キリンチャレンジカップ2004
2月21日 U-23日本代表×U-23韓国代表
最終予選への準備は整った──。2月21日に行なわれた<キリンチャレンジカップ2004>で、U-23日本代表は先のイラン戦やロシア戦からさらに前進した姿を見せた。
大阪・長居スタジアムに迎えたU-23韓国代表には、これまで一度も勝ったことがない。昨年7月のホームゲームは1-1のドローに終わり、9月のアウェーゲームは1-2の苦杯をなめた。
試合はこれまでと違う展開で幕を開ける。過去2戦では立ち上がりから韓国のパワーとスピードに圧倒された日本が、序盤から試合の主導権を掌握したのだ。
1トップの鄭ジョグクの高さを闘莉王が封じることで、韓国の前線と中盤を分断する。前線からの連動性があるプレスも効果的で、鄭にボールをキープされてもパスコースを限定することができていたのだ。
また、チーム全体の攻守の切り替えの速さも、相手の攻撃の芽をいち早く摘み取り、MFやサイドバックの攻撃参加を抑止することにつながっていた。課題とされてきた立ち上がり20分の試合運びに安定感が出てきたのは、1月からの合宿と2つのテストマッチの成果と言えるだろう。
日本優位の構図がスコアに表れたのは、後半開始直後の56分だった。山瀬功治に代わって後半から出場した松井大輔が、左サイドからドリブルで持ち込む。DFの注意が松井に集中する。左後方の田中達也へ、松井はヒールパスを送る。
DFの意表を突くパスも、田中には予測の範囲内だった。タテへドリブルした田中は、右足でフィニッシュに持ち込む。GKが弾く。ゴール正面にボールがこぼれる。
ここに、松井が走り込んでいた。身体を投げ出したGKの眼前で、松井は強烈な右足ボレーを放つ。ゴールカバーに入ったDFが懸命に対応したが、ボールはゆっくりと、しかし確実にゴールラインを越えていった。
1-0!
3回目の対戦で初めて奪った先制ゴールは、しかし、さらなる歓喜の序章だった。81分、この試合2度目の大歓声が長居スタジアムにとどろく。
相手ボールをインターセプトした松井が田中にあずけ、ボールは右サイドの石川直宏へ。2月12日まで日本代表の一員として活動し、今年初めての五輪代表に参加した石川は、そのままタテへ切れ込んで中央へクロスボールを送る。「韓国のDFは前に強いし、引くのも早いので、マイナス気味に出すという約束事があっ
た」というボールは、きっちり平山の足元へわたった。平山のトラップは後ろへ流れたが、詰めていた森崎浩司がダイレクトで左足を振り抜く。DFに当たってわずかにコースが変わった一撃は、ゴール右スミに吸い込まれた。「19日に選手が集まり、28日ぶりに練習を再開したばかりなので、今日は調和が取れ
ていなかった」
試合後の韓国・金鎬坤(キム・ホゴン)監督は調整不足を指摘していたが、「日本は非常に優れたチームになっていた」とも語っている。敵将の言葉からも、2-0というスコアの正当性が分かるだろう。
1月からチームに合流した闘莉王と平山、今野泰幸ら新戦力の加入は、最終予選を戦うチームに新たな可能性をもたらしている。彼らを迎えて再編成された最終ラインや中盤などの各ブロックも、コンビネーションに磨きをかけてきた。日本代表への招集で合流が遅れていた茂庭照幸と石川をテストできたのも、この韓国戦の大きな収穫だった。
選手たちも手応えをつかんでいる。「時間帯によって、選手が何をしなければいけないのかを分かり始めている。ハーフタイムにも、選手一人ひとりの意見がすごく出る。それ自体がチームとして成長したところだと思うし、前向きにいい方向へ向かっている。ディフェンスのバランスも試合ごとに良くなっているし、攻めのバリエーションもたくさん出てきている」
3バックの一角を担う那須大亮は言う。闘莉王にも不安はない。「連携はまったく問題ない。誰が入っても同じように考えてくれるので、ものすごくやりやすい。僕が入っても、みんなが目ざすものはひとつ。勝つために気持ちを込めてプレーしている。今日は絶対に負けられなかった。勝ってUAEへ行こうと話していた。このチームなら、どんな相手とも戦える」
山本監督の言葉にも自信がみなぎる。「一月から積み上げてきたものが、少しずつ出てきた。気持ちを含めて戦える、たくましいチームになった。ただ、これでスタートラインに立っただけ。油断や過信をしないように、メンタルを含めたコンディションを現地で上げていって、いい準備をして3月1日の初戦に臨みたい」
2002年8月の中国戦から、およそ1年半あまり。国際大会や親善試合など「27」のテストマッチを消化し、一歩ずつ世界への階段を上がってきた五輪代表の視野に、いま、アテネの大地がはっきりと見えてきた──。
[文: 戸塚啓]
<ポスター・パンフレット>
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