鮮やかな勝利だった。札幌ドームのピッチに立ったSAMURAI BLUEは、大観衆に頼もしい姿を見せてくれた。8月10日に開催された『キリンチャレンジカップ2011』の韓国戦で、日本代表は3−0の勝利を飾ったのである。
選手たちの勝利に対する意欲は、キックオフ早々に読み取ることができた。2分、岡崎慎司(VfBシュツットガルト/ドイツ)が思い切り良く左足を振り抜く。4分、本田圭佑(CSKAモスクワ/ロシア)のシュートがDFに当たり、右CKを得る。ショートコーナーから、吉田麻也(VVVフェンロ/オランダ)がファーポストに飛び込む。
直後にチャンスを作られても、日本に臆するところはない。20分前後にも二度の好機を許すが、攻撃的な姿勢が揺らぐことはないのだ。
最初のビッグチャンスは23分だ。本田の横パスを受けた香川真司(ボルシア・ドルトムント/ドイツ)が、ペナルティエリア正面外から右足ダイレクトでゴールを狙う。相手GKに防がれたものの、リズムの良いパスワークがフィニッシュにつながった。33分にはカウンターから好機をつかみ、李忠成(サンフレッチェ広島)の左足シュートが相手GKを鋭く脅かす。
スタンドに走り抜けるゴールの予感が、歓喜へ変わったのは35分だ。33分の右CKをきっかけに韓国を自陣に釘付けとした日本は、敵陣右サイド深くで遠藤がボールを奪う。ペナルティエリア内の李へショートパスを通す。李がヒールパスで背後へ残す。すかさず反応した香川が、相手のチェックをかいくぐって右足で蹴り込む! パスワークと個人技の融合による見事な先制弾だった。
この直後、負傷した岡崎に代わって清武弘嗣(セレッソ大阪)が投入される。U−22日本代表と所属クラブでの活躍を評価された21歳が、チームの勢いを加速させる。
後半開始直後の53分だった。左サイドバックの駒野友一(ジュビロ磐田)が、ペナルティエリア左からゴールへ迫る。相手選手をかわしてシュートを放つ。GKが弾いたボールを清武が丁寧につなぐと、本田が左足インサイドでゴール左スミへ流し込んだのだ。
さらに55分、札幌ドームにこの日三度目の歓喜が訪れる。自陣センターサークル付近で遠藤と香川が連動してボールを奪い、日本がカウンターを仕掛ける。李、本田、香川とテンポ良くパスがつながり、香川が右サイドへ展開する。オープンスペースを突いた清武が、ゴール前へグラウンダーのクロスを送る。
香川が、飛び込んできた。
ニアサイドへ走り込んだ日本の背番号10は、右足ダイレクトでボールの角度を変える。相手GKをあざ笑うかのように、ゴールネットが揺れた。ファーサイドへ走り込むことで相手DFの注意を惹き付け、香川の走り込みを助けた李のフリーランニングも見事だった。
試合の行方はこの時点で決したと言っていいだろう。
3点目を奪った直後、アルベルト・ザッケローニ監督は駒野に代えて槙野智幸(1.FCケルン/ドイツ)を投入する。66分には長谷部誠(Vflヴォルフスブルク/ドイツ)がベンチへ下がり、阿部勇樹(レスター・シティ/イングランド)が起用される。また、73分には遠藤が退き、家長昭博(RCDマジョルカ/スペイン)が登場した。香川も85分で交代となり、細貝萌(FCアウクスブルク/ドイツ)がピッチへ飛び出していった。
控え選手を積極的に起用しつつも、攻撃の勢いが衰えることはなかった。右サイドを駆け抜けた内田篤人(FCシャルケ04/ドイツ)の左足シュートがポストを叩き、李の強烈なヘディングシュートが枠をとらえた。後半終了間際には、本田の直接FKが札幌ドームを沸かせた。
終盤に何度か訪れた危機は、GK川島永嗣(リールセSK/ベルギー)を中心とする守備陣が跳ね返した。無失点試合は、6月の『キリンカップサッカー2011』から3試合連続となる。ディフェンス陣の奮闘も多いに評価されていいだろう。
試合終了のホイッスルが鳴り響くと、観客席から大きな拍手が沸き上がった。
PK戦を除いた韓国戦の勝利は、2005年8月以来6年ぶりで、ホームでの勝利は1998年3月以来13年ぶりとなる。また、3点差以上の勝利は、1994年以来37年ぶり2度目のことだ。歴史の目撃者となった観衆の拍手は、心地よい音色となってピッチへ注がれた。
いくつもの成果を見つけることのできる一戦だった。
1月のAFCアジアカップカタール2011を制した4−2−3−1をベースとしながら、ビルドアップ時は両サイドバックが前線へ張り出して3−4−3のような形になった。サイドで数的優位を作り出すことを目的としたものだが、それによって、高い位置でのボール奪取や攻守における連動性の高まりといった波及効果がもたらされている。
また、久しぶりに先発で起用された選手や途中交代の選手が、それぞれのクオリティを示したのも評価できる。長友佑都(インテル・ミラノ/イタリア)が欠場した左サイドバックでは、ベテランの駒野がきっちりと仕事を果たした。それぞれのポジションに複数の候補者を揃え、選手層の厚みはさらに増している印象だ。チーム内の激しい競争が、個々の成長を促すことにもつながっている。
「この試合については結果も大切だが、内容も重視していた。あと3週間後にはじまるアジア3次予選へ向けて、できるだけ本番の雰囲気に慣れてほしかった」
アルベルト・ザッケローニ監督は、試合後の記者会見でこう語った。続けて「試合開始から集中力を保ち、自分たちがやるべきことをピッチ上で表現できた」と選手たちを讃えたものの、「明日からは修正点も分析しなければ」と、勝利の余韻に浸ることはなかった。指揮官の視線は、9月2日に開幕する2014FIFAワールドカップ ブラジル アジア3次予選へ向けられていた。
昨年10月8日の『キリンチャレンジカップ2010』でアルゼンチンに1−0の勝利を収めてから、ザッケローニ監督率いる日本は11試合連続で負けなしという成績を残している。3次予選は半年に及ぶ長丁場だが、6月の『キリンカップサッカー2011』と今回の『キリンチャレンジカップ2011』で力を蓄えたチームに、死角はない。それぞれの胸で膨らむ自信とともに、ブラジルへ向けて力強く前進していくことだろう。
■8月10日 札幌ドーム
日本代表 [3-0] 韓国代表
1) GK 川島 永嗣 2) DF 吉田 麻也 3) FW 李 忠成 4) FW 岡崎 慎司 5) DF 駒野 友一 6) FW 本田 圭佑 7) MF 長谷部 誠 8) DF 内田 篤人 9) MF 遠藤 保仁 10) DF 今野 泰幸 11) FW 香川 真司 |
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1) GK 川島 永嗣
2) DF 吉田 麻也
3) FW 李 忠成
4) FW 岡崎 慎司
5) DF 駒野 友一
6) FW 本田 圭佑
7) MF 長谷部 誠
8) DF 内田 篤人
9) MF 遠藤 保仁
10) DF 今野 泰幸
11) FW 香川 真司
<代表監督> アルベルト ザッケローニ
<出場選手>
■8月10日/札幌ドーム
日本代表 (1) 3 | ||
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韓国代表 (0) 0 | ||
日本 | ||
GK | 川島 | |
DF | 駒野(槙野) 内田 今野 吉田 | |
MF | 遠藤(家長) 長谷部(阿部) | |
FW | 岡崎(清武) 香川(細貝) 本田 李 | |
韓国 | ||
GK | チョン・ソンリョン | |
DF | イ・ジェソン キム・ヨングォン(パク・ウォンジェ)(パク・チュホ) イ・ジョンス チャ・ドゥリ | |
MF | イ・ヨンレ(キム・シンウク) キム・ジョンウ(ナム・テヒ) ク・ジャチョル キ・ソンヨン | |
FW | パク・チュヨン(ユン・ビッカラム) イ・グノ(キム・ボギョン) |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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