2008年1月の『キリンチャレンジカップ2008』からスタートした岡田ジャパンの2010FIFAワールドカップ南アフリカへの歩みも、いよいよ最終局面を迎えた。5月24日、今年3度目となる『キリンチャレンジカップ2010』が埼玉スタジアム2002で開催され、日本代表は宿敵・韓国代表と激突したのだ。岡田武史監督率いるチームの国内最終戦とあって、スタジアムは57,873人の大観衆で膨れ上がった。
ファーストシュートは日本だった。キックオフ直後の2分、大久保嘉人(ヴィッセル神戸)がペナルティエリア外から右足を振り抜く。チーム全体の意欲を表す一撃に、スタジアムが沸き立つ。4分には左サイドで直接FKを獲得し、遠藤保仁(ガンバ大阪)のクロスに中澤佑二(横浜F・マリノス)が飛び込む。悪くない立ち上がりだ。
ところが6分、韓国が牙を剥く。日本陣内左サイドでルーズボールをキープしたパク・チソンが、パワフルなドリブルから右足を振り抜く。GK楢正剛(名古屋グランパス)は懸命に右手を伸ばすが、わずかにバウンドをしたボールはゴール左スミに突き刺さった。
いきなりビハインドを背負った日本だが、11分に大久保の仕掛けから直接FKを得る。ゴール左の角度から遠藤が狙ったボールはカベに阻まれるが、こぼれ球を長友佑都(FC東京)が左足でシュートする。得意とするFKから、日本は相手ゴールに迫った。
20分、またも大久保が相手守備陣を切り裂く。左サイドバックの今野泰幸(FC東京)のパスを受け、ドリブルで突進していく。左サイドから内側へ持ち出し、ペナルティエリア外から思い切り良く右足を振り抜く。わずかにゴール右へ逸れた一撃にため息が漏れるが、すぐに拍手とコールがスタンドを包み込む。
33分には日本らしい連動性が発揮された。右ボランチの長谷部誠(ヴォルフスブルク/ドイツ)の縦パスを中村俊輔(横浜F・マリノス)がダイレクトで落とすと、左ボランチの遠藤がすかさずパスを受ける。1トップの岡崎慎司(清水エスパルス)がDFラインの背後を突く。遠藤からのパスは惜しくも相手GKに処理されたが、4人のイメージが見事に合致したシーンである。このまま0-1で前半は終了するが、ハーフタイムを告げるホイッスルが運んできたのは、後半への期待感だった。
後半開始とともに、韓国が4-4-2から4-2-3-1へシステムを変更してきた。「前半は攻め込まれるシーンが多々あったのでシステムを変えた」とホ・ジョンム監督が振り返ったように、日本の攻撃をしのぐための守備的なシフトチェンジである。
岡田監督も動く。まず63分、中村俊を下げて森本貴幸(カターニャ/イタリア)を投入する。1トップの岡崎が中盤の左サイドへ下がり、中村俊の右サイドには大久保が左サイドからスライドする。
さらに72分、中村憲剛(川崎フロンターレ)が本田圭佑(CSKAモスクワ/ロシア)に代わって登場し、それまで本田が務めていたトップ下に入る。フレッシュなタレントの相次ぐ投入が、攻撃を活性化していく。
74分、森本がスタジアムを沸かせる。右サイドのスローインを受けると、鋭いターンから右足でシュートを浴びせる。残念ながらGKの正面を突いてしまったが、22歳のストライカーが潜在能力を見せつけた。
岡田監督はさらに2枚の交代のカードを切り、何とかして韓国のゴールをこじ開けようとする。選手も闘志を剥き出しにして攻め込んでいく。
強烈な存在感を発揮したのは長谷部だ。局面の攻防でクリーンかつハードに戦い、中盤の2列目からダイナミックにゴール前へ飛び出していく。ヨーロッパのトップクラスで磨かれてきた技術はもちろん、ルーズボールにかける彼の執念は、チーム全体に勇気をもたらしていただろう。
どちらが主導権を握っていたかと言えば、ほとんどの人は日本と答えるはずだ。終盤のセットプレーでは中澤佑二も相手ゴール前へ飛び込み、韓国の守備陣を慌てさせた。
ところが、後半ロスタイムにPKを献上してしまう。韓国がこの試合2度目のゴールを決めた直後に、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
結果だけを見れば、2010FIFAワールドカップ南アフリカへの不安が募るかもしれない。しかしながら、テストマッチは修正点を浮き彫りにするためにもあり、この日のゲームから得られるものは決して少なくないはずだ。『キリンカップ』や『キリンチャレンジカップ』で課題を洗い出し、真剣勝負で成果をあげていくのは、これまでもこれからも変わらない、日本のスタンスである。
5月25日深夜、チームはチャーター機で事前合宿地のスイスへ旅立った。宿敵に敗れた悔しさをモチベーションに変え、日本は4大会連続のワールドカップへ挑む。
■5月24日 埼玉スタジアム2002
日本代表 [0-2] 韓国代表
1) GK 楢 正剛 2) MF 中村 俊輔 3) DF 今野 泰幸 4) DF 中澤 佑二 5) MF 阿部 勇樹 6) MF 本田 圭佑 7) MF 長谷部 誠 8) MF 遠藤 保仁 9) FW 岡崎 慎司 10) DF 長友 佑都 11) FW 大久保 嘉人 |
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1) GK 楢 正剛
2) MF 中村 俊輔
3) DF 今野 泰幸
4) DF 中澤 佑二
5) MF 阿部 勇樹
6) MF 本田 圭佑
7) MF 長谷部 誠
8) MF 遠藤 保仁
9) FW 岡崎 慎司
10) DF 長友 佑都
11) FW 大久保 嘉人
<代表監督> 岡田武史
<出場選手>
■5月24日/埼玉スタジアム2002
日本代表 (0) 0 | ||
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韓国代表 (1) 2 | <パク・チソン パク・チュヨン> | |
日本 | ||
GK | 楢 | |
DF | 中澤 今野 長友 | |
MF | 中村俊(森本) 遠藤(駒野) 阿部 長谷部 本田(中村憲) | |
FW | 大久保(矢野) 岡崎 | |
韓国 | ||
GK | チョン・ソンリョン | |
DF | カク・テヒ イ・ヨンピョ イ・ジョンス チャ・ドゥリ(オ・ボムソク) | |
MF | キ・ソンヨン(キム・ボギョン) キム・ジョンウ パク・チソン(イ・スンリョル) イ・チョンヨン | |
FW | ヨム・ギフン(パク・チュヨン) イ・グノ(キム・ナミル) |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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