キリンカップサッカー2007
6月1日 日本代表×モンテネグロ代表
今年で28回目を迎える『キリンカップサッカー』が、6月1日の日本対モンテネグロ戦で幕を開けた。2007年最大の目標であるアジアカップを1か月後に控えた日本代表にとって、チームの成熟度をはかる試金石となる機会である。振り返れば2004年のアジアカップも、直前の『キリンカップサッカー(※)』で優勝を飾ったことが大きな弾みとなった。3年ぶりのトロフィーを、ぜひとも獲得したいところである。
昨年6月にセルビア・モンテネグロから独立したモンテネグロ共和国は、『東欧のブラジル』と呼ばれた旧ユーゴスラビアの流れを汲む実力国だ。今年1月にUEFA(欧州サッカー連盟)に加盟し、5月31日にはFIFA(国際サッカー連盟)への加入も認められた。つまりこの日本代表戦は、同国史上初の国際Aマッチとなったのである。
イビチャ・オシム監督就任後9試合目となる日本は、GK楢正剛(名古屋)が05年9月のホンジュラス戦以来となるスタメンに名を連ねた。山岸智(千葉)は昨年10月のインド戦以来の先発出場で、矢野貴章(新潟)は代表初先発である。その矢野と2トップを組んだのは、海外クラブ所属選手で唯一の出場となる高原直泰(フランクフルト/ドイツ)だった。
中盤の4人が流動的にポジションを変える4−4−2でスタートした日本は、10分にこの試合初めてのチャンスを迎える。中澤佑二(横浜FM)のロングフィードに山岸が反応し、チーム初のシュートを放ったのだ。13分には中村憲剛(川崎F)のスルーパスから矢野が抜け出すが、GKが一瞬早くボールを支配下に置いた。山岸、高原、矢野らはその後も鋭く相手ゴールへ迫り、モンテネグロを「ゲームをコントロールできない」(フィリポビッチ監督)状況へ追い込んでいく。
先制点は23分だった。この試合でキャプテンマークを巻いた遠藤保仁(G大阪)が、左CKを中村憲へつなぎ、リターンパスをファーサイドへ展開する。相手DFの背後からボールを捕らえた中澤のヘディングシュートが、GKの頭上を鮮やかに破った。中澤にとっては、国際Aマッチ10得点目となる節目のゴールである。
言うまでもなく、先制点が持つ意味は大きい。リードを奪った日本はよりアグレッシブになり、伸び伸びとプレーをするようにもなった。守備を固めてカウンターに勝機を見出すゲームプランが崩れたモンテネグロは、チームの方向性を見失ってしまった。その後も日本が主導権を握ったのは必然であり、38分に高原が追加点を奪うことになる。
右サイドの駒野友一(広島)のクロスを、ニアサイドへ飛び込んで頭で合わせたのだ。この得点場面を巻き戻すと、攻撃の起点となったのは他ならぬ高原であることが分かる。3月24日の『キリンチャレンジカップ2007〜ALL FOR 2010!〜』に続くゴールは、ドイツ・ブンデスリーガで11得点をあげた男のポテンシャルを再認識させるものだった。
後半開始とともに、モンテネグロは2人の選手を交代させてくる。攻撃的な意図を持ったベンチワークだ。日本は最終ラインの人数を変えて対応し、試合のイニシアチブを譲らない。53分に遠藤、54分に中村が際どいシュートを浴びせ、エコパスタジアムの観衆を沸かせる。58分には左サイドを突いた山岸のクロスが、相手守備陣を慌てさせた。
63分、オシム監督は山岸を下げて佐藤寿人(広島)を投入する。フォーメーションは明確な3−5−2となった。69分に高原から水野晃樹への交代がなされると、今度は3−5−2のなかで選手の配置が代わる。それまで右サイドだった駒野が、左サイドへスライドしたのだ。
実戦でのテストはなおも続く。80分に今野泰幸(FC東京)が起用されると、フォーメーションが再び4バックに戻されたのである。
こうした変更を繰り返しながらも、日本はプレーの質を落とさなかった。87分には中村憲の左CKから、途中出場の巻誠一郎(千葉)が決定的なヘディングシュートを放っている。デンマーク人のミカエル・スベンセン主審が吹いた長いホイッスルは、『キリンカップサッカー』では3年ぶりとなる勝利を告げるものだった。
試合後のオシム監督は「こういう試合では今後何をすべきか、悪かった点について話すほうが将来につながる」と語り、チームを冷静に分析した。選手たちも同じスタンスだ。鈴木啓太(浦和)の言葉が頼もしい。
「チャンスらしいチャンスは与えなかったけれど、課題もあるし、修正するところもある。成長や進歩は1試合ですぐに分かるものではないし、あとで振り返ったときに、あそこからだったと思えるような試合をしていきたい」
6月3日に行われたモンテネグロ対コロンビア戦は、コロンビアが1対0で勝利した。通算8度目の『キリンカップサッカー』優勝を賭けて、日本代表は5日のコロンビア戦に挑む。
(※)KIRIN WORLD CHALLENGE キリンカップサッカー2004 −Go for 2006!−
[文: 戸塚啓]
■6月1日 静岡スタジアム・エコパ(静岡県)
日本代表 [2ー0] モンテネグロ代表
1) GK 楢 正剛 2) FW 高原直泰 3) DF 坪井慶介 4) FW 矢野貴章 5) DF 中澤佑二 6) MF 遠藤保仁 7) MF 山岸智 8) DF 駒野友一 9) MF 阿部勇樹 10) MF 鈴木啓太 11) MF 中村憲剛 |
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1) GK 楢 正剛
2) FW 高原直泰
3) DF 坪井慶介
4) FW 矢野貴章
5) DF 中澤佑二
6) MF 遠藤保仁
7) MF 山岸智
8) DF 駒野友一
9) MF 阿部勇樹
10) MF 鈴木啓太
11) MF 中村憲剛
<代表監督> オシム
<出場選手>
■6月1日/静岡スタジアム・エコパ(静岡県)
日本代表 (2) 2 | <中澤> <高原> | |
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モンテネグロ代表 (0) 0 | ||
日本 | ||
GK | 楢 | |
DF | 中澤佑二 坪井慶介 駒野友一 | |
MF | 遠藤(今野) 中村(藤本) 鈴木(橋本) 阿部 山岸(佐藤) | |
FW | 高原(水野) 矢野(巻) | |
モンテネグロ | ||
GK | ポレクシッチ | |
DF | パビチェビッチ(ラキッチ) タナシエビッチ(イエクニッチ) バタク ヨバノビッチ(ペヨビッチ) | |
MF | ブラディミル・ブヨビッチ(ライチェビッチ) トゥムバシェビッチ ボジョビッチ(ラドニッチ) | |
FW | チェトコビッチ(ニコラ・ブヨビッチ) ブルザノビッチ プロビッチ |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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