キリンチャレンジカップ2005
5月21日 なでしこジャパン(日本女子代表)×ニュージーランド女子代表
2005年の国内初ゲームで、なでしこジャパン(日本女子代表)がスケールアップした姿を披露した。5月21日、西が丘サッカー場で開催された<キリンチャレンジカップ2005>で、なでしこジャパンはニュージーランド代表を6−0で下したのである。
この試合で注目を集めたのは、2人の高校生だった。国際Aマッチデビューを飾った左サイドバックの宇津木瑠美と、同4試合目のストライカー永里優季だ。
宇津木は4月に韓国で開催されたU−17アジア選手権で、日本の優勝に大きく貢献したことが評価されての代表入り。試合後には「緊張しました」と初々しいコメントも聞かれたが、「攻撃を意識した」という後半は積極的な攻め上がりを見せた。なでしこジャパンでは貴重なレフティーとして、今後に期待を抱かせたデビュー戦と言えるだろう。「ニュージーランドの選手は大きかったけれど、互角にやれたかなと思う」と、宇津木自身も手応えをつかんだようだ。
J2湘南のMF永里源気を兄に持つ永里は、35分と65分にゴールをあげた。「絶対に取りたいと思っていたので、ゴールは嬉しいのひと言です」と、国際Aマッチ初ゴールには笑顔を浮かべた。
昨年のアテネ五輪予選でチームに招集されたが、本大会には出場できなかった。FWにはケガで戦線離脱中の荒川恵理子や、経験豊富な大谷未央ら実力者が揃うが、「1年前よりは代表に慣れてきた」とレギュラー奪取に意欲的だ。「合格点の動きか?」という質問に「まだまだです」と答えたあたりに、代表定着への自信がうかがえる。
この試合では、GK福元美穂にも注目が集まった。アメリカのカリフォルニア・ストームへ移籍したアテネ五輪代表の山郷のぞみも招集されていたが、「フィールドプレーヤーと違って、GKはひとりしか経験が積めない。経験はゲームで身につくものであって、トレーニングではなかなか身につけられないから」という理由から、大橋監督は21歳の福元を先発に指名したのである。
序盤から日本が主導権を掌握したため、残念ながら守備機会はほとんどなかった。
それでも、これが国際Aマッチ4試合目となる福元にとっては、今後につながる貴重な経験となっただろう。若年層の世界大会で実績を残し、アテネ五輪でバックアップメンバーを務めた彼女の成長は、30歳のベテラン山郷にも刺激となり、ひいてはGKのグループ全体のレベルアップにつながっていく。
フレッシュな力だけではない。実力者たちも存在感を示した。
27分に先制ゴールをあげたエースの澤穂希は、後半開始直後にもチームの3点目を決めた。「ボールはよく動いたが、なかなか人が動かず突破口を見い出せなかった」(大橋監督)という前半のムードを払拭した意味でも、46分のヘディングシュートは価値あるものだった。ちなみに先制点は、女子では史上初となる代表通算50ゴールのメモリアル弾だった。
大橋監督は後半に6人の選手を入れ替えたが、それでもチームのクオリティは落ちなかった。この日は予想以上の暑さを記録したため、肉体的な消耗と暑さによる判断力の低下が懸念されたが、選手たちは最後までハードワークをこなした。
世界ランキング12位のなでしこジャパンは、こうして、同20位のニュージーランドを最後まで圧倒したのである。シュート数が27対2で、ボール支配率が67・7パーセントというデータにも、なでしこジャパンの優勢ぶりが表れている。大橋監督は言う。
「個々の選手のレベルアップは感じている。ボールを持って前を向ければ、ボールをどんどん動かしていく。前を向けなければ、前を向いた選手がサポートする。ディフェンスもいい準備をしながら1対1に対応する。そういったイメージなりスキルなりも、少しずつではあるけれど、半年前に比べればできてきたと思う」
収穫の多い<キリンチャレンジカップ>を終えたなでしこジャパンは、5月26日と28日にロシア女子代表とアウェーでテストマッチを戦う。7月下旬から8月上旬にかけては、05年唯一の国際大会となる東アジア選手権が控えている。東アジアの初代女王の座を目ざすなでしこたちの戦いが、<キリンチャレンジカップ>で幕を開けた。
[文: 戸塚啓]
■5月21日 西が丘サッカー場
なでしこジャパン(日本女子代表) [6ー0] ニュージーランド女子代表
1) FW 澤穂希 2) DF 宇津木瑠美 3) DF 須藤安紀子 4) FW 永里優季 5) MF 安藤梢 6) GK 福元美穂 7) DF 川上直子 8) FW 大野忍 9) MF 柳田美幸 10) MF 酒井與惠 11) DF 磯崎弘美 |
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1) FW 澤穂希
2) DF 宇津木瑠美
3) DF 須藤安紀子
4) FW 永里優季
5) MF 安藤梢
6) GK 福元美穂
7) DF 川上直子
8) FW 大野忍
9) MF 柳田美幸
10) MF 酒井與惠
11) DF 磯崎弘美
<代表監督> 大橋浩司
<出場選手>
■5月21日/西が丘サッカー場
なでしこジャパン (日本女子代表) (2) 6 |
<澤><永里><澤><永里><宮間><須藤> | |
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ニュージーランド女子代表 (0) 0 | ||
日本 | ||
GK | 福元 | |
DF | 宇津木 須藤 川上(山岸) 磯崎 | |
MF | 藤梢(宮間) 柳田(中岡) 酒井(高橋) | |
FW | 澤 永里(北本) 大野(大谷) | |
ニュージーランド | ||
GK | イエーツ | |
DF | ギブス(レニー) ジャックマン スミス | |
MF | ムアウッド オニール(ヤロップ) ダンカン(レイ) サウデン(ブロムリー) |
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FW | ハーン(ケインズリー) フェラーラ オーストダム |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
<リーフレット>
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