キリンチャレンジカップ2008
7月29日 なでしこジャパン(日本女子代表)×アルゼンチン女子代表
試合を終えた佐々木則夫監督は、少し申し訳なさそうな表情で記者会見場に表れた。
「一昨日までかなりしぼったので、なかなかエンジンがかからなくて……夏バテ状態のサッカーをお見せしてしまった」
そうは言っても、2-0の快勝である。北京オリンピック2008への壮行試合としては、申し分のない結果だったはずだ。
7月24日の国際親善試合でオーストラリアに3-0で快勝したなでしこジャパン(日本女子代表)は、同29日に『キリンチャレンジカップ2008』に臨んだ。対戦相手はオリンピック初出場となるアルゼンチン女子代表である。オリンピック前最後のテストマッチとなるこの試合は、北京への総仕上げの機会だ。
序盤からゲームを支配したのは、なでしこジャパンだった。8月7日のニュージーランド戦を想定し、早い時間帯に先制点を奪うというテーマに沿って攻撃を仕掛けていく。
最初にスタジアムが沸いたのは10分だった。右CKから岩清水梓(日テレ・ベレーザ)がヘディングシュートを浴びせる。
15分にはさらなるチャンスをつかむ。安藤梢(浦和レッズレディース)が右サイドから突破をはかり、DFをかわしてフィニッシュに持ち込む。飛び出したGKにシュートコースを消されたが、推進力のあるドリブルが相手DFラインを切り裂いた。
高い位置でボールを奪い、そのままゴールへ向かう姿勢が得点に結びついたのは33分だった。左サイドMFの宮間あや(岡山湯郷Belle)が、最終ラインの背後を突く。阪口夢穂(TASAKIペルーレFC)がスルーパスを通す。スピードを落とさずに突破した宮間は、ゴール前へグラウンダーのラストパスを供給する。
ここに、大野忍(日テレ・ベレーザ)が走り込んでいた。「いいボールが来たので、触るだけでした」という大野は、スライディングしながら右足でコースを変え、ゴール右スミへ流し込んだ。
先制ゴールの余韻は、すぐに追加点の歓喜へと変わった。36分、左サイドの宮間のクロスを、ファーサイドの安藤がヘディングで合わせる。左ポストに弾かれたボールに大野が反応し、ゴール前に残ったボールを永里優季(日テレ・ベレーザ)が左足で押し込んだのだった。
「簡単に勝たせてくれる相手でないことは分かっていた。日本は非常にオフェンシブで、正確にプレーをする。ボール回しがとてもいい」と語ったのは、アルゼンチンのホセ・カルロス・ボレージョ監督である。両チームの実力を比較すれば、前半を2-0で折り返した時点で勝敗は決まっていたと言ってもいい。
後半開始とともに、佐々木監督は荒川恵理子(日テレ・ベレーザ)と矢野喬子(浦和レッズ・レディース)を投入する。チーム全体の力が必要となる五輪本番を見据えた選手起用だ。それでも、後半開始直後の48分に安藤のシュートが左ポストを叩くなど、攻撃の勢いにかげりはない。
62分には見事な連動性から決定機を生み出す。左サイドを宮間が突破し、マイナスのクロスを中央へ。きっちりボールをコントロールした荒川は、後方から走り込んできた大野へショートパスを通す。シュートは惜しくもワクを逸れたが、スピーディで有機的な攻撃はアルゼンチンの守備陣を圧倒した。
16時キックオフの試合は暑さとの戦いでもあったが、なでしこジャパンの活動量は最後まで落ちなかった。後半終了間際にも猛攻を仕掛け、最後まで追加点を狙う姿勢を貫いたのは評価に値する。最終的にはGKを除く控え選手をすべて投入しつつ、なでしこジャパンは2-0の快勝で『キリンチャレンジカップ2008』を締めくくった。
それでも、試合後の選手たちは反省の言葉を口にした。池田浩美(TASAKIペルーレFC)が前半で退いたため、後半からゲームキャプテンを務めた澤は言う。
「引いた相手に対してなかなか崩せず、連動も出来ず、パスミスも多くて課題の残る試合になった」
佐々木監督が「選手はメダルを視野に入れながら練習をしてきている」と話しているように、なでしこジャパンの面々は北京で大きな仕事をやってのける手応えをつかんでいる。アルゼンチンに勝ってなお謙虚な姿勢を貫いたのは、彼女たちの目標設定からすれば当然だったのだろう。
2大会連続の五輪出場で、初のメダル獲得へ挑む。『キリンチャレンジカップ2008』を経て、なでしこジャパンの視界はさらに良好となった。
[文: 戸塚啓]
■7月29日 国立競技場
なでしこジャパン(日本女子代表) [2ー0] アルゼンチン女子代表
1) MF 澤 穂希 2) DF 岩清水 梓 3) DF 安藤 梢 4) MF 阪口 夢穂 5) FW 永里 優季 6) GK 福元 美穂 7) DF 近賀 ゆかり 8) FW 大野 忍 9) DF 柳田 美幸 10) MF 宮間 あや 11) DF 池田 浩美 |
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1) MF 澤 穂希
2) DF 岩清水 梓
3) DF 安藤 梢
4) MF 阪口 夢穂
5) FW 永里 優季
6) GK 福元 美穂
7) DF 近賀 ゆかり
8) FW 大野 忍
9) DF 柳田 美幸
10) MF 宮間 あや
11) DF 池田 浩美
<代表監督> 佐々木 則夫
<出場選手>
■7月29日/国立競技場
なでしこジャパン (日本女子代表) (2) 2 |
<大野> <永里> | |
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アルゼンチン女子代表 (0) 0 | ||
なでしこジャパン | ||
GK | 福元 | |
DF | 池田(矢野) 柳田(宇津木) 安藤(原) 近賀 岩清水 | |
MF | 澤 宮間 阪口(加藤) | |
FW | 大野(丸山) 永里(荒川) | |
アルゼンチン女子 | ||
GK | バニナ・ノエミ・コレア | |
DF | エバ・ナディア・ゴンサレス ガブリエラ・パトリシア・チャベス | |
MF | フローレンシア・マンドリレ・ヌニェス マリサ・イサベル・ヘレス(ジェシカ・ロレンサ・アリエン) ファビアナ・ヒセラ・バジェホス マリア・フローレンシア・キニョネス マリエラ・デルカルメン・コロネル(マリア・ヒメナ・ブランコ) | |
FW | エミリア・メンディエタ(メルセデス・ペレイラ) マリア・ベレン・ポタッサ(アナリア・アルメイダ) アンドレア・スサナ・オヘダ |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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