キリンチャレンジカップ2008
1月26日 日本代表×チリ代表
日本代表のシーズンの幕開けは、今年も『キリンチャレンジカップ』から刻まれた。2月6日の2010FIFAワールドカップ南アフリカTMアジア3次予選、対タイ代表戦へ向けて準備を進める日本代表は、1月26日に今季初戦となるチリ戦を迎えたのである。『キリンチャレンジカップ』で国内初戦を迎えるのは、2004年から5年連続だ。
アルゼンチンの名将マルセロ・ビエルサ監督に率いられたチリ代表は、FIFAワールドカップ出場7回を誇る南米の伝統国である。国内クラブに所属する選手で固めた今回の日本遠征は、6月に再開されるFIFAワールドカップ南米予選に備えて選手層を厚くする機会として位置づけられていた。来日18人の平均年齢が21・6歳という若いチームは、それだけに、モチベーションが高い。
1月15日から鹿児島県指宿市で合宿を行ってきた日本代表は、イビチャ・オシム前監督のもとで実績を積んできたメンバーが先発に並んだ。ドイツ・ブンデスリーガのフランクフルトから浦和レッズに移籍した高原直泰は、昨年7月のAFCアジアカップ2007以来の国際Aマッチとなる。
初代表を記す選手もいた。内田篤人である。07年に鹿島アントラーズの2冠に貢献した19歳の若武者が、先発の右サイドバックに指名されたのだ。
「前半は我々が優先に進めたと思う」とビエルサ監督が振り返ったように、序盤からペースをつかんだのはチリ代表だった。日本代表のパスワークの小さな乱れも逃さず、鋭い出足でボールを支配していく。
それでも、最初に決定的な場面をつかんだのは日本代表だった。8分、遠藤保仁(ガンバ大阪)と高原のダイレクトのパス交換が相手守備陣を揺さぶり、遠藤から巻誠一郎(ジェフ千葉)へラストパスが通る。ワントラップでシュートへ持ち込もうとした巻が相手DFのタックルに倒されたが、主審はホイッスルを口に運ばなかった。
2度目の決定機は38分。前線から激しいディフェンスでボールを奪った巻が、高原へつなぐ。ペナルティエリア右外から放たれたシュートは、惜しくもバーを越えていった。
後半はチリ代表の好機で始まる。
58分、1本のタテパスで抜け出したG・フィエロが、ペナルティエリア右から強烈なシュートを放つ。ゴール右上スミを狙った一撃は、GK川口能活(ジュビロ磐田)が弾き出した。
直後の右CKでは、日本DFに競り勝ったG・ハラがヘディングシュートを浴びせてくる。際どい場面だったが、シュートはゴール左へ逸れた。
57分に山岸智(川崎フロンターレ)を下げて羽生直剛(FC東京)を投入していた岡田監督は、ここでもう一枚カードを切る。62分、高原に代えて、大久保嘉人(ヴィッセル神戸)を送り出すのだ。この交代が試合の流れを引き寄せた。
まず63分、中村憲剛(川崎フロンターレ)のタテパスに反応してDFラインの背後を突き、強引にフィニッシュへ持っていく。65分には左サイドで羽生のパスを受け、内側へ切り返して右足でゴールを狙う。いずれもワクを捕らえることはできなかったが、ゴールの予感を感じさせる場面だった。奪ったボールを素早くシュートへつなげていくのは、岡田監督が徹底してきたチームコンセプトの表れでもある。
国立競技場が沸いたのは82分だ。遠藤の右CKを、大久保が完璧なヘッドで捕らえる。彼自身も「入ったと思った」と言う一撃は、しかし、GKに弾き出されてしまった。
なおも日本のチャンスは、大久保の好機は続く。86分、中澤佑二(横浜F・マリノス)のヘディングのクリアに反応し、矢野貴章(アルビレックス新潟)の背後に回り込む。矢野もDFも触れなかったボールは、ペナルティエリアにフリーで侵入した大久保のもとへわたった。背番号16はGKの動きを見定めて右足を振り抜くが、これもクロスバーを越えてしまう。3・6度まで冷え込んだこの日の国立競技場に、ゴールは生まれなかった。
「結果を出したかったんですが、あそこで大久保が1点、2点と決めて、それですべてがよかったとなるよりは、よかったのかなと思います」
試合後の記者会見で、岡田監督は冷静にゲームを分析した。「本当にすばらしいチーム。90分間あれだけプレッシャーをかけてくれて、いい経験が出来た」というチリのパフォーマンスを考えれば、0-0という結果にも納得できる部分はある。日本代表にとってシーズン最初のゲームだったことも、忘れてはならない。
キャプテンの川口も、この時期にしてはまずまずといった表情を浮かべていた。
「結果だけを見ると、もちろん満足できるものではない。ただ、ゲーム感覚が戻っていないなかで、後半に入って修正できた部分もあった。ミスも多かったですけれど、早い段階でボールを奪ってフィニッシュまでもって行く形はできていた」
08年の初勝利はつかめなかったが、タイ戦へ向けて確かな第一歩を記したのは間違いない。2010FIFAワールドカップ南アフリカTM アジア3次予選への価値ある助走路となる『キリンチャレンジカップ2008』は、30日にもボスニア・ヘルツェゴビナ戦が開催される。
[文: 戸塚啓]
■1月26日 東京・国立競技場
日本代表 [0ー0] チリ代表
1) FW 巻 誠一郎 2) FW 高原 直泰 3) DF 中澤 佑二 4) MF 山岸 智 5) DF 内田 篤人 6) GK 川口 能活 7) MF 阿部 勇樹 8) DF 駒野 友一 9) MF 遠藤 保仁 10) MF 鈴木 啓太 11) MF 中村 憲剛 |
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1) FW 巻 誠一郎
2) FW 高原 直泰
3) DF 中澤 佑二
4) MF 山岸 智
5) DF 内田 篤人
6) GK 川口 能活
7) MF 阿部 勇樹
8) DF 駒野 友一
9) MF 遠藤 保仁
10) MF 鈴木 啓太
11) MF 中村 憲剛
<代表監督> 岡田 武史
<出場選手>
■1月26日/東京・国立競技場
日本代表 (0) 0 | ||
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チリ代表 (0) 0 | ||
日本 | ||
GK | 川口 | |
DF | 中澤 駒野 内田(加地) | |
MF | 遠藤 中村(山瀬) 鈴木 阿部 山岸(羽生) | |
FW | 高原(大久保) 巻(矢野) | |
チリ | ||
GK | ピント | |
DF | ハラ マルチネス セレセダ | |
MF | フィエロ エストラーダ メデル イトゥーラ モラレス | |
FW | ボセジュール ルビオ |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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