キリンチャレンジカップサッカー2007
3月24日 日本代表×ペルー代表
イビチャ・オシム監督率いる日本代表が、『キリンチャレンジカップ2007〜ALL FOR 2010!〜』とともに動き出した。ペルー代表を迎えた07年の第一戦が、3月24日に横浜国際競技場で行なわれたのだ。
ペルーはFIFAランキング70位で、同42位の日本にとっては格下になるかもしれない。しかし、ブラジルやアルゼンチンらと南米協会の公式戦で真剣勝負を演じているだけに、決して侮ることはできない。実際にこれまでの対戦成績では、1分け2敗と負け越しているのだ。最近では05年5月に『キリンカップサッカー2005』で対戦し、0-1で敗れている。この試合で失点の原因となった高速のカウンターアタックには、今回のゲームでも十分な警戒が必要だ。
07年の初戦として見どころの多いゲームには、さらなる興味の対象が加えられていた。中村俊輔(セルティック/スコットランド)と高原直泰(フランクフルト/ドイツ)の、ドイツW杯以来の代表復帰である。オシム監督就任後初となる欧州クラブ所属選手の招集は、サポーター、ファン、メディアの熱い注目を集めていた。
オーソドックスな4-4-2の布陣でスタートした日本は、キックオフ序盤からゲームを支配していく。試合開始から15分までのボールキープ率はペルーが54パーセントと上回っているが、これは自陣や最終ラインでのボール回しが多かったため。より積極的にゲームを動かしていたのは日本だった。
開始1分、いきなりスタジアムがどよめく。中盤で激しいプレッシャーを受けた中村が、それでもボールを保持する。マークを振りほどいた背番号10は、左サイドを走る駒野友一(広島)へ鮮やかなサイドチェンジを通したのだ。駒野のクロスは相手DFにクリアされたが、これから始まるゲームへの期待感を抱かせるのに十分なシーンだった。
観衆の期待が現実となったのは17分だ。左サイドで高原が獲得した直接FKを、中村がゴール前へ供給する。緩やかな弧を描いたボールはGKの飛び出しを許さず、DFに競り勝った巻誠一郎(千葉)が鮮やかなヘディングシュートでゴールネットを揺らした。
スコアを刻んだことで攻撃のリズムを得た日本は、ここからしっかりとゲームを掌握していく。流動性のある中盤はペルーのカウンターをしっかりと封じ込み、マイボールの局面では積極的に攻撃を仕掛けていくのだ。26分には攻撃参加した駒野が、左サイドからドリブルで持ち込み際どいシュートを放つ。2分後には30メートル強の直接FKを中村が得意の左足で狙い、スタジアムを沸かせた。「前半は相手の思いどおりのプレーをさせなかった」とペルーのウリベ監督は語っているが、日本としても申し分のない内容でハーフタイムを迎えたと言える。
とはいえ、1-0はセーフティーリードではない。ましてやカウンターに定評のあるペルー相手には危険なスコアだ。
ここで試合を決定づけたのが、2人の欧州クラブ所属選手だった。54分、左サイドのFKがゴール前へ入る。ライナー性のボールは高原が左足でピタリと収め、すぐさま振り抜いた右足のシュートがゴール右へ吸い込まれたのだった。
「落ち着いてトラップできたので、流れのままに反転して打つことができた」というシュートは、ドイツ・ブンデスリーガでの好調ぶりをそのまま持ち込んだものであり、「高原という選手が、なぜドイツでプレーできているのか、それが偶然でないことが分かった」とオシム監督に言わしめた場面でもあった。
「後半は体力的な消耗もあった」(ウリベ監督)というペルーのコンディションを考えれば、この時点で勝利はかなり近づいていた。そうした観点から考えれば、オシム監督が残り時間で積極的に選手を交代したのも納得できるだろう。60分の中村憲剛(川崎F)の投入を皮切りに、指揮官は控え選手を次々と送り出す。2月の代表候補合宿に招集された矢野貴章(新潟)、U-22日本代表の家長昭博(G大阪)と水野晃樹(千葉)、それに藤本淳吾(清水)がこの試合で国際Aマッチへのデビューを飾った。
だからといって試合のクオリティは落ちないところが、昨年からの積み重ねの成果だろう。「日本のサッカーの目ざす方向性が、今日の後半の一部の時間帯に表れていた」というオシム監督のコメントは、交代選手が投入されたあとのスピーディーな攻撃を評価してのものである。また、中澤佑二がドイツW杯以来の復帰を果たした最終ラインも、最後まで安定感を保っていた。
国内ベースのチームに中村と高原を融合させるというこの試合の目標は、2-0という結果とともに一定の成果を与えられるものだっただろう。この試合で国際Aマッチ100試合出場を達成したキャプテンのGK川口能活も、「勝利に満足してはいけないけれど、チーム全体が集中していたし、よく動いていた」と話している。
07年最大のターゲットであるアジアカップ3連覇への第一歩は、確実に踏み出されたと言っていい。次なる進化の舞台は、6月上旬に開催される『キリンカップサッカー2007〜ALL FOR 2010!〜』だ。
[文: 戸塚啓]
■3月24日 神奈川・横浜国際総合競技場(日産スタジアム)
日本代表 [2ー0] ペルー代表
1) FW 高原直泰 2) DF 中澤佑二 3) MF 中村俊輔 4) FW 巻誠一郎 5) DF 田中マルクス闘莉王 6) GK 川口能活 7) MF 鈴木啓太 8) DF 阿部勇樹 9) MF 加地亮 10) MF 駒野友一 11) MF 遠藤保仁 |
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1) FW 高原直泰
2) DF 中澤佑二
3) MF 中村俊輔
4) FW 巻誠一郎
5) DF 田中マルクス闘莉王
6) GK 川口能活
7) MF 鈴木啓太
8) DF 阿部勇樹
9) MF 加地亮
10) MF 駒野友一
11) MF 遠藤保仁
<代表監督> オシム
<出場選手>
■3月24日/神奈川・横浜国際総合競技場(日産スタジアム)
日本代表 (1) 2 | <巻> <高原> | |
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ペルー代表 (0) 0 | ||
日本 | ||
GK | 川口 | |
DF | 中澤 田中マルクス 阿部(中村) | |
MF | 中村(藤本) 加地 遠藤(羽生) 鈴木(家長) 駒野 | |
FW | 高原(水野) 巻(矢野) | |
ペルー | ||
GK | フローレス(フォーサイス) | |
DF | イダルゴ ビルチェス デラアサ アルバラード | |
MF | バサラル(トーレス) マリーニョ サンチェス セスペデス | |
FW | ヒメネス(モスト) エレラ |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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