キリンチャレンジカップ2004
12月16日 日本代表×ドイツ代表
日本代表にとって2004年最後の国際試合は、ドイツ代表を迎えての<キリンチャレンジカップ2004>となった。
国内リーグの年内日程を終了したこともあって、ドイツはほぼベストメンバーで来日してきた。GKカーン、MFバラックらのビッグネームが経験の少ない若手選手をサポートする陣容は、「チャンスは平等に与えられる」というクリンスマン監督の方針のもとで、この日本戦から始まるアジアツアーに高いモチベーションで臨んでいる。
宮本が右足ハムストリング筋膜炎、松田と中澤がカゼで体調不良と、最終ラインに離脱者が続出した日本は、いつもの3バックではなく4バックを編成した。キックオフから4−4−2のフォーメーションで戦うのは、3月31日のシンガポール戦以来である。
それでも、最初にチャンスをつかんだのは日本だった。10分、三都主アレサンドロの左CKから、ドイツのブンデスリーガでプレーする高原直泰がヘディングシュートを放つ。残念ながらワクを捕らえられなかったが、高原の得点への意欲が早くも表れた場面だった。
2分後、またも高原がゴールへ迫る。中盤右サイドでパスを受けた小笠原満男が、ゴール前のスペースへラストパスを供給する。走り込んだ高原はシュートに持ち込めなかったが、鋭い出足がドイツDFを慌てさせた。
ドイツが反撃に転じたのは14分。右サイドからクローゼが持ち込み、グラウンダーのクロスをバラックがダイレクトの左足で合わせる。楢崎が左手1本で弾いたボールは再びバラックのもとへわたるが、2度目のシュートはゴールカバーに入った小笠原がクリアした。
日本も負けてはいない。26分、リズミカルなパス回しから加地亮が右サイドを突破する。GKカーンが弾くしかなかったクロスは、DFが辛うじてクリアした。
前半終了間際の40分にも、小笠原のサイドチェンジから加地が右サイドを突く。ペナルティエリア内でパスを受けた高原は、反転直後にDFと接触して倒されたが、ここはノーホイッスルだった。
拮抗した試合が動いたのは、後半開始直後の53分だった。ゴール左からの直接FKを、バラックが左スミへ蹴り込む。GK楢崎はきっちり反応したが、こぼれ球をクローゼに押し込まれてしまう。「取りにいこうとした。1点目がなければ……」と楢崎は悔しがったが、ここから試合の流れはドイツへ傾いていく。
59分、日本のCKからドイツがカウンターを浴びせる。フリーで抜け出したクローゼのシュートは、GK楢崎が辛うじて弾き出す。しかし69分、ドリブルで持ち込んだバラックに、左足で切り返して右足でシュートする得意のパターンから追加点を奪われた。
失点直後の70分、ジーコ監督は大久保嘉人、遠藤保仁、三浦淳宏を投入。前線は大久保と玉田圭司の2トップとなり、左サイドバックの三都主がひとつ前へポジションをとる。
これで攻撃が活性化した日本は、75分、左CKから田中誠が決定的なヘディングシュートを放つ。80分には三浦が左サイドを突破し、グラウンダーのラストパスを通す。ダイレクトで大久保が落としたボールを、三都主が左足で合わせる。「ちょっとタイミングがずれてしまった」というシュートは、GKカーンの胸に収まった。
ドイツも最後まで闘志を剥き出しにしてきた。ロスタイムに入った92分、シュバインシュタイガーのインターセプトからアサモアがドリブルで突進し、最後はクローゼが右足で流し込んだ。ロスタイムに入ってもなおチャンスを見逃さないドイツのしたたかさは、日本のプレーヤーに世界の厳しさを改めて痛感させることとなった。
「プレッシャーの中でボールをコントロールしてパスをつなぐ力、相手のミスを逃さないところで差があったと思う」
試合後、高原はこう語った。稲本潤一も力の差を認めざるを得なかった。
「完全に崩されてやられてしまった。ドイツはすごく経験のあるチームだった。プレーが正確だし、小さいミスも逃さないですから」
ドイツとの初対戦は0−3の敗戦に終わってしまったが、収穫がなかったわけではない。久しぶりの4−4−2、しかも中心選手を欠いたなかでドイツの厳しさを体感できたのは、バックアップ層のレベルアップをうながすだろう。6月のイングランド戦以来となる稲本の復帰も、来年2月開幕のアジア最終予選へ向けた好材料にあげられる。
「ドイツに負けたからといって、1年間みんなで築いてきたものがなくなるわけではない。悲観する必要はないし、この敗戦を引きずることはない。気持ちを切り替えて、来年もしっかりとした戦いをしたい」
試合後、ジーコ監督はこう語った。「強い相手と対戦することで、自分たちに何が足りないのかが分かる」というのがジーコ監督の持論だ。今回の<キリンチャレンジカップ2004>から、選手たちは何を感じ、何をつかんだのか。この日の敗戦の意味は、2005年の戦いぶりで明らかにすればいい。
[文: 戸塚啓]
■12月16日 横浜国際総合競技場
日本代表 [0ー3] ドイツ代表
1) MF 福西崇史 2) FW 鈴木隆行 3) GK 楢崎正剛 4) DF 田中誠 5) DF 加地亮 6) MF 三都主アレサンドロ 7) FW 高原直泰 8) MF 稲本潤一 9) MF 小笠原満男 10) DF 茶野隆行 11) MF 藤田俊哉 |
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1) MF 福西崇史
2) FW 鈴木隆行
3) GK 楢崎正剛
4) DF 田中誠
5) DF 加地亮
6) MF 三都主アレサンドロ
7) FW 高原直泰
8) MF 稲本潤一
9) MF 小笠原満男
10) DF 茶野隆行
11) MF 藤田俊哉
<代表監督> ジーコ
<出場選手>
■12月16日/横浜国際総合競技場
日本代表 (0) 0 | ||
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ドイツ代表 (0) 3 | <クローゼ><バラック><クローゼ> | |
日本 | ||
GK | 楢崎 | |
DF | 加地 田中 茶野 三都主(西) | |
MF | 福西 稲本(遠藤) 小笠原 藤田(三浦) | |
FW | 鈴木(玉田) 高原(大久保) | |
ドイツ | ||
GK | カーン | |
DF | オボモイエラ ベアンス メルテザッカー シュルツ | |
MF | エルンスト(エンゲルハルト) シュナイダー(ボロウスキー) バラック | |
FW | アザモア クローゼ ポドルスキー(シュバインシュタイガー) |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
<ポスター・パンフレット>
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