試合詳細レポート

2004

キリンチャレンジカップ2004
2月8日 U-23日本代表×U-23イラン代表

 U-23イラン代表は、予想以上にタフな相手だった。それだけに、2月8日に行なわれた<キリンチャレンジカップ2004>は、アジア最終予選へのまたとない強化となっただろう。

 この試合は、3月14日のアジア最終予選日本ラウンドの開幕戦を意識したものだった。バーレーンとのゲームは、この日と同じ埼玉スタジアムで開催される。キックオフ時間も19時20分で共通する。およそ1カ月後の決戦とまったく同じ条件を揃えることで、最終予選のシミュレーションの役割を果たしていたのである。

 U-23イランが対戦相手に選ばれたのも、中東3か国との最終予選を意識したものだ。日本はレバノン、UAE、バーレーンと出場権を争うが、イランの実力はその3か国をしのぐ。ここで内容のあるゲームをすることができれば、選手たちは自信をつかむことができるし、アテネへの視界が開けてくるのだ。

 1月中旬から宮崎とオーストラリアでキャンプを消化してきたU-23日本代表は、昨年までと大きく姿を変えていた。最終ラインの中央には、昨年10月にブラジルから日本へ帰化した田中マルクス闘莉王が入り、最前線にはU-20日本代表の一員として昨年のワールドユース(U-20世界選手権)で活躍した平山相太が入った。いずれもこのチームでは、テストマッチ初出場である。U-20代表からは、キャプテンを務めた今野泰幸や徳永悠平もスタメンに名を連ねた。

 日本代表に帯同している大久保嘉人、石川直宏、茂庭照幸の主力3人を欠き、阿部勇樹がケガで戦線離脱しているにもかかわらず、選手層は昨年よりむしろ厚くなっているのだ。3大会連続出場のアテネ五輪を目ざすこの世代の、充実ぶりがうかがえるだろう。

 先制ゴールをあげたのは、ポストワーカーとして期待される平山だった。19分、左サイドを突破した田中達也のセンタリングを、ファーサイドからヘディングで押し込んだのである。「田中さんがいいボールをあげてくれた。合わせただけです」とは平山であり、「相太がいいところにいてくれた」とは田中だ。2トップを組むパートナーを互いに称賛するのは、二人の呼吸が合っていた証拠だろう。

 それでも、試合の流れが日本に傾いたわけではなかった。お互いが特徴をぶつけ合いながら、相手の長所を消し合う。わずかなミスさえ見逃さない、ハイレベルな攻防が展開されていく。U-23日本は田中のドリブル突破や山瀬のスルーパスから決定機を作ったが、U-イランも同じくらいチャンスを迎えた。

 2000年のアジア大会決勝で、当時のU-21日本代表を破っているU-23イランは、強さと速さにしたたかを噛み合わせてU-23日本にプレッシャーをかけてきた。ルーズボールに対する出足の鋭さと激しさは、もはやフル代表と言ってもいいほどだった。

 そのなかでU-23日本は、しっかりとボールをキープしながらあるときは鋭く、あるときはじっくりと攻めた。キャプテンマークをつけたボランチ鈴木がゲームをコントロールし、闘莉王が最後尾から攻守に影響力を与えていく。平山と闘莉王が加入したことで、攻守における高さを手にしたことも、フィジカルに優れるU-23イランと互角以上の攻防を展開する要因となっていた。

 61分に直接FKから同点弾を喫し、残念ながら1-1のドローに終わったが、「見応えのある試合。内容が良かった」という田嶋幸三・日本サッカー協会技術委員長の言葉に偽りはないだろう。後半だけで4人の選手を入れ替えるなど、山本昌邦監督は勝利を追求しながら新戦力のチェックも消化した。テストマッチとしての目的は、十分に果たされたのである。

 「今年初めてのゲームだったので、チームとしてやるべきことが確認できた」と山瀬功治は言う。チームとして、個人として、突き詰めていくべきものを見つけられたところに、この試合の意義があった。

 「この時期のコンディションとしては、良くやってくれたと思う。ゲーム感覚を取り戻す目的もあったので、予選に向けていい準備の試合となったし、イランのコンタクトの強さに選手たちも目が覚めたのではないか」

 試合後の山本監督も、納得の表情で記者会見場に現れている。11日にロシア代表と対戦したU-23日本は、21日の<キリンチャレンジカップ2004>でU-23韓国代表を大阪に迎え撃ち、決戦の地となるUAEへと旅立つ。

[文: 戸塚啓]

試合データ

■2月8日 埼玉スタジアム2002
U-23日本代表 [1ー1] U-23イラン代表

日本代表選手集合写真 説明イラスト  1) GK 林卓人
 2) DF 田中マルクス闘莉王
 3) DF 徳永悠平
 4) FW 平山相太
 5) DF 那須大亮
 6) MF 今野泰幸
 7) MF 森崎浩司
 8) FW 田中達也
 9) MF 山瀬功治
10) MF 田中隼磨
11) MF 鈴木啓太
  • 日本代表選手集合写真
  • 説明イラスト
  •  1) GK 林卓人
     2) DF 田中マルクス闘莉王
     3) DF 徳永悠平
     4) FW 平山相太
     5) DF 那須大亮
     6) MF 今野泰幸
     7) MF 森崎浩司
     8) FW 田中達也
     9) MF 山瀬功治
    10) MF 田中隼磨
    11) MF 鈴木啓太

写真提供/(c)Jリーグフォト

<U-23日本代表監督> 山本昌邦

<出場選手>

■2月8日/埼玉スタジアム2002
U-23日本代表 (1) 1 <平山>
U-23イラン代表 (0) 1 <モバリ>
日本    
GK
DF 徳永 田中マルクス 那須
MF 田中隼(菊地) 鈴木 今野 山瀬(前田) 森崎(根本)
FW 田中達(坂田) 平山
イラン    
GK オスゴウェイ
DF カシ エブラヒミ ノスラティ
MF ザルダロウ バダヴィ モバリ カベイ(アリザデ) マダンチ(マハディザデ)
FW カゼメヤン(ハギ) ボルハニ

*月日/場所
 国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)

<ポスター・パンフレット>

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