試合詳細レポート

2005

キリンチャレンジカップ2005
9月7日 日本代表×ホンジュラス代表

 ドイツ・ワールドカップへのリスタートは、<キリンチャレンジカップ2005>から始まった。9月7日、日本代表はホンジュラス代表とのテストマッチに臨んだのである。心配された台風14号も進路を変え、大会は予定どおりに開催された。
 日本代表が宮城スタジアムで戦うのは、これが3度目になる。2000年6月のこけら落としは<キリンカップサッカー2000>で、中村俊輔の鮮やかな直接フリーキックにスタジアムが沸いた。スロバキアとのゲームは、1-1の引き分けに終わっている。
 2度目は2002年6月18日のトルコ戦だ。FIFAワールドカップの決勝トーナメント1回戦である。いまなお鮮烈な記憶として残る、0-1の敗戦だった。
 このホンジュラス戦に向けて、ジーコ監督は欧州でプレーする6選手を招集した。東アジア選手権とイラン戦を欠場した中田英寿や中村俊輔ら6人の海外組は、揃ってスタメンに名を連ねた。試合前のメンバー紹介で、スタジアムが一気にヒートアップしたのは言うまでもないだろう。

 ところが、開始早々にしてスタジアムを不安が包む。8分、左サイドを突き破られ、先制ゴールを許してしまうのである。さらに27分、またしても左サイドを崩され、2点目を献上してしまう。イラン戦の3バックから4バックへ変更した影響も指摘されたが、「3バックの方が確かに慣れている。でも、それほどマイナスな感じはない」と宮本恒靖は話す。むしろボランチを含めた守備のブロックのバランスが、崩れていたことを問題視すべきだろう。この点については「今日の布陣は初めてのものだし、ヨーロッパ組はコンテディションの難しさもある」というジーコ監督の分析が正しい。
 しかし、反撃ののろしをあげたのは、そのヨーロッパ組だった。33分、中田浩二、中田英寿とボールをつなぎ、稲本潤一が左足ミドルを放つ。DFのトラップミスのような形でゴール前に残ったボールに、いち早く反応したのは高原直泰だった。
 3月30日のバーレーン戦以来の出場となる彼は、昨年3月のシンガポール戦以来のゴールをゲットする。「最初のタッチでいい感じで(ボールを前に)出せたので、あとは落ち着いて決めるだけだった」と振り返ったように、左足アウトでGKのタイミングを外す技巧的なシュートだった。
 これで勢いをつかんだはずだったが、前半ロスタイムにまさかの3点目を喫する。中田英が自陣でボールを失い、そのままシュートを決められてしまったのだ。試合後のジーコ監督は「いつもなら信じられないミスが出た」と話しているが、指揮官のコメントはこの場面を指していただろう。中田英自身、「自分のミスでボールを取られてしまった。あのミスはいらなかった」と悔やんでいる。

 しかし、6月のブラジル戦で2点のビハインドをはねのけた日本である。「気持ちの強さが印象に残った。最後まで試合を捨てないことは評価できる」とジーコ監督が絶賛したように、日本は驚異的な粘りを見せていく。
 まず48分、中村の直接FKから柳沢敦がヘディングシュートを突き刺して1点差に詰め寄る。直後の50分、カウンターアタックからベラスケスにハットトリックを決められてしまう。スコアは2-4となり、再び2点差となる。だが、ここからさらに攻撃のレベルをあげていくのが、いまの日本の強みである。
 55分、左サイドのFKから宮本が倒されてPKを得る。これを中村が決めて1点差に。
 70分、途中出場の小笠原満男からパスを受け、柳沢が左サイドからドリブルで持ち込む。思い切りよく右足を振り抜いたミドルシュートは、GKの右手を弾いてゴールネットを揺らしたのだった。4-4、同点である。
 仕上げは小笠原だ。中村のパスに反応してDFラインの裏に抜け出た三都主アレサンドロが、左サイドからマイナスのラストパスを供給する。フリーで走り込んでいた小笠原が、この極上のアシストを無駄にするはずもない。右足でコースを狙った一撃は、ゴール右を鮮やかに射止めた。5-4、逆転!

 「4点は取られすぎ。良くないと思う」と語ったのは、ボランチとしてフル出場した中田浩二だ。「5点取れたのは良かったと思う。自信につながったと思う」と攻撃面を評価した中田英も、最初に話したのは「見てのとおり。良くない」という反省の弁だった。
 しかし、相性の良くない中南米のチームから奪った勝利は、しっかりとした価値を持つのも確か。試合後のジーコ監督は、「この気持ちの強さがあればどんなときでも跳ね返していけるぞ」と選手たちを讃えたという。
 「チームとしてなかなかうまく連動できなかったと思う。これからはFW、サイドバック、ボランチとのいろんなパイプを増やして、太くしていきたい」
 勝利の余韻に浸ることなく、冷静に課題を分析する中村のスタンスは、チーム全体の向上心を表している。10月の欧州遠征と11月の<キリンチャレンジカップ>が、これまで以上に楽しみになってきた。

試合データ

■9月7日 宮城スタジアム
日本代表 [5ー4] ホンジュラス代表

日本代表選手集合写真 説明イラスト  1) DF 三都主アレサンドロ
 2) MF 中村俊輔
 3) GK 楢崎正剛
 4) MF 中田浩二
 5) DF 中澤佑二
 6) FW 柳沢敦
 7) DF 加地亮
 8) FW 高原直泰
 9) MF 稲本潤一
10) MF 中田英寿
11) DF 宮本恒靖
  • 日本代表選手集合写真
  • 説明イラスト
  •  1) DF 三都主アレサンドロ
     2) MF 中村俊輔
     3) GK 楢崎正剛
     4) MF 中田浩二
     5) DF 中澤佑二
     6) FW 柳沢敦
     7) DF 加地亮
     8) FW 高原直泰
     9) MF 稲本潤一
    10) MF 中田英寿
    11) DF 宮本恒靖

写真提供/(c)Jリーグフォト

<代表監督> ジーコ

<出場選手>

■9月7日/宮城スタジアム
日本代表 (1) 5 <高原><柳沢><中村><柳沢><小笠原>
ホンジュラス代表 (3) 4 <ベラスケス><ベラスケス><マルティネス><ベラスケス>
日本    
GK 楢崎
DF 加地 宮本 中澤 三都主
MF 稲本(小笠原) 中田浩 中田英 中村(田中)
FW 高原(大黒) 柳沢(玉田)
ホンジュラス    
GK モラレス
DF カバジェロ イサギレ(バジェシージョ) フィゲロア
MF ゲバラ ゲレロ フェレラ(オリバ) ベリオス(マリン) ガルシア
FW ラスケス(ベガ) マルティネス

*月日/場所
 国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)

<リーフレット>

試合リーフレット

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