日産スタジアムでパラグアイを1−0で退けた3日後、舞台を大阪長居スタジアムへ移して『キリンチャレンジカップ2010』が開催された。対戦相手のグアテマラとは、国内外を通じて初めての顔合わせとなる。アルベルト・ザッケローニ新監督は就労ビザの関係で采配をふるうことができないため、パラグアイ戦に続いて日本サッカー協会の原博実技術委員長が監督代行としてチームを率いた。
パラグアイ戦直後に遠藤保仁(ガンバ大阪)、松井大輔(トム・トムスク/ロシア)、今野泰幸(FC東京)、栗原勇蔵(横浜F・マリノス)の4選手が離脱した日本は、試合前日の練習でゲームキャプテンの中澤佑二(横浜F・マリノス)の負傷という事態に直面してしまう。パラグアイ戦前にケガで辞退した田中マルクス闘莉王(名古屋グランパス)と長谷部誠(ヴォルフスブルク/ドイツ)を含め、実に7人の選手がチームを離れていたのだ。その結果、グアテマラよりひとり少ない17人での戦いを強いられることとなった。中2日のスケジュールや連日の猛暑を考えれば、ホームのアドバンテージも薄らいでしまうような状況である。
それでも、日本は開始直後から躍動感溢れるプレーでスタジアムを沸かせていく。キックオフの余韻が残る2分、右サイドの香川真司(ドルトムント/ドイツ)のFKを本田圭佑(CSKAモスクワ/ロシア)がヘディングで合わせる。本田は6分に直接FKから相手ゴールを脅かし、9分には右サイドからドリブルで持ち込んで左足を振り抜いた。09年5月に長居スタジアムで行われた『キリンカップサッカー2009』で代表初得点を決めたレフティーは、この日も意欲的にゴールを目ざしていく。
序盤からスタジアムに漂うゴールの予感は、12分に早くも現実となる。左サイドを突破した長友佑都(チェゼーナ/イタリア)のクロスを、相手DFの間へ走り込んだ森本貴幸(カターニャ/イタリア)が見事なヘディングシュートで合わせたのだ。長友が左サイドへ飛び出すきっかけを作った、香川と乾貴士(セレッソ大阪)のパスワークも鮮やかだった。
なおも日本の猛攻は続く。15分、2試合連続スタメンとなった細貝萌(浦和レッズ)のスルーパスが、最終ラインの背後をついた森本につながる。左斜め後方からのパスを左足ダイレクトシュートで狙った一撃は、惜しくも相手GKに阻まれてしまう。
追加点が生まれたのは20分だ。本田のスルーパスから香川がペナルティエリア右へ侵入し、GKと1対1になる。香川の右足シュートはGKに弾かれるが、こぼれ球にいち早く反応したのは日本の背番号19だった。左足で押し込んだ森本が、自身2点目となるゴールを記録したのである。「ゴールすることだけを考えていたので、2点取れて嬉しい」と、試合後の森本は素直に喜びを表わした。
直後の22分に失点を喫した日本だが、試合のイニシアチブは譲らない。本田、乾、香川の3人が流動的にポジションを変え、相手守備陣を幻惑する。長友と駒野友一(ジュビロ磐田)の両サイドバックも、効果的なオーバーラップで決定的なシーンを作り出す。
その両サイドバックが、前半終了間際の主役となった。40分、香川のスルーパスに連動した駒野が、右サイドを駆け抜ける。グラウンダーのクロスに森本と乾が反応し、相手守備陣を慌てさせる。
44分、今度は長友だ。本田が絶妙なスルーパスを通し、背番号5の左サイドバックがフリーで抜け出す。中央には森本、香川、乾がフリーで詰めていたが、長友はシュートを選んだ。惜しくもゴール左へ逸れてしまったが、積極性を感じさせたシーンである。
後半開始とともに、原監督代行は長友に代えて永田充(アルビレックス新潟)を、乾に代えて藤本淳吾(清水エスパルス)を送り込む。最終ラインは右から駒野、岩政大樹(鹿島アントラーズ)、永田、槙野(サンフレッチェ広島)という並びへ変更された。前半は左センターバックだった槙野が、長友のポジションへスライドしたのである。永田はこれが国際Aマッチへのデビューだ。
試合の構図は前半と変わらない。日本が圧倒的に攻め込んでいく。1トップの森本と本田を軸に、藤本や橋本、途中出場の岡崎慎司(清水エスパルス)がボールに絡む。セットプレーやその流れでは、岩政も果敢にゴールへ襲いかかった。2−1のまま終了のホイッスルを聞いたが、前後半合わせて23本のシュートを浴びせる猛攻は観衆を納得させるものだったに違いない。
「ザッケローニ監督にうまくチームを引き継ぐことを一番に考えていたので、その意味ではいい流れを作れたと思う」とは、試合後の原監督代行である。「課題はあるけれど、そのなかで勝てたことは評価できるし、トライできたことは良かった」と、本田も振り返っている。
厳しい日程のなかで連勝を飾り、それぞれが自分のプレーと向き合った今回の『キリンチャレンジカップ』は、新しいチームの土台作りの機会となった。南米の強豪アルゼンチンを迎える10月8日の『キリンチャレンジカップ』が、いまから楽しみである。
■9月7日 大阪長居スタジアム
日本代表 [2-1] グアテマラ代表
1) MF 橋本 英郎 2) DF 岩政 大樹 3) MF 細貝 萌 4) DF 槙野 智章 1) GK 楢 正剛 6) MF 本田 圭佑 7) FW 森本 貴幸 8) MF 乾 貴士 9) DF 長友 佑都 10) DF 駒野 友一 11) MF 香川 真司 |
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1) MF 橋本 英郎
2) DF 岩政 大樹
3) MF 細貝 萌
4) DF 槙野 智章
1) GK 楢 正剛
6) MF 本田 圭佑
7) FW 森本 貴幸
8) MF 乾 貴士
9) DF 長友 佑都
10) DF 駒野 友一
11) MF 香川 真司
<代表監督> 原 博実(代行)
<出場選手>
■9月7日/大阪長居スタジアム
日本代表 (2) 2 | <森本貴幸 森本貴幸> | |
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グアテマラ代表 (1) 1 | <マリオ・ロドリゲス> | |
日本 | ||
GK | 楢 | |
DF | 駒野 長友(永田) 岩政 槙野 | |
MF | 橋本 香川(岡崎) 細貝 本田 乾(藤本) | |
FW | 森本(中村憲) | |
グアテマラ | ||
GK | リカルド・トリゲニョ(ルイス・モリーナ) | |
DF | リカルド・ロドリゲス カルロス・ガジャルド グスタボ・カブレラ ジョナサン・ロペス | |
MF | カルロス・カスティージョ ギジェルモ・ラミレス(ミノル・ロペス) エルウィン・アギラル(フリオ・エスタクイ) エドガル・コット(エドガル・チンチージャ) | |
FW | ジョニー・ヒロン(カルロス・カストリージョ) マリオ・ロドリゲス(ドワイト・ペッサロッシ) |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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