試合詳細レポート

2004

キリンチャレンジカップ2004
7月30日 U-23日本代表×ベネズエラ代表

 アテネ五輪前の国内最後のゲームとなった<キリンチャレンジカップ2004>が、7月30日に国立競技場で開催された。
 対戦相手はベネズエラA代表である。現在進行中のワールドカップ南米予選で、6位と健闘している実力派だ。しかも来日メンバーの半数近くが、先ごろ行なわれたコパ・アメリカ(南米選手権)やワールドカップ予選の出場選手である。アテネへの試金石には格好の相手だった。
 実力的に格上と見られるベネズエラA代表を相手に、日本は立ち上がりからゲームの主導権をつかむ。「コンディションが上がってきていたので、いい試合ができるのではないかと思っていた」という山本監督の言葉どおり、スピーディで正確なパスワークが、相手守備陣を混乱に陥れていく。

 先制点は36分。田中マルクス闘莉王のパスを右サイドで受けた松井大輔が、ゴール左へ流れた大久保嘉人へ絶妙のパスを供給する。DFの背後でフリーとなった大久保は、GKの動きを冷静に見極めて左足ボレーを突き刺した。
 その後も日本は、チームのコンセプトを忠実に遂行していく。最終ライン、MF、FWの3つのラインがコンパクトさを保ちながら、チーム全体が足を止めずにボールを動かして有効なスペースを作り出す。また、攻守の切り替えも速く、ボール保持者へのサポートも適切だった。

 後半に入ると、日本の攻撃がさらに迫力を増していく。まず59分、ショートコーナーから松井がゴール前へクロスを入れると、平山相太がヘディングシュートを決めてリードを2点差にひろげる。U−23日本代表では2月のイラン戦以来となるゴールは、DFに競り合うことすら許さない完璧な一発だった。前半29分に左ポスト直撃のシュートを放っていただけに、「良かった。やっと得点できて嬉しかったです。センタリングが良かったので、あとは決めるだけでした」と、試合後の平山は久しぶりに笑顔を見せていた。

 さらに76分、またも松井が起点となる。トップ下で伸び伸びとプレーした背番号10から、左サイドへ流れた田中達也にスルーパスが通る。巧みなステップで自分の間合いに持ち込んだ田中は、ファーサイドへ絶妙のクロスを送った。
 飛び込んできたのは高松大樹だ。平山と交代出場した彼は、ダイビングヘッドでゴールネットを揺すったのだった。3月5日のUAE戦からゴールに遠ざかっていた男は、およそ5ヶ月ぶりに歓喜の雄叫びをあげた。

 締めくくりは田中達也である。途中出場の菊地直哉からパスを受けると、得意のドリブルでDFを翻弄する。左サイドから内側へ切れ込み、豪快なシュートを蹴り込んだ。
「久しぶりに点が取れて、ホッとした気持ちはある」と田中達が語ったように、4人のストライカーが揃ってゴールを決めたのは、今回の<キリンチャレンジカップ2004>の大きな成果にあげられる。試合後の山本監督も、FW陣のゴールを収穫にあげた。
「4人がきれいに1点ずつ決めることができて、本番に向けて少し余裕を持っていけるのでは」

 3得点に絡んだ松井も、「アシストは最初からウラを狙っていた。FWもいい動きをしてくれた」と、3月3日のレバノン戦以来となる4ゴールを評価していた。そして、「いい形で締め括れた」とも話している。
 FW陣の活躍だけではない。先日の韓国戦で負傷した今野泰幸が復帰し、オーバーエイジのGK曽ケ端準がDF陣との円滑なコンビネーションを見せるなど、仕上がりの良さを印象づける場面は多い。山本監督の言葉にも頼もしい響きがあった。
「日本サッカー界がメキシコ五輪の銅メダル以降、追い求めてきた夢に向けて、これからも前に進んでいきたい。この扉を開けるには、かなり厳しい道のりが待っているが、今日のようにバランスを保ってプレーすることができれば、道は開けると信じてやっていく」
 U−23オーストリア代表、ベネズエラA代表との<キリンチャレンジカップ2004>を戦うことで、U−23日本代表はアテネへ向けた手応えと自信をつかむことができた。本大会の対戦相手を想定したシュミレーションとしても、この2試合は意義深い。

 やり残したことはない。メダル獲得のための、最大限の準備はしてきた。
 もはや表彰台は夢ではない。現実的な目標である。U−23日本代表の健闘に期待したい。

[文: 戸塚啓]

試合データ

■7月30日 国立競技場
U-23日本代表 [4ー0] ベネズエラ代表

日本代表選手集合写真 説明イラスト  1) DF 茂庭照幸
 2) MF 徳永悠平
 3) FW 平山相太
 4) DF 田中マルクス闘莉王
 5) DF 那須大亮
 6) GK 曽ヶ端準
 7) MF 森崎浩司
 8) MF 今野泰幸
 9) FW 大久保嘉人
10) MF 阿部勇樹
11) MF 松井大輔
  • 日本代表選手集合写真
  • 説明イラスト
  •  1) DF 茂庭照幸
     2) MF 徳永悠平
     3) FW 平山相太
     4) DF 田中マルクス闘莉王
     5) DF 那須大亮
     6) GK 曽ヶ端準
     7) MF 森崎浩司
     8) MF 今野泰幸
     9) FW 大久保嘉人
    10) MF 阿部勇樹
    11) MF 松井大輔

写真提供/(c)Jリーグフォト

<U-23代表監督> 山本昌邦

<出場選手>

■7月30日/国立競技場
U-23日本代表 (1) 4 <大久保><平山><高松><田中>
ベネズエラ代表 (0) 0
日本    
GK 曽ヶ端(林)
DF 茂庭 田中マルクス 那須
MF 徳永(駒野) 阿部(菊地) 今野 森崎 松井(石川)
FW 大久保(田中達) 平山(高松)
ベネズエラ    
GK アンジェルッチ(サンハウス)
DF リベロ ローガ ビスガロンド
MF ゴンサレス デパブロス(ディジオリ) ドゥノ ビジャフラス
FW モレノ(トレアルバ) ノリエガ(アクーニャ) ブラボ(アランダ)

*月日/場所
 国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)

<ポスター・パンフレット>

試合ポスター 試合パンフレット

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