キリンカップサッカー2008
5月27日 日本代表×パラグアイ代表
24日のコートジボワール戦で1-0の勝利を収めた日本代表は、三日後の27日にパラグアイを迎えた。引き分け以上の結果を残せば、『キリンカップサッカー』の2連覇が決まる。きたる2010FIFAワールドカップ南アフリカTMアジア3次予選へ弾みをつける意味でも、ぜひとも欲しいタイトルだ。
チームは頼もしいタレントを迎えていた。中村俊輔である。セルティック(スコットランド)のリーグ戦3連覇に貢献した背番号10のレフティーは、満を持して日本代表に合流したのだった。
先のコートジボワール戦から、岡田監督は先発を7人入れ替えてきた。それでも、チームとしてのベースが固まってきたからだろう。キックオフ直後から、日本代表は試合の主導権をつかんだ。
5分、右サイドでのショートパスの交換から、山瀬功治(横浜F・マリノス)が抜け出す。10分、中村俊のスルーパスに、1トップの巻誠一郎(ジェフ千葉)が鋭いタイミングで抜け出す。
17分には決定的なチャンスが生まれる。中村俊を軸に左サイドでショートパスを交換し、ゴール前へ飛び込んだ田中マルクス闘莉王(浦和レッズ)へピンポイントのクロスが供給されたのだ。闘莉王のヘディングシュートはGKに弾かれてしまうが、ダイナミックな展開にスタンドから大きな歓声が上がった。
パラグアイ代表のヘラルド・マルティノ監督は、「前半25分までは力を出せなかった。我々はほとんど何もできなかった。日本は正確で速いプレーをしていた」と振り返っている。まさしくそのとおりだろう。コートジボワール代表戦に比べるとサイドチェンジが多く、中盤を厚くした4-2-3-1のフォーメーションを採用したため、敵陣でリズムよくボールがつながれていた。
また、3日前の『キリンカップサッカー2008』で日本代表デビューを飾ったばかりの長友佑都(FC東京)は、左サイドを何度もアップダウンしてサイドアタックを仕掛けた。パラグアイ代表の守備のブロックを崩すために効果的なミドルシュートにも、各選手が意欲的にチャレンジしていた。42分に中村憲剛(川崎フロンターレ)が見せた右足ミドルは、相手GKに冷たい汗をかかせている。
前半終了時のボール支配率は、66・6パーセントを弾き出した。数字が示すとおり、インプレーの3分の2の時間で日本がボールを支配した。両チーム無得点でハーフタイムを迎えたが、どちらが自分たちのサッカーを遂行したのかは明らかだった。
後半開始とともに、岡田監督は遠藤保仁(ガンバ大阪)に代えて松井大輔(サンテティエンヌ/フランス)を投入する。61分には鈴木啓太(浦和レッズ)と巻が退き、長谷部誠(VfLヴォルフスブルグ/ドイツ)と高原直泰(浦和レッズ)が起用される。ベンチに下がったた3選手はいずれもケガからの回復過程にあり、「最初から予定どおり」(岡田監督)というベンチワークだ。
だからといって、攻撃の迫力が低下したわけではない。70分、阿部に代わって出場したばかりの駒野友一(ジュビロ磐田)のタテパスから、高原が最終ラインの背後を突く。75分、中村俊が直接FKからゴールを狙う。絶え間ない攻撃は相手守備陣を追い詰めていくが、2010FIFAワールドカップ南アフリカTM南米予選で首位を走るパラグアイ代表の堅守は、最後まで崩れなかった。
この試合でゲームキャプテンを務めた鈴木は、「パラグアイは試合の進め方がうまいので、相手のペースにならないようにした。そんなに簡単に、何度も決定機を作れるわけではない」と振り返った。
ホームゲームということを考えれば、スコアレスドローはやや残念な結果かもしれない。ただ、ブラジル代表やアルゼンチン代表とともに南米の強豪と言われるパラグアイ代表は、守勢の展開でもリズムを崩さないしたたかさを備えている。堅守を誇るパラグアイと互角以上のせめぎ合いを演じたことは、6月2日のオマーン戦への確かな助走となるはずだ。
チームの底上げも進んだ。コートジボワール戦で香川真司(セレッソ大阪)と長友、このパラグアイ戦では寺田周平(川崎フロンターレ)が国際Aマッチデビューを飾ったように、『キリンカップサッカー2008』は新戦力をテストする機会にもなった。コートジボワール戦では2トップ、パラグアイ戦では1トップと、異なるフォーメーションのなかで数多くの選手がピッチに立ったのも大きい。
試合後の岡田監督は、「色々なテストをかねて行なっているなかで、どういう選手が出ても、最低限のところができるという手ごたえはつかめた」と、『キリンカップサッカー2008』を総括した。約3週間で4試合を消化する6月の2010FIFAワールドカップ南アフリカTMアジア3次予選が終了したとき、今大会の価値は改めて証明されるに違いない。
[文: 戸塚啓]
■5月27日 埼玉スタジアム2002
日本代表 [0ー0] パラグアイ代表
1) GK 楢 正剛 2) FW 巻 誠一郎 3) DF 寺田 周平 4) MF 中村 俊輔 5) DF 阿部 勇樹 6) DF 田中 マルクス闘莉王 7) MF 鈴木 啓太 8) MF 遠藤 保仁 9) DF 長友 佑都 10) MF 山瀬 功治 11) MF 中村 憲剛 |
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1) GK 楢 正剛
2) FW 巻 誠一郎
3) DF 寺田 周平
4) MF 中村 俊輔
5) DF 阿部 勇樹
6) DF 田中 マルクス闘莉王
7) MF 鈴木 啓太
8) MF 遠藤 保仁
9) DF 長友 佑都
10) MF 山瀬 功治
11) MF 中村 憲剛
<代表監督> 岡田 武史
<出場選手>
■5月27日/埼玉スタジアム2002
日本代表 (0) 0 | ||
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パラグアイ代表 (0) 0 | ||
日本 | ||
GK | 楢 | |
DF | 寺田 田中 阿部(駒野) 長友 | |
MF | 中村俊 遠藤(松井) 中村憲(今野) 鈴木(長谷部) 山瀬(大久保) | |
FW | 巻(高原) | |
パラグアイ | ||
GK | デルリス・ゴメス | |
DF | ペドロ・ベニテス ホルヘ・ヌニェス(エドガル・バルブエナ) デニス・カニサ ダリオ・ベロン | |
MF | ホルヘ・ブリテス(ルイス・カセレス) セルヒオ・アキノ(フリオ・アギラル) エドガル・ゴンサレス(ビクトル・カセレス) マルセロ・エスティガリビア オスバルド・マルティネス(ファビオ・エスコバル) |
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FW | クリスティアン・ボガド(ダンテ・ロペス) |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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