試合詳細レポート

2006

キリンカップサッカー2006
第1戦 5月9日 日本代表×ブルガリア代表

 前週末でJリーグが中断となり、いよいよワールドカップ・モードに突入した。約1か月後の本大会を見据え、チームは『キリンカップサッカー2006』に臨んだ。
 国内組だけで構成されたこの日のスタメンには、浦和レッズと鹿島アントラーズの所属選手が含まれていなかった。この2チームは日曜日にJリーグを戦ったため、ジーコ監督はコンディションを配慮してスタメンから外したのである。システムは3月のエクアドル戦に続いて3−5−2でスタートした。
 3年前の『キリンカップサッカー』以来となる長居スタジアムでのブルガリア戦は、意外な展開で幕を開ける。キックオフ直後の1分、ヨルダン・トドロフの突破からスベトスラフ・トドロフに先制点を献上してしまうのだ。マークにつきれなかった右ストッパーの田中誠が、「一瞬のスキを突かれた」と悔やんだ場面だった。
 しかし日本は気落ちすることなく、積極的に相手ゴールへ襲いかかっていく。4分、5分と村井慎二が左サイドを突き、際どいクロスがゴール前へ供給される。久保竜彦に代わって試合当日に先発を言い渡された、巻誠一郎の高さを生かす攻撃だ。

 得意のセットプレーからゴールに迫ったのは8分。遠藤保仁の右CKを、中澤佑二が頭で合わせた。代表では初めてトップ下に起用された遠藤は、11分に2トップを追い越して最前線に飛び出すなど、意欲的にゴールを目ざしていく。
 最初の決定機は16分。玉田圭司のパスを受けた阿部勇樹が、右サイドからシュート態勢に入る。精度の高い右足シュートは、相手GKもCKへ逃げるしかなかった。
 5月15日のワールドカップ登録メンバー発表をまえに、出場機会を与えられた選手たちは懸命のアピールを試みる。ドイツ行きをつかみたいという彼らの思いは、ブルガリアを自陣にクギ付けにすることにつながっていった。
 18分には福西崇史のサイドチェンジから、村井が左サイドのスペースへ侵入する。ファーサイド際のクロスを巻が強引にシュートへつなげるが、ボールをワクに持っていくことができなかった。
 10分後、2度目の決定機が訪れる。遠藤のヒールパスに反応した玉田が、ペナルティエリア左外から左足を振り抜く。相手GKのセーブを免れた一撃は、しかし、右ポストに弾かれてしまった。
 その後も日本の波状攻撃が続く。24分には巻が右足ダイレクトボレーを放ち、1分後には右サイドからのクロスを遠藤が右足ボレーで合わせる。しかし、ワクをとらえることはできない。
 37分、38分とブルガリアにカウンターを浴びるが、日本はまったくひるまない。38分には加地亮からのクロスに巻と遠藤が飛び込み、スタジアムから歓声が、次いで悲鳴が上がった。その直後にも玉田がスタジアムを沸かせるが、左足シュートはGKの正面をつく。
 41分にはアクシデントが。左サイドでクロスを受けた村井が、左ひざ前十字じん帯断裂の重傷を負ってしまったのだ。すぐに三都主アレサンドロが投入され、ほどなくして前半が終了した。

 後半も主導権を握ったのは日本だった。55分、阿部からのパスを受けた玉田が、ゴール正面からシュートを放つ。しかし、ワクを捕らえることができない。
 ジーコ監督が動いたのは61分だった。福西に代えて小野伸二を、田中誠に代えて小笠原満男を投入する。システムも4−4−2に変更され、遠藤と阿部のダブルボランチとなった。
 この交代は効果抜群だった。小笠原の2トップを追い越す動きと小野の決定的なラストパスが、攻撃を活性化していくのである。
 ビッグチャンスは72分。小野のタテパスを胸トラップで処理した玉田が、そのまま左足ボレーを放つ。トラップからシュートへの流れは鮮やかだったが、わずかにゴール左へ逸れてしまった。
 しかし76分、待望のゴールが生まれる。加地のクロスが左サイドへ流れ、詰めてきた三都主がフィニッシュする。低い弾道の一撃はゴール前へ向い、「三都主はよくああいうシュートを狙っている。コースに入って、ちょっとでも変えるように意識していた」という巻が右足に当ててネットを揺すった。
 ここからジーコ監督は佐藤寿人と長谷部を送り込み、貪欲に勝ち点3を追求した。ところが91分、右サイドからのFKが誰にも触れずにゴールインしてしまう。
「ファウルをせずに寄せるだけで良かったのに」と、ジーコ監督はゴール前の対応ではなくFKを与えたことを悔やんだ。しかし、チームの出来には及第点をつけた。

「序盤に失点をしてしまったが、バランスを取りながら気持ちを前面に出して戦っていたと思う。最終的に敗れてしまったのは、やはり決めるべきところで決めないと痛い目に遭うということだ。ただしここで負けたからといって、チームの方向性が間違っているというわけではない。自分たちのやってきたことを信じて、課題を克服しながら次の試合に臨むつもりだ」
 ドイツ・ワールドカップのメンバー入りをかけた激しいアピールは、5月13日のスコットランド戦まで続く。

[文: 戸塚啓]

試合データ

■5月9日 大阪・大阪長居スタジアム
日本代表 [1ー2] ブルガリア代表

日本代表選手集合写真 説明イラスト  1) MF 福西崇史
 2) MF 村井慎二
 3) FW 巻誠一郎
 4) MF 遠藤保仁
 5) DF 中澤佑二
 6) GK 川口能活
 7) DF 田中誠
 8) MF 阿部勇樹
 9) FW 玉田圭司
10) MF 加地亮
11) DF 宮本恒靖
  • 日本代表選手集合写真
  • 説明イラスト
  •  1) MF 福西崇史
     2) MF 村井慎二
     3) FW 巻誠一郎
     4) MF 遠藤保仁
     5) DF 中澤佑二
     6) GK 川口能活
     7) DF 田中誠
     8) MF 阿部勇樹
     9) FW 玉田圭司
    10) MF 加地亮
    11) DF 宮本恒靖

写真提供/(c)Jリーグフォト

<代表監督> ジーコ

<出場選手>

■5月9日/大阪・大阪長居スタジアム
日本代表 (0) 1 <巻>
ブルガリア代表 (1) 2 <トドロフ><ヤネフ>
日本    
GK 川口
DF 宮本 中澤 田中(小笠原)
MF 加地 村井(三都主) 福西(小野) 遠藤 阿部(長谷部)
FW 玉田 巻(佐藤)
ブルガリア    
GK コレフ
DF キリロフ トプザコフ アンゲロフ ミラノフ(V・イリエフ)
MF ヤンコビッチ(G・イリエフ) ワグネル テルキスキー(カラスラボフ) ペトロフ(ヤネフ)
FW S・トドロフ(ドモフチスキー) Y・トドロフ

*月日/場所
 国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)

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