試合詳細レポート

2004

キリンチャレンジカップ2004
8月18日 日本代表×アルゼンチン代表

 激闘のアジアカップが終わり、日本代表は再びドイツへの道のりを歩み始める。その第一歩となったのが、8月18日に行なわれた<キリンチャレンジカップ2004>のアルゼンチン戦である。

 アテネ五輪の出場メンバー(オーバーエイジも含む)とイタリア・セリエAの一部所属選手を欠いたアルゼンチンだが、それでも控えGKを除く来日メンバー全員がスペイン、ドイツ、イタリアのクラブに所属する豪華な顔ぶれである。なかでも今季からレアル・マドリードへ移籍したセンターバックのサムエル、技巧派MFのリケルメ(ビジャレアル/スペイン)、スペインの名門デポルティボで活躍するスカローニらは、06年のドイツ・ワールドカップでの活躍が期待されるトップクラスのタレントだ。

 対する日本は、アジアカップ優勝チームから海外クラブに所属するGK川口能活とMF中村俊輔が外れ、代わって楢ヵ正剛と小笠原満男がスタメンで出場した。「現時点での力をはかる機会」とジーコ監督が位置づけたように、過去4連敗のアルゼンチンにアジアカップ優勝チームの実力がどこまで通用するのかは、非常に興味深いところである。

 試合はいきなり動く。

 日本の自陣右サイドで宮本恒靖とD・ミリートがスライディングで競り合い、こぼれ球にプラセンテが反応する。加地亮をかわしてペナルティエリア内に突っ込むが、田中誠、中田浩二、帰陣した加地の3人がプラセンテを囲い込んでボールを奪う。ところが、「一瞬だけ動きが止まってしまった」と田中が振り返ったように、3人はボールの処理を譲り合ってしまう。すかさず詰め寄ったサンタナにボールを奪われ、シュート性のセンタリングをガレッティに押し込まれてしまった。キックオフからわずか4分の失点には、「ちょっと残念な失点の形。試合の入り方も悔やまれる」と、キャプテンの宮本も試合後に唇を噛んだ。

 その後もアルゼンチンは、高い個人技をベースに日本を追い詰めていく。「相手に展開されて回されてしまった」と福西崇史は語るが、前半の日本は守勢に立たされる時間が長く、1本のシュートも記録できない。逆に34分、左サイドをスカローニにえぐられ、M・サンタナに2点目を許してしまった。
 なかなか攻撃の形が作れないなかで、目についたのが宮本の攻撃参加である。「質の高い守備をされた」と言うように、アルゼンチンの素早いプレッシャーが日本のアウトサイドやボランチを苦しめるなかで、センターバックの彼は攻撃にアクセントをつけようとしていた。31分には宮本の前線へのパスがきっかけとなり、小笠原が玉田へ際どいスルーパスが供給している。

 後半に入ると、ジーコ監督は田中に代えて松田直樹を、中澤祐二に代えて藤田俊哉を起用し、フォーメーションを3−5−2から4−4−2へ変更する。57分にも遠藤保仁と本山雅志を同時に送り込み、攻撃のさらなる活性化をはかった。

 そして67分、この試合初めてのビッグチャンスをつかむ。藤田のタテパスを鈴木隆行がダイレクトで左サイドへはたく。フォローした三都主アレサンドロは、ニアサイドへグラウンダーのクロスを通す。飛び込んだ玉田圭司がDFの前でコンタクトしたが、シュートは相手GKに弾き出された。

 しかし73分、4万5721人の観衆で埋まる静岡スタジアムが一気に沸き上がった。三都主の左CKから、鈴木が鮮やかなヘディングシュートを突き刺したのだ。
 1点差に詰め寄った日本は、その後も積極的にゲームを運んでいく。サムエルを中心とする相手守備陣を完璧に崩すのは難しかったが、粘り強くゴールを目ざす姿勢はアルゼンチンにとっても脅威となったはずだ。

「前回1−4で負けたときは、1対1で崩されるパターンが多かったけど、今回は回されましたね。アジアですぐ点に結びつくことはない場面でも、アルゼンチン相手では危ない場面になる。そういう意味では勉強になった」
 左ボランチでフル出場した中田浩は言う。「久しぶりに骨のある相手とやった感じ」というのは、キャプテンの宮本だ。

 6試合を戦ったアジアカップから帰国し、Jリーグも開幕したばかりという難しいコンディションのなかで、世界のトップクラスから勝利を奪うのは難しかった。また、6月のインド戦以来の国際Aマッチ出場となった藤田は、「アジアカップにずっと出ていた選手はしんどそうだったし、試合に出ていなかった選手は周りに合わせるのに苦労した」と話している。フィジカルコンディションだけでなくコンビネーションの部分でも、この日の日本は課題を抱えていた。

「今日は勝つべくしてアルゼンチンが勝った。相手は勝負どころでの速さや球際の強さがあり、試合運びにも優れていた」と、ジーコ監督も完敗を認めている。

 しかし、世界のトップクラスの壁を感じるこういった機会が、レベルアップを促すのは間違いない。「Go for 2006!」という大会のキャッチフレーズどおりに、9月以降のワールドカップ予選につながるゲームだったと言うことはできるだろう。

[文: 戸塚啓]

試合データ

■8月18日 静岡スタジアム エコパ
日本代表 [1ー2] アルゼンチン代表

日本代表選手集合写真 説明イラスト  1) GK 楢崎正剛
 2) MF 福西崇史
 3) DF 田中誠
 4) MF 中田浩二
 5) DF 中澤佑二
 6) FW 鈴木隆行
 7) MF 三都主アレサンドロ
 8) MF 加地亮
 9) FW 玉田圭司
10) MF 小笠原満男
11) DF 宮本恒靖
  • 日本代表選手集合写真
  • 説明イラスト
  •  1) GK 楢崎正剛
     2) MF 福西崇史
     3) DF 田中誠
     4) MF 中田浩二
     5) DF 中澤佑二
     6) FW 鈴木隆行
     7) MF 三都主アレサンドロ
     8) MF 加地亮
     9) FW 玉田圭司
    10) MF 小笠原満男
    11) DF 宮本恒靖

写真提供/(c)Jリーグフォト

<代表監督> ジーコ

<出場選手>

■8月18日/静岡スタジアム エコパ
日本代表 (0) 1 <鈴木>
アルゼンチン代表 (2) 2 <ガレッティ><サンタナ>
日本    
GK 楢崎
DF 田中(松田) 宮本 中澤(藤田)
MF 加地 福西(遠藤) 中田 三都主 小笠原(本山)
FW 鈴木 玉田(山田)
アルゼンチン    
GK フランコ
DF キロガ サムエル G・ミリト
MF スカロニ ベルナルディ プラセンテ リケルメ
FW ガレッティ(イバガサ) D・ミリト(ポンシオ) サンタナ(M・ロドリゲス)

*月日/場所
 国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)

<ポスター・パンフレット>

試合ポスター 試合パンフレット

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