およそ3か月ぶりとなる国際試合で、SAMURAI BLUE(日本代表)が躍動した。5月23日、『キリンチャレンジカップ2012』のアゼルバイジャン代表戦が開催され、日本代表が2対0で勝利をつかんだのだ。
戦いの舞台となったのは、エコパスタジアム(静岡)である。この地で日本代表戦が行なわれるのは、2007年6月の『キリンカップサッカー2007』以来だ。約5年ぶりとなる日本代表戦への期待が、試合前からスタジアムを包み込んでいる。
ピッチで戦う日本代表も、勝利への餓えた思いを隠さない。キックオフ直後の2分、長谷部誠(VfLヴォルフスブルク/ドイツ)のクロスを、香川真司(ボルシア・ドルトムント/ドイツ)がフィニッシュへ結びつける。7分には本田圭佑(CSKAモスクワ/ロシア)とのパス交換から、攻撃参加した左サイドバック長友佑都(インテル・ミラノ/イタリア)がペナルティエリア内まで迫った。
16分、スタジアムに大きな歓声が沸き上がる。ペナルティエリア内で長谷部のパスを受けた森本貴幸(ノバーラ/イタリア)が、右足でゴールネットを揺らしたのだ。しかし、オフサイドの判定が下される。
23分にもスタジアムが沸いた。ゴールまで30メートル強の直接FKを、本田が得意の左足で狙う。バーを叩いた一撃はGKの背中に当たり、ゴールラインを割ってCKとなる。背番号を「18」から「4」へ変えた男が、昨年8月の『キリンチャレンジカップ2011』以来の国際試合で、持ち前の存在感を発揮している。
チームを予期せぬアクシデントが襲ったのは37分だった。1トップの森本が、腰を強打してしまう。2010年10月の『キリンチャレンジカップ2010』以来の出場に闘志を燃やしていた森本だったが、ここで交代を余儀なくされた。4-2-3-1の1トップには、前田遼一(ジュビロ磐田)が起用された。
ボールポゼッションで上回る日本代表が攻め、アゼルバイジャンがカウンターで対抗するゲームは、42分にスコアが刻まれる。日本代表がゴールを奪ったのだ。
本田とのワンツーから、長谷部がフリーでボールを持ち出す。ペナルティエリア左の香川へ、ラストパスを送る。一発の切り返しでマーカーをかわした背番号10は、コントロールされたシュートでゴールネットを揺らした。「すべてがイメージどおりにいった」と自画自賛する先制弾は、代表通算10得点目の節目となるものだった。
「海外でプレーしていて試合から遠ざかっているメンバーには、試合勘を取り戻してもらう。Jリーグでいいパフォーマンスを見せているメンバーは、できるだけ試合でチェックしたい」
試合前にこう話していたとおり、アルベルト・ザッケローニ監督は後半開始から積極的に選手を交代させる。ハーフタイムを挟んでピッチへ戻ってきたメンバーには、右サイドバックの内田篤人(FCシャルケ04/ドイツ)に代わる酒井宏樹(柏レイソル)、長谷部に代わる高橋秀人(FC東京)が含まれていた。ともに国際Aマッチデビュー戦だ。主将の長谷部がベンチへ退いたため、キャプテンマークは本田に託された。
アゼルバイジャンのキックオフでスタートした後半、日本代表はいきなりピンチを迎える。1本の縦パスで左サイドを破られ、決定的なシュートへ持ち込まれる。速さ、強さ、高さを兼備する相手攻撃陣を抑えるには、一瞬たりとも集中を切らすことはできない。
追加点が生まれたのは58分だ。左サイドを突いた香川が、ゴール前へクロスを供給する。空中戦に競り勝った本田が折り返す。すかさず反応した岡崎慎司(VfBシュツットガルト/ドイツ)が、身体ごと押し込むように2点目をゲットした。
直後の60分、交代出場の酒井が決定機を作り出す。タッチライン際を駆け上がり、完璧なクロスをゴール前へ。飛び込んだ本田が、こちらも完璧なヘディングを放ったが、惜しくもGKの正面を突いた。
62分、この試合4枚目の交代カードが切られる。香川に代わって宮市亮(ボルトン/イングランド)が登場したのだ。2月のウズベキスタン戦にも招集された宮市は、これが国際Aマッチデビュー戦である。
63分、その宮市からパスを受けた高橋が、岡崎のフリーランニングに呼応する。右サイドから相手DFラインの背後を突いた岡崎へ、見事なラストパスを供給したのだ。チームの中核を担う選手と新戦力が、お互いの特徴を発揮したシーンだった。
さらなる追加点を求め、日本代表は立て続けにゴールを襲っていく。73分、岡崎からパスを受けた宮市が、右足のコントロールショットを浴びせる。76分には宮市が左サイドを駆け上がり、岡崎がヘディングシュートを見舞う。
ビッグチャンスが訪れたのは86分だ。途中出場の中村憲剛(川崎フロンターレ)の左足シュートが、相手GKを襲った。後半がロスタイムに突入した90+2分には、やはり途中出場の槙野智章(浦和レッズ)がシュートを浴びせる。得点への意欲を最後まで見せつけながら、日本代表は終了のホイッスルを聞いた。
攻撃陣にスポットライトが浴びせられるなかで、4試合ぶりの無失点を記録した守備陣も評価されるべきだろう。
GK川島永嗣(リールセSK/ベルギー)は、いつものように高い安定感を示した。センターバックのコンビを組んだ栗原勇蔵(横浜F・マリノス)と伊野波雅彦(ヴィッセル神戸)にも、及第点がつけられるはずだ。また、ダブルボランチの一角でフル出場した細貝萌(FCアウグスブルク/ドイツ)も、持ち前のボール奪取力を存分に発揮した。
6月には大切な公式戦が控えている。アゼルバイジャンを退けた今回の『キリンチャレンジカップ2012』は、日本代表にとって実りある強化の機会となったに違いない。
■5月23日 エコパスタジアム
日本代表 [2-0] アゼルバイジャン代表
1) GK 川島 永嗣 2) MF 細貝 萌 3) DF 栗原 勇蔵 4) DF 伊野波 雅彦 5) FW 岡崎 慎司 6) MF 本田 圭佑 7) MF 長谷部 誠 8) DF 内田 篤人 9) FW 森本 貴幸 10) DF 長友 佑都 11) FW 香川 真司 |
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1) GK 川島 永嗣
2) MF 細貝 萌
3) DF 栗原 勇蔵
4) DF 伊野波 雅彦
5) FW 岡崎 慎司
6) MF 本田 圭佑
7) MF 長谷部 誠
8) DF 内田 篤人
9) FW 森本 貴幸
10) DF 長友 佑都
11) FW 香川 真司
<代表監督> アルベルト ザッケローニ
<出場選手>
■5月23日/エコパスタジアム
日本代表 (1) 2 | <香川真司 岡崎慎司> | |
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アゼルバイジャン代表 (0) 0 | ||
日本 | ||
GK | 川島 | |
DF | 栗原 伊野波(槙野) 長友 内田(酒井) | |
MF | 長谷部(高橋) 細貝 本田(中村) | |
FW | 岡崎 森本(前田) 香川(宮市) | |
アゼルバイジャン | ||
GK | カムラン・アガエフ | |
DF | マヒル・シュクロフ エルヌル・アラベルディエフ ルスラン・アビショフ(ラヒド・アミルグリエフ) マクシム・メドベデフ(ブガル・ナディロフ) ウフク・ブダク アリ・ゴクデミル | |
MF | アレクサンドル・チェルトガノフ アギル・ナビエフ | |
FW | ラウフ・アリエフ(ブラニミル・スバシッチ) ジハン・オズカラ |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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