キリンチャレンジカップ2005
11月16日 日本代表×アンゴラ代表
およそ半年ぶりに国際Aマッチの舞台となった国立競技場は、キックオフの数時間前から熱気に包まれていた。寒さを感じさせないサポーターのコールが飛び交っていた。11月16日、日本代表は<キリンチャレンジカップ2005>のアンゴラ戦に臨んだのである。
来年のワールドカップに向けて、この試合が持つ意味は大きかった。アフリカ勢とのゲームは03年11月のカメルーン戦以来であり、アフリカ勢とは本大会で8分の5の確率で同じグループに入るからである。FIFAランキングでは日本がはるかに上回るが、ドイツを見据えた重要なシミュレーションと位置づけることができた。
「(10月の東欧遠征の2試合のように)ぽっとゲームに入るのではなく、高い位置から相手にプレッシャーをかけながら、気持ちを引き締めていこうと選手を送り出した」
試合前のジーコ監督の指示どおりに、日本は序盤からアグレッシブにアンゴラのゴールへ迫る。まず6分、左サイドの三都主アレサンドロのクロスを、高原直泰が胸トラップから左足ボレーで狙う。ペナルティエリア左からのシュートは、際どくバーをかすめていった。
その直後、高原が今度はアシスト役に回る。中田英寿のパスを胸で落とすと、中村俊輔が左足を振り抜く。低く正確なシュートが相手GKを襲った。
キックオフ直後の連続攻撃でテンションの高まったスタジアムが、一気にヒートアップしたのは10分だ。右サイドから中村俊輔が供給した直接FKに、高原が見事なポジショニングで飛び込む。DFに競り合うことさえ許さなかったヘディングシュートは、しかし、バーに嫌われてしまった。
日本の波状攻撃は止まらない。11分、駒野友一の鮮やかなサイドチェンジから、ペナルティエリア左の中田英寿がゴール前へラストパスを送る。二人のDFの間をすり抜けたボールを、柳沢敦がダイレクトで合わせる。しかし、左足のシュートはGKに阻まれた。
ここまでの流れで先制点を奪っておけば、早々にワンサイドゲームとなっていたかもしれない。「前半のうちに1点取っていれば、もっと楽にゲームを進められたと思う」と、高原も振り返っている。
ただ、「得点が入らなかったことによる焦りとか、自分たちのバランスを崩すようなことはなかった」とジーコ監督が分析したように、日本がなおも積極性をアピールしていったことを忘れてはいけない。ワールドカップで拮抗したゲームが予想されることを考えても、攻撃のギアをさらにあげていったのは評価されるべきだ。「まずはチャンスを作ることが重要だった。(高原とは)お互いの距離をみながらスペースを使うことができた」という柳沢の言葉も、決して言い訳ではなかったはずだ。
次なるビッグチャンスは26分に訪れた。左サイドの三都主のクロスに呼応して、高原がニアサイドへ飛び出す。フリーで放たれた右足ジャンピングボレーは、乾いた金属音とともに歓声ではなくため息を運んだ。GKが一歩も動けなかった一撃が、今度はクロスバーに阻まれてしまったのだ。
34分に高原、40分には柳沢がシュートを放ったが、前半の日本はゴールを奪うことができなかった。アンゴラも8本のシュートを放ったが、そのほとんどはペナルティエリア外からのもので、GK川口能活がセーブを必要とする場面はなかった。シュート数は9対8と互角だが、完全なる日本のリズムでハーフタイムを迎えた。
エンドが変わっても、日本が攻め、アンゴラが耐えるという試合の構図に変化はない。
54分には左サイドからのFKを中澤祐二がヘディングで合わせ、日本が得意とするリスタートのオプションを披露する。58分にはタテパスから高原が抜け出すが、アンゴラも必死のディフェンスでゴールを守る。
ここでジーコ監督が動いた。66分、3バックの右サイドを務めていた田中誠を下げて、松井大輔を投入したのだ。システムは3-5-2から4-4-2に代わり、MFの配置もより攻撃的となる。79分には2トップの一角を高原から大黒将志にスイッチし、前線がさらに活性化されていく。
それでも、アンゴラの守備の組織力は乱れなかった。後半だけで5人の選手を交代させたが、ゴンサルベス監督は最終ラインをいじらなかった。なんとかしてドローに持ち込もうとしたのだろう。
だが、「しっかり勝って終わろうと話していた」(中村)という日本は、貪欲なまでにゴールを求めた。
「最後の最後まで1点を狙う気持ちを持ち続けていた」とジーコ監督が評価したスピリッツは、果たして、5万人を越える観客を熱狂させることになる。
90分、右サイドでスローインを受けた中村が、ファーポスト際へクロスを送る。柳沢が頭で折り返すと、ゴール前に松井が詰めていた。フリーで待ち構えていた。
「俊輔さんが逆サイドに蹴って、それが大きかったので、このへんかなと。ごっつぁんだったので、みんなに感謝したい」という松井が、代表初ゴールをヘディングで突き刺したのである。1分強のロスタイムで、アンゴラにできることはなかった。
「最終的にゴールを決めて、勝利で終えたことは来年につながる。厳しさを克服して最後に勝利できたのは、いい意味での弾みがつくと思う」
試合後、ジーコ監督は満足そうにこう語った。2005年を勝利で締めくくった日本は、いよいよ、集大成のワールドカップ・イヤーを迎える。
[文: 戸塚啓]
■11月16日 国立競技場
日本代表 [1ー0] アンゴラ代表
1) MF 三都主アレサンドロ 2) DF 田中誠 3) FW 柳沢敦 4) MF 中村俊輔 5) DF 中澤佑二 6) GK 川口能活 7) FW 高原直泰 8) MF 駒野友一 9) MF 中田英寿 10) MF 稲本潤一 11) DF 宮本恒靖 |
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1) MF 三都主アレサンドロ
2) DF 田中誠
3) FW 柳沢敦
4) MF 中村俊輔
5) DF 中澤佑二
6) GK 川口能活
7) FW 高原直泰
8) MF 駒野友一
9) MF 中田英寿
10) MF 稲本潤一
11) DF 宮本恒靖
<代表監督> ジーコ
<出場選手>
■11月16日/国立競技場
日本代表 (0) 1 | <松井> | |
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アンゴラ代表 (0) 0 | ||
日本 | ||
GK | 川口 | |
DF | 田中(松井) 宮本 中澤 | |
MF | 三都主 駒野 中田 中村 稲本(阿部) | |
FW | 高原(大黒) 柳沢 | |
アンゴラ | ||
GK | ジョアン・リカルド | |
DF | ジャシント ジャンバ アレックス デルガド | |
MF | フィゲイレド(シマン) ミロイ メンドンサ(ゼカランガ) | |
FW | アクワ(ロベ) エドソン(サンタナ) マウリト(フラビオ) |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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