SAMURAI BLUEが新たな領域へ!
3−4−3と新戦力をテスト!
SAMURAI BLUE(日本代表)が、国際試合のステージに戻ってきた。6月1日、歴史と伝統のある『キリンップサッカー2011』が開幕し、日本代表とペルー代表が激突したのだ。
東日本大震災の影響で3月の『キリンチャレンジカップ2011』が中止となったため、日本代表にとってはAFCアジアカップカタール2011以来の国際試合だ。3月29日には被災地の復興支援のチャリティーマッチに臨んだが、今日からは再び本格的なチームの強化に乗り出していく。
今年9月に2014FIFAワールドカップアジア3次予選が始まることを念頭に置き、アルベルト・ザッケローニ監督は二つのテーマを持ってペルー戦に臨んだ。インターナショナルAマッチでは初めてとなる3−4−3をテストし、そのなかで新戦力をチェックすることである。
東北電力ビッグスワンスタジアムを舞台とした一戦は、昨夏の2010FIFAワールドカップ 南アフリカの決勝戦を担当したハワード・ウェブ主審のホイッスルとともに動き出した。試合開始前から細かい雨が降り注いでいるが、水を含んだ芝生はパススピードが速くなる。日本らしいサッカーを促すだろう。
日本の先発メンバーは、4人の海外クラブ所属選手と、7人の国内クラブ所属選手で構成された。3−4−3の「4の右」には、インターナショナルAマッチデビュー戦となる西大伍(鹿島アントラーズ)が起用されている。「4の左」は安田理大だ。1月に移籍したSBVフィテッセ(オランダ)で定位置をつかんだ安田は、09年2月の『キリンチャレンジカップ2009』、対フィンランド戦以来の代表復帰である。ともに攻撃力を持ち味とする二人には、熱い視線が注がれている。
最初の好機は9分に訪れた。昨年10月の『キリンチャレンジカップ2010』で代表デビューを飾った関口訓充(ベガルタ仙台)が、右サイドから得意のドリブルで仕掛ける。3トップ中央の前田遼一(ジュビロ磐田)が関口からパスを引き出し、ダイレクトで落とす。走り込んできたボランチの遠藤保仁(ガンバ大阪)のシュートは、相手守備陣の素早い寄せにブロックされた。
7月にコパ・アメリカ アルゼンチン2011を控えるペルーは、序盤から高い集中力とハードワークで日本に対峙してきた。国際試合ならではの緊張に満ちた攻防が、繰り広げられていく。
公式記録に記されたこの試合最初のシュートは、23分の長谷部誠(VfLヴォルフスブルク/ドイツ)の一撃だった。右サイドからのFKを、遠藤がゴール前ではなくペナルティエリア外の長谷部へつなぐ。ダイレクトの右足シュートが、鋭くゴールを襲った。即興でイメージをつないだ彼らのクオリティの高さが現われたシーンである。
長谷部は28分にもゴールへ迫った。敵陣でボールを奪い、そのまま持ち込んでフィニッシュへ結びつけている。
連動性が発揮されたのは38分だ。栗原勇蔵(横浜F・マリノス)のタテパスを岡崎慎司(VfBシュツットガルト)が受け、すぐに前田へつなぐ。長谷部がサポートし、前田からのパスをダイレクトで右サイドへ展開する。ここに、西が走り込んでいた。ファーポスト際へのクロスに、岡崎が飛び込んでいく。日本らしいパスワークから、相手ゴールへ迫ったシーンである。
両チームともに無得点に終わった前半を受けて、ザッケローニ監督が動いた。後半開始とともに本田圭佑(CSKAモスクワ/ロシア)が登場するのだ。システムは3−4−3から4−2−3−1へ変更となり、安田が中盤から最終ラインへポジションを下げる。また、前半は3バックの左サイドを担当した伊野波雅彦(鹿島アントラーズ)が、右サイドバックへスライドした。
使い慣れたシステムは、チームに躍動感をもたらす。50分、長谷部のスルーパスと関口の飛び出しがシンクロする。4分後、遠藤のタテパスに反応した前田の動き出しが、相手DFのファウルを誘う。ゴール前での直接FKだ。本田の左足から放たれた一撃が、バーをかすめるようにわずかに逸れていく。
67分、スタジアムが大きな歓声に包まれる。関口に代わって長友佑都(インテル・ミラノ/イタリア)が、前田に代わって李忠成(サンフレッチェ広島)が投入されたのだ。
長友はいつもの左サイドバックではなく、関口が担当していた4−2−3−1の「3の左」で起用される。
71分には足を傷めた安田が下がり、興梠慎三が送り込まれる。ここで長友は左サイドバックへ下がり、興梠が「3の左サイド」となる。
さらに75分、伊野波に代わって森脇良太(サンフレッチェ広島)が右サイドバックに。AFCアジアカップ2011カタールでチームを鼓舞し続けた森脇が、待望のインターナショナルAマッチデビューを飾った。
めまぐるしく選手が交代し、そのたびにポジションも変更されながら、日本は高い安定感を示した。84分、本田が強烈な左足ミドルでゴールを襲う。85分、長友のクロスを李が胸で落とし、岡崎が左足ボレーで狙う。
終盤はペルーの攻勢にあうが、GK川島永嗣(リールセ/ベルギー)が冷静な対応でゴールを守り抜く。日本も最後までゴールを目ざし、試合終了間際に本田の突破が直接FKにつながる。本田はカベの位置を指示し、後方へステップを刻み……しかし、キッカーは遠藤だった。カベを無力にしたボールがゴールへ迫っていくが、惜しくも左へ逸れてしまう。その直後、ウェブ主審のホイッスルが鳴り響いた。
「少なくとも私がこの試合で欲しいと思っていた情報は、集めることができた」
試合後のザッケローニ監督は、3−4−3と選手のテストに成果があったことを明かした。初采配となった昨年10月の『キリンチャレンジカップ2010』から、インターナショナルAマッチでの不敗記録が9試合に更新されたことを問われると、「もちろん今日も勝ちたかったですが」と苦笑いを浮かべた。続けて語られた言葉に、この試合の意味が凝縮されている。
「我々はつねに自分たちのサッカーをやることを目ざしている。今日の試合に関しては、これまでの試合より自分たちのサッカーができなかったかもしれないが、ペルーも称賛に値するチームだった。W杯予選までの残り時間のなかで、選手の色々な情報を、さらに集めていきたいと思っている」
アジアの頂点に立ったチームをさらに進化させていくために、ザッケローニ監督は様々なテストを行なった。残念ながら勝利をつかむことはできなかったものの、このペルー戦はチームが新たな可能性を見出した一戦として、のちに振り返られることになるはずだ。
■6月1日 東北電力ビッグスワンスタジアム
日本代表 [0-0] ペルー代表
1) GK 川島 永嗣 2) DF 伊野波 雅彦 3) DF 栗原 勇蔵 4) FW 前田 遼一 5) DF 今野 泰幸 6) DF 安田 理大 7) MF 西 大伍 8) FW 岡崎 慎司 9) FW 関口 訓充 10) MF 遠藤 保仁 11) MF 長谷部 誠 |
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1) GK 川島 永嗣
2) DF 伊野波 雅彦
3) DF 栗原 勇蔵
4) FW 前田 遼一
5) DF 今野 泰幸
6) DF 安田 理大
7) MF 西 大伍
8) FW 岡崎 慎司
9) FW 関口 訓充
10) MF 遠藤 保仁
11) MF 長谷部 誠
<代表監督> アルベルト ザッケローニ
<出場選手>
■6月1日/東北電力ビッグスワンスタジアム
日本代表 (0) 0 | ||
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アルゼンチン代表 (0) 0 | ||
日本 | ||
GK | 川島 | |
DF | 伊野波(森脇) 栗原 今野 安田(興梠) | |
MF | 遠藤 長谷部(細貝) 西(本田) | |
FW | 岡崎 前田(李) 関口(長友) | |
ペルー | ||
GK | サロモン・リブマン | |
DF | サンティアゴ・アカシエテ ワルテル・ビルチェス レンソ・レボレド ルイス・アドビンクラ ヘスス・ラバナル(ジョシマル・ジョトゥン) | |
MF | リナルド・クルサード(カルロス・ロバトン) ルイス・ラミレス アダン・バルビン(ホセプミル・バジョン) クリスティアン・クエバ(ウィリアム・チロケ) | |
FW | ジェフェルソン・ファルファン(ラウル・ルイディアス) |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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