試合詳細レポート

2008

キリンチャレンジカップ2008
11月13日 日本代表×シリア代表

  日本代表にとって今年5度目となる『キリンチャレンジカップ2008』が、2008年11月13日にホームズスタジアム神戸で行なわれた。6日に敵地ドーハで開催されるカタール戦を見据えた大切なテストマッチである。
  2万5千人をこえる観客を集めた一戦は、開始3分の電撃的なゴールで幕を開ける。
  自陣でパスカットした左サイドバックの長友佑都(FC東京)が、そのままドリブルで持ち込んでいく。シリアのチェックは甘い。ペナルティエリア手前へ、フリーで侵入している。長友に迷いはなかった。
「敵が来なかったので、思い切って打った」という低い弾道の右足シュートが、見事にゴール左スミへ突き刺さったのだ。5月24日の『キリンカップサッカー2008』で日本代表デビューを飾り、国際Aマッチ6試合目の出場となる22歳の長友にとって、記念すべき代表初ゴールだった。
「すぐに1点が入ったのは大きかった」と振り返ったのは、この試合が9試合連続のスタメンの玉田圭司(名古屋グランパス)である。6分にはその玉田が、田中達也(浦和レッズ)と岡崎慎司(清水エスパルス)の崩しから決定的なシュートを放つ。リードを奪ったことで、攻撃の勢いが一気に加速していく。
  10分、内田篤人(鹿島アントラーズ)のスローインから、岡崎の左足シュートが際どくバーを越える。16分、先制点をあげた長友の一撃が相手GKを慌てさせる。19分、中村憲剛(川崎フロンターレ)の左CKから寺田周平(川崎フロンターレ)の放ったヘディングシュートも、決定的なシーンだった。前線からの精力的なディフェンスで相手攻撃の芽を摘み取り、奪ったボールをワイドに展開しながらタテに鋭い日本のアタックは、その後もシリアを圧倒していった。
  26分に追加点が生まれたのは、試合の流れを考えれば必然と言って良かっただろう。右サイド深くへ切り込んだ内田が、マイナスのポジションでサポートする中村(憲)へ。シリアのDFラインはゴール前の日本選手を置き去りにしようとするが、入れ替わるように玉田がゴール前へ走り出す。中村(憲)から、絶妙のタイミングでラストパスが通る。「最高のボールが来た」という玉田は、得意の左足できっちりとゴールネットを揺すった。
  前半を2-0で折り返すと、岡田武史監督は「できるだけ多くの選手にチャンスを与える」という前日会見での言葉を実行に移していく。後半開始とともにFWの玉田、田中(達)、センターバックの寺田がベンチへ退き、佐藤寿人(サンフレッチェ広島)、香川真司(セレッソ大阪)、今野泰幸(FC東京)が投入される。今野はダブルボランチの一角に入り、寺田のポジションにはボランチから阿部勇樹(浦和レッズ)がスライドする。
  佐藤と香川を迎えた前線も、選手の配置が変わる。前半は主に右サイドでフレーした岡崎が、玉田に代わって1トップへ。佐藤は田中(達)が務めていたトップ下に入り、香川が右サイドとなる。もちろんポジションは流動的なので、左サイドMFの大久保を含めた4人は状況に応じてポジションチェンジをはかる。彼らのスムーズな連携から、前半同様に数多くのチャンスが生まれていった。
  61分の追加点は、鮮やかなパスワークから導き出された。長友-大久保-香川とボールがつながり、長友が左サイドを突き破る。マイナスのクロスを受けた大久保の右足シュートは、DFに当たってGKの頭上を破った。所属するヴィッセル神戸のホームスタジアムで奪った大久保のゴールが、スタジアムに熱狂をもたらす。
  GKを除く6人の控え選手をすべて起用しながらつかんだ勝利は、来るべきカタール戦への期待を膨らませるものだったと言っていいだろう。78分にカウンターからPKを献上したことも、今後への向けての修正点がはっきりした意味ではプラス材料だ。
「助走としてはまずまずでは。相手どうこうよりも、自分たちがどういう試合をするのかが大切ですから。僕自身、カタール戦のまえにここでひとつ試合をすることで、いい準備になりました」とは、負傷欠場の楢正剛に代わって11試合ぶりに先発出場したGK川口能活である。楢と同様にケガで戦線離脱した中澤佑二に代わり、川口はゲームキャプテンも務めた。川口と田中マルクス闘莉王がDFラインを引き締め、寺田や高木和道(清水エスパルス)らがそれぞれに持ち味を発揮したことで、楢と中澤が離脱したことへの不安を一掃したのも、今回の『キリンチャレンジカップ』の大きな収穫である。
  中村俊輔(セルティック/スコットランド)や遠藤保仁(ガンバ大阪)が不在の中盤を牽引した、中村(憲)にも触れなければならないだろう。「今日は彼がゲームを作ってくれた」という岡田監督の試合後のコメントは、この日の中村(憲)のパフォーマンスを的確に表している。長短のパスを駆使して攻撃を構築しつつ、決定的なシーンを演出したプレーは、カタール戦への強烈なアピールだった。
  川口や中村(憲)のように、このところ先発から外れていた選手が存在感をアピールしたのは、チーム全体が高いモチベーションを保っている何よりの証明である。チームの状態はいい。誰もがやるべきことを理解している。シリアを3-1で撃破した『キリンチャレンジカップ』で手応えをつかみ、日本代表は決戦の地カタールへ飛び立ったのだった。

[文: 戸塚啓]

試合データ

■11月13日 ホームズスタジアム神戸
日本代表 [3ー1] シリア代表

日本代表選手集合写真 説明イラスト  1) DF 田中マルクス闘莉王
 2) FW 玉田 圭司
 3) DF 阿部 勇樹
 4) DF 寺田 周平
 5) GK 川口 能活
 6) FW 大久保 嘉人
 7) DF 長友 佑都
 8) FW 岡崎 慎司
 9) MF 中村 憲剛
10) FW 田中 達也
11) DF 内田 篤人
  • 日本代表選手集合写真
  • 説明イラスト
  •  1) DF 田中マルクス闘莉王
     2) FW 玉田 圭司
     3) DF 阿部 勇樹
     4) DF 寺田 周平
     5) GK 川口 能活
     6) FW 大久保 嘉人
     7) DF 長友 佑都
     8) FW 岡崎 慎司
     9) MF 中村 憲剛
    10) FW 田中 達也
    11) DF 内田 篤人

写真提供/(c)Jリーグフォト

<代表監督> 岡田武史

<出場選手>

■11月13日/ホームズスタジアム神戸
日本代表 (2) 3 <長友佑都 玉田圭司 大久保嘉人>
シリア代表 (0) 1 <M.アルジノ>
日本    
GK 川口
DF 寺田(今野) 田中マルクス闘莉王(高木) 阿部 長友 内田(駒野)
MF 中村憲
FW 玉田(佐藤寿) 大久保(巻) 田中達(香川) 岡崎
シリア    
GK ムサブ・バルフス(モハメド・レドワン・アルアズハル)
DF アーテフ・ジェニアト(アブドゥル・ファタハ・アルアガ) アブドルカデル・ダッカ アリ・ディアブ フェラス・イスマイル(マハムード・アルアミナ)
MF ワエル・アヤン アデル・アブドゥラ
FW ジアド・シャボ(モハマド・アルジノ) ラジャ・ラフェ ヤヒア・アルラシド(ハムゼ・アルエイトゥニ) マヘル・アルサイド(ブルハン・サヒユニ)

*月日/場所
 国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)

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