試合詳細レポート

2006

キリンチャレンジカップ2006
3月30日 日本代表×エクアドル代表

 ワールドカップ開幕までいよいよ71日となった3月30日、今年2度目の『キリンチャレンジカップ2006』が大分ビッグアイで開催された。今回は国際Aマッチデーではないため、Jリーグでプレーする選手たちでチームが構成された。
 対戦相手のエクアドルは、激戦の南米予選をブラジル、アルゼンチンに次ぐ3位で通過した実力派である。しかも、ジーコ監督のもとで南米勢と戦った過去8試合は、3分け5敗と白星がない。南米勢へのアレルギーは、ワールドカップ前に取り除いておかなければならない。この時期にエクアドルと対戦する意味がそこにあった。
 メンバー発表後に柳沢敦が、事前合宿開始後に遠藤保仁がそれぞれケガで戦線離脱したこともあり、ジーコ監督は2月のボスニア・ヘルツェゴビナ戦と同じ4−4−2ではなく、3−5−2を選んだ。とはいえ、「フォーメーションは変わってもやり方は変わらない」と中澤佑二が話したように、チーム内に戸惑いはなかった。むしろ、「勝ちたい。それが一番。いい試合をして勝ちたい」と三都主アレサンドロが語ったように、選手たちは勝利への意欲に溢れていたのである。

 強い気持ちはグラウンドですぐに表現された。キックオフ早々の53秒、三都主の突破から福西崇史が右足でシュートを放つ。3−5−2への変更で高い位置に入った三都主のドリブル突破が、好機を演出していく。
 12分、三都主へのファウルで得た左サイドからのFKを、小笠原満男がゴール前へ配球する。ニアサイドの福西が頭で合わせる。
 15分、昨年9月のホンジュラス戦以来の出場となる玉田圭司が、右サイドから持ち込んで小笠原へスルーパスを通す。ゴールの予感が高まっていく。
 ビッグチャンスは20分。左サイドでパスカットした福西が、すぐに三都主へはたく。三都主はゴール前へライナー性のクロスを入れる。これを久保竜彦が右足ダイレクトで合わせたが、わずかタイミングがズレてワクをとらえることができない。
 直後の23分にも、三都主−久保のホットラインが相手守備陣を脅かす。左サイドからのクロスを、背番号9がヘディングシュートで狙う。うまくフリーになった久保だが、シュートはバーを越えた(記録はオフサイド)。
 つかんだチャンスを生かせなければ、試合の流れが相手へ移るのは必然だ。30分前後からエクアドルが攻勢を仕掛け、33分にはこぼれ球を拾ったテノリオが強烈な左足ミドルを浴びせてくる。「ボールがブレていたので、キャッチするの難しかった」というGK川口能活は、左手1本でシュートコースを修正した。

 後半も主導権をつかんだのは日本だった。48分、左サイドから抜け出した福西のクロスを、久保が右足ボレーで合わせる。54分、小野伸二がミドルレンジから右足ボレーを放つ。64分、小野のタテパスがペナルティエリア内右の玉田へつながる。胸トラップでシュート態勢を整えた玉田は、そのまま右足を振り抜く。至近距離からの一撃は、ブロックに入ったDFにコースを変えられてしまった。
 68分にもビッグチャンスが。三都主のクロスから、久保のヘディングシュートが相手GKを襲う。しかし、ゴール右スミへのシュートはセーブされてしまった。1分後にも小野のシュートがGKに阻まれた。
 ジーコ監督が動く。76分、2トップを下げて巻誠一郎と佐藤寿人を投入する。これが見事に当たった。
 85分、三都主のクロスを佐藤が蹴り込んだのだ。ニアサイドに狙いどころを定めた2人の意思がつながった、見事なワンタッチゴールだった。「アレックス(三都主)のボールがすごくよかった」と佐藤は話し、三都主は「ヒサトがいいところに走ってくれた」とゴールゲッターを讃えた。

 「予想していたとおりの難しい試合だった。要所要所でいい部分があったが、日本のスピードにやられてしまった。後半はパス回しもうまくいかなかった。DFはいい仕事をしてくれたが、FWがチャンスを作れなかったことが敗因だろう」
 エクアドルのルイス・スアレス監督は、試合後の記者会見で素直に敗戦を認めた。ジーコ監督は手応えありである。
 「90分間集中が途切れることがなく、内容的にもいい試合となった。これまで南米のチームに分が悪かったわけだが、それは相手の試合運びがうまいから。ゲームを支配していても自分たちのミス絡みでやられたりしていた。ただし今回は執念を燃やして、守備だけでなく攻撃でも良さが出ていた」
 今年に入って継続的にゲームに出ている久保と小野に復調の兆しが見え、佐藤寿が決勝ゴールをあげるなど、ドイツへのサバイバルは熾烈を極めている。それがまた、チームをさらなる高みへ導いているのだ。
 次のテストマッチは5月中旬。ワールドカップの足音が、聞こえてきた。

[文: 戸塚啓]

試合データ

■3月30日 大分・大分スポーツ公園総合競技場 ビッグアイ
日本代表 [1ー0] エクアドル代表

日本代表選手集合写真 説明イラスト  1) MF 福西崇史
 2) FW 久保竜彦
 3) DF 坪井慶介
 4) DF 中澤佑二
 5) GK 川口能活
 6) DF 三都主アレサンドロ
 7) FW 玉田圭司
 8) MF 加地亮
 9) MF 小笠原満男
10) MF 小野伸二
11) DF 宮本恒靖
  • 日本代表選手集合写真
  • 説明イラスト
  •  1) MF 福西崇史
     2) FW 久保竜彦
     3) DF 坪井慶介
     4) DF 中澤佑二
     5) GK 川口能活
     6) DF 三都主アレサンドロ
     7) FW 玉田圭司
     8) MF 加地亮
     9) MF 小笠原満男
    10) MF 小野伸二
    11) DF 宮本恒靖

写真提供/(c)Jリーグフォト

<代表監督> ジーコ

<出場選手>

■3月30日/大分・大分スポーツ公園総合競技場 ビッグアイ
日本代表 (0) 1 <佐藤>
エクアドル代表 (0) 0
日本    
GK 川口
DF 宮本 坪井 中澤
MF 小笠原 福西 小野 加地 三都主
FW 久保(佐藤) 玉田(巻)
エクアドル    
GK モラ
DF ペルラサ ジョージ コルテス エスピノサ
MF ウルティア(サリタマ) ソレディスパ(カイセド) アジョビ テノリオ
FW バルデオン カルデロン(フィゲロア)

*月日/場所
 国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)

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