも、ひと際大きな歓声が轟いた。永井のクロスを東が粘り強く収め、ペナルティエリア内で清武へつなぐ。フリーで放たれた左足シュートが、バーをかすめるように逸れていく。
後半開始早々にもビッグチャンスをつかんだ。酒井のパスを受けた永井が、右サイドから中央へ持ち込む。ペナルティエリア外から左足でコースを狙った一撃が、左ポストを直撃した。DFをひき付けた大津のフリーランニングも見事だった。
なおもチャンスは続く。50分、清武のスルーパスに反応した大津が、GKと1対1になる。直後の左CKからは、山村のヘッドがゴールマウスをとらえる。55分には扇原のタテパスを東がつなぎ、大津が右足で狙う。
もはや、いつ得点が決まってもおかしくない。あとは、その「いつ」がどこで訪れるのか。関塚監督も積極的に選手を交代し、ゲームを動かそうとする。55分、東に代わって杉本健勇(東京ヴェルディ)が、63分には山口に代わって村松大輔(清水エスパルス)が送り込まれ、70分には永井が下がり、山崎亮平(ジュビロ磐田)が登場する。控え選手が入っていくたびに、チームに新たな活力が注入されていく。
沸点寸前まで膨らんだ観衆の期待は、71分に弾けた。敵陣でセカンドボールを拾った徳永が、ペナルティエリア外から右足を振り抜く。低く速い弾道のシュートが、相手GKを急襲する。勢いを抑えきれないGKは、ボールをこぼしてしまう。
途中出場で1トップに入っていた杉本が、ここに詰めていた。「こぼれてくるかなという感じがしたので、身体が反応しました」と話したチーム最年少の19歳は、右足で冷静にプッシュしたのである。
1対0となったあとも、チームの意欲は衰えない。81分には清武と米本拓司(FC東京)が交代し、選手の配置も微修正される。来るべき世界との遭遇を見据えて、関塚監督は多くの選手を起用した。
そのなかから、U-23日本代表はさらに好機を作り出す。90+2分、途中出場の齋藤学(横浜F・マリノス)が得意のドリブルから決定機をつかんだ。
U-23日本代表の勝利は、目前に迫っていた。ところが、終了間際に失点を喫してしまった。
惜しくも勝利は逃したものの、ポジティブな要素の多い90分だっただろう。徳永を加えた最終ラインは、これまで以上の安定感を発揮した。徳永がすぐにチームへフィットしたことも、今後へのプラス材料にあげられる。
19本のシュートを記録した攻撃も、鋭さが増してきた。前線のコンビネーションが深まり、流れるようなパスワークが随所に見られた。
勝利を逃した悔しさは、選手全員が胸に刻んでいる。この日抱いた思いは、間違いなくチームを成長させるだろう。『キリンチャレンジカップ2012』をジャンピングボードとして、U-23日本代表は世界へはばたいていった。
■7月11日 国立競技場
U-23日本代表 [1-1] U-23ニュージーランド代表
1) DF 山村 和也 2) MF 扇原 貴宏 3) DF 酒井 宏樹 4) DF 鈴木 大輔 5) FW 大津 祐樹 6) GK 権田 修一 7) FW 永井 謙佑 8) MF 清武 弘嗣 9) MF 山口 螢 10) DF 徳永 悠平 11) MF 東 慶悟 |
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1) DF 山村 和也
2) MF 扇原 貴宏
3) DF 酒井 宏樹
4) DF 鈴木 大輔
5) FW 大津 祐樹
6) GK 権田 修一
7) FW 永井 謙佑
8) MF 清武 弘嗣
9) MF 山口 螢
10) DF 徳永 悠平
11) MF 東 慶悟
<代表監督> 関塚 隆
<出場選手>
■7月11日/国立競技場
U-23日本代表 (0) 1 | <杉本健勇> | |
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U-23ニュージーランド代表 (0) 1 | <ダコタ・ルーカス> | |
日本 | ||
GK | 権田 | |
DF | 徳永 山村 鈴木 酒井 | |
MF | 清武(齋藤) 東(杉本) 山口(村松) 扇原(米本) | |
FW | 永井(山崎) 大津 | |
ニュージーランド | ||
GK | ジェイク・グリーソン | |
DF | イアン・ホッグ ライアン・ネルセン(ダコタ・ルーカス) アダム・トーマス(ティム・マイヤーズ) ジェームズ・ムサ | |
MF | ティム・ペイン マイケル・マクグリンチー アレックス・フェネリディス アダム・マクジョージ(キャメロン・ハウィーソン) | |
FW | コスタ・バルバロウセス シェーン・スメルツ(マルコ・ロハス) |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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