キリンカップサッカー2007
6月5日 日本代表×コロンビア代表
コロンビアには苦い思い出がある。2003年6月に開催されたFIFAコンフェデレーションズカップで、0−1の敗戦を喫しているのだ。引き分けなら得失点差で準決勝進出が決まるはずだっただけに、サンテティエンヌで行われたこの試合は「負けない」ことの難しさを再認識させられるものだった。
今回も条件は同じだった。ともにモンテネグロから勝ち点3を奪っているが、得失点差では日本が上回っている。引き分け以上の結果を残せば、2004年以来となる『キリンカップサッカー』優勝を手にすることができるのだ。
先発には4人の海外クラブ所属選手が並んだ。イビチャ・オシム監督の指揮下では初出場となる中田浩二(バーゼル/スイス)と稲本潤一(フランクフルト/ドイツ)、右足首のケガが癒えた中村俊輔(セルティック/スコットランド)、それに3試合連続スタメンの高原直泰(フランクフルト/ドイツ)である。
フォーメーションは高原を1トップとした4−5−1となった。遠藤保仁(G大阪)と中村俊が両サイドの攻撃的なMFに入り、稲本は本来のボランチよりひとつ前へ。鈴木啓太(浦和)と中村憲剛(川崎F)がダブルボランチを組んだ。最終ラインは左から中田、中澤佑二(横浜FM)、阿部勇樹(浦和)、駒野友一(広島)で、GKには川口能活(磐田)が起用された。阿部がセンターバックで出場したのは、モンテネグロ戦後の坪井慶介(浦和)の戦線離脱(左足内転筋痛)の影響もあっただろう。
前半の試合内容を語るには、49・8パーセント対50・2パーセントというボール支配率の数字が分かりやすい。コロンビアがわずかに優勢だったのだ。「前半は我々が主役だった。色々なオプションをピッチ上で作り上げていくことができた」とは、アファナドル監督である。7月の南米選手権へ強化を進めるコロンビアは、14分、18分と際どい場面をつかんでいた。
だからといって、日本にチャンスがなかったわけではない。選手の顔ぶれとその配置にはテストの要素が滲んでいたが、サイドチェンジと中央突破を効果的に使い分けながら、コロンビアのゴールへ迫っていく。
12分、稲本とのワンツーから中村憲が右足を振り抜く。グラウンダーのシュートはGKが横っ飛びで弾き出した。さらに16分、稲本のパスを受けた高原が、胸トラップから強引にフィニッシュへ持ち込む。19分には阿部のフィードが駒野へわたり、フォローした中村が右サイドをえぐる場面が見られた。
後半開始とともに、オシム監督は中田と稲本を下げ、今野泰幸(FC東京)と羽生直剛(千葉)を送り出す。スペースへ飛び出してボールを引き出す羽生の存在は、すぐに攻撃を活性化していった。
この試合最大のチャンスは60分に訪れた。左サイドで高原がボールを奪う。ドリブルで持ち込み、右斜め前の羽生へつなぐ。
ここからの展開は圧巻だった。羽生がダイレクトで残したボールを、中村俊もダイレクトで右へはたく。流れに遅れることなく、遠藤が中村をフォローしている。さらには「高原さんがボールをとった瞬間に前へ出ていった」という中村憲も、ゴール前へ飛び出していた。
キックフェイントを入れた遠藤のラストパスが、中村憲にわたる。フリーだ。ゴールか、先制か──しかし、スタジアムにこだましたのは歓声ではなくため息だった。
「うまくつないでくれたし、コースも見えていた。僕の技術不足です」
試合後の中村憲は唇を噛んだ。右足を振り抜いたシュートは、バーを越えてしまったのだ。
その後も日本は、活動量の落ちたコロンビアを自陣に押しとどめる。後半終了間際には、高原が決定的なヘディングシュートを浴びせた。「後半は明らかに良かった。ボクシングに例えれば、判定勝ちでもおかしくなかった」と、オシム監督も語ったほどである。残念ながら得点を奪うことはできなかったが、優勝するための条件は満たした。中身の濃い0−0の引き分けである
チーム最多のシュートを記録した中村憲が、今大会の成果を語る。
「Jリーグでは味わえないタイプの2チームだったので、個人的には充実していたし、課題も多く見えた大会だった。自分なりにできたプレーもあるので、そこは大事にしていきたい」
アジアカップへの具体的な課題も見えたようだ。キャプテンを務めた川口が言う。
「攻め込まれたときにどう戦うのかが、これから強いチームとやっていく上での課題になると思う。リズムの悪いときに耐えることができるかどうかが、非常に重要になる」
最後に頼もしいジンクスをお伝えしておこう。日本代表は2000年と2004年のアジアカップで優勝しているが、同年の『キリンカップサッカー』でも優勝しているのだ。
そして、今大会も優勝──。
3連覇への期待は高まる。
[文: 戸塚啓]
■6月5日 埼玉スタジアム2002(埼玉県)
日本代表 [0ー0] コロンビア代表
1) DF 駒野友一 2) DF 中田浩二 3) FW 高原直泰 4) DF 中澤佑二 5) MF 中村俊輔 6) GK 川口能活 7) MF 阿部勇樹 8) MF 遠藤保仁 9) MF 鈴木啓太 10) MF 中村憲剛 11) MF 稲本潤一 |
-
1) DF 駒野友一
2) DF 中田浩二
3) FW 高原直泰
4) DF 中澤佑二
5) MF 中村俊輔
6) GK 川口能活
7) MF 阿部勇樹
8) MF 遠藤保仁
9) MF 鈴木啓太
10) MF 中村憲剛
11) MF 稲本潤一
<代表監督> オシム
<出場選手>
■6月5日/埼玉スタジアム2002(埼玉県)
日本代表 (0) 0 | ||
---|---|---|
コロンビア代表 (0) 0 | ||
日本 | ||
GK | 川口 | |
DF | 中澤 中田(今野) 駒野 | |
MF | 中村俊(藤本) 遠藤(巻) 中村憲 鈴木 阿部 稲本(羽生) | |
FW | 高原(播戸) | |
コロンビア | ||
GK | フリオ | |
DF | アリサラ ペレア ジェペス バジェホ | |
MF | バルガス フェレイラ(エスコバル) マリン(カストリジョン) アンチコ(バンゲーロ) | |
FW | エレラ(ロダジェガ) ペレア(ガルシア) |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
過去の試合レポートを見る | 過去の試合レポート |
---|