キリンチャレンジカップ2008
8月20日 日本代表×ウルグアイ代表
これぞテストマッチというべきだろう。
勝利を追及しながら新戦力をテストし、攻守両面においてオプション作りに取り組む。真剣勝負のなかから現時点での課題を洗い出し、来る最終予選に備える。8月20日に開催された『キリンチャレンジカップ2008 ALL FOR 2010!』は、岡田武史監督率いる日本代表にとって貴重な舞台となった。
日本代表が札幌ドームに登場するのは、今回が三度目となる。2001年7月には『キリンカップサッカー2001』でパラグアイと激突し、柳沢敦(京都パープルサンガ)の2得点で2-0の勝利を収めた。二度目は06年11月のAFCアジアカップ2007予選大会で、サウジアラビアを3-1で下している。日本代表には相性のいいスタジアムのひとつだ。
キックオフとともに、日本はウルグアイのゴールを積極的に脅かす。1分、長谷部誠(VfLヴォルフスブルグ)のタテパスに、田中達也(浦和レッズ)が反応してDFラインの背後を突く。すかさずフォローした玉田圭司(名古屋グランパス)とのワンツーで田中がペナルティエリア左から抜け出すが、惜しくもオフサイドとなる。
両チームを通じての初シュートは、その田中が放った。2分、中盤でパスカットした青木剛(鹿島アントラーズ)からパスを受けると、迷うことなく右足を振りぬく。代表通算9試合目、岡田監督就任後は初出場となる田中の意欲的な姿勢が、チームに勢いをもたらしていく。
前半の日本は右サイドに攻撃の起点を置いた。17分、敵陣深くに侵入した駒野友一(ジュビロ磐田)の背後に長谷部が飛び出し、マイナスのクロスを供給する。20分、右サイドMFの中村憲剛(川崎フロンターレ)が、ファーサイドへ走りこんだ玉田へグラウンダーのクロスを送る。いずれもフィニッシュには至らなかったが、チームの狙いがはっきりと読み取れるシーンだった。
32分には決定機を作り出す。長谷部が右サイドへ展開し、駒野がタッチライン際から内側へ切り込んでいく。左足から放たれたシュートは、相手GKのセーブに阻まれた。
1分後、駒野のドリブルがファウルを誘う。右サイドからFKを得る。中澤、青木、高木和道(清水エスパルス)らの長身選手がペナルティエリア内に集まっていくと、キッカーの小野はゴール前ではなく右サイドへ展開する。サインプレーだ。ワイドに開いていた中村憲がていねいなクロスを入れると、制空権を握った中澤佑二(横浜F・マリノス)がヘディングシュートを浴びせる。惜しくもバーを越えていったが、日本のストロングポイントが発揮された場面だった。
前半終了間際の44分にも、右サイドから相手守備陣を切り崩す。駒野がグラウンダーのパスをゴール前へ通し、ゴールを背にした玉田が右へ持ち出す。利き足ではない右足でのシュートだったが、CKの獲得につながった。
タッチライン際を何度もアップダウンできる駒野を生かし、相手の高さを回避するためにクロスはグラウンダーを多くする。相手の強みを消し、自分たちの良さを発揮することを意識した前半の攻撃は、チームとしての意思統一が高まっている表れだっただろう。
前半の展開を振り返れば、日本が先制点を奪うのは必然だったと言ってもいい。
48分、右CKをクリアされたボールを阿部勇樹(浦和レッズ)が拾い、右サイドの小野へ。タテに動き出した中村にショートパスがつながり、中村はライナー性のクロスをゴール前へ。自陣へ戻りながらクリアしようとした相手選手が、思わずオウンゴールを献上した。もっとも、エグレンという選手が触らなければ、ゴール前へ詰めていた日本選手がネットへ突き刺していた可能性は高い。その意味でも、必然の先制弾だった。
しかし、試合の構図は前半とは微妙に異なっていた。日本の攻撃を支えた駒野と中村憲の右サイドに、ウルグアイがきっちりとフタをしてきたのである。岡田武史監督は後半開始から長友佑都(FC東京)を起用し、左サイドからもアップダウンできるようになっていたが、ここもウルグアイはきっちりケアしてきた。さすがは南米の古豪である。
55分にウルグアイが同点ゴールを決め、1-1で迎えた68分、岡田監督は玉田に代えて大黒将志(東京ヴェルディ1969)を送り出す。大黒にとっては、2006FIFAワールドカップドイツTM以来の国際Aマッチだ。さらに75分、中村憲が退いて佐藤寿人(サンフレッチェ広島)が、1分後には田中に代わって山瀬功治(横浜F・マリノス)が登場する。大黒を頂点に佐藤が右、山瀬が左へ張り出す3トップ気味の布陣だ。バーレーン戦を想定した、オプションのひとつと理解していいだろう。
テストは前線にとどまらない。サイドハーフでスタートした小野は、中村憲の交代後はフィールド中央へポジションを移した。左サイドバックの阿部は、後半からボランチを任された。
最終的には1-3と突き放されてしまったが、新戦力のテストとコンセプトの確認・浸透がなされたのは間違いない。青木と高木が国際Aマッチデビューを飾り、小野、大黒、田中は久しぶりの代表戦で自らの力を証明した。9月6日のバーレーン戦で開幕する2010FIFAワールドカップ南アフリカTMアジア最終予選に向けて、ウルグアイ戦はこれ以上ない強化となったのである。
[文: 戸塚啓]
■8月20日 札幌ドーム
日本代表 [1ー3] ウルグアイ代表
1) GK 楢 正剛 2) MF 長谷部 誠 3) DF 高木 和道 4) MF 青木 剛 5) DF 中澤 佑二 6) FW 玉田 圭司 7) DF 阿部 勇樹 8) FW 田中 達也 9) MF 中村 憲剛 10) MF 小野 伸二 11) DF 駒野 友一 |
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1) GK 楢 正剛
2) MF 長谷部 誠
3) DF 高木 和道
4) MF 青木 剛
5) DF 中澤 佑二
6) FW 玉田 圭司
7) DF 阿部 勇樹
8) FW 田中 達也
9) MF 中村 憲剛
10) MF 小野 伸二
11) DF 駒野 友一
<代表監督> 岡田武史
<出場選手>
■8月20日/札幌ドーム
日本代表 (0) 1 | <オウンゴール> | |
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ウルグアイ代表 (0) 3 | <セバスティアン・エグレン イグナシオ・ゴンサレス セバスティアン・アブレウ> | |
日本 | ||
GK | 楢 | |
DF | 中澤 高木 駒野 阿部 | |
MF | 小野 中村憲(佐藤寿) 青木(長友) 長谷部 | |
FW | 玉田(大黒) 田中達(佐藤) | |
ウルグアイ | ||
GK | フアン・カスティージョ | |
DF | ホルへ・フシレ ディエゴ・ルガノ ブルノ・シルバ(ヘラルド・アルコバ) カルロス・バルデス |
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MF | セバスティアン・エグレン マキシミリアノ・ペレイラ(アルバロ・ゴンサレス) ディエゴ・ペレス(イグナシオ・ゴンサレス) クリスティアン・ロドリゲス(ビセンテ・サンチェス) |
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FW | カルロス・ブエノ(セバスティアン・アブレウ) ルイス・スアレス(ホルヘ・ロドリゲス) |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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