キリンチャレンジカップ2004
2月7日 日本代表×マレーシア代表
ワールドカップ予選への第一歩として、申し分のないゲームだっただろう。2月7日にカシマサッカースタジアムで開催された<キリンチャレンジカップ2004>で、日本代表はマレーシア代表を4-0で退けたのである。1試合4ゴールは、ジーコ監督就任後の最多得点だ。
日本代表は1月26日から宮崎でフィジカル強化に主眼を置いた合宿を行い、2月3日からは鹿島に場所を移して戦術的なトレーニングを積み重ねてきた。しかも、ほぼ毎日が午前・午後の二部練習である。「宮崎から休まずトレーニングをしてきた疲れが溜まっている。体力的に厳しい状況にある」と、ジーコ監督もコンディションが必ずしもベストではないことを認めていた。
それでも、選手たちにとっては、2月18日のオマーン戦へのアピールの機会である。宮崎からの合宿には24人の選手が招集されているが、予選のベンチ入りメンバーは18人まで絞り込まれる。しかも、マレーシア戦にはキャプテンの中田英寿ら欧州組の7選手が参加していない。たとえコンディションがベストでないとしても、FIFAランキング114位と格下のマレーシア相手にふがいないゲームができるはずはなかった。
選手たちのモチベーションの高さは、キックオフ直後からフィールドでの動きに反映される。開始2分、国際Aマッチ初スタメンとなったボランチ山田卓也が、思い切りの良い右足ミドルを放つ。3分には、遠藤保仁のラストパスを受けた小笠原満男が中央から割って入り、ゴール右に逸れる際どいシュートで相手守備陣を慌てさせた。
カシマスタジアムに最初の歓喜をもたらしたのは、その小笠原だった。10分、遠藤のショートパスをきれいなトラップで足元に収めると、そのまま右足でゴールを狙う。相手GKの逆をついたシュートが、鮮やかにゴールネットを揺らした。「普通のGKなら入らなかった」と小笠原は国際Aマッチ初ゴールに苦笑いしたが、「あのシュートでチームが落ち着いた」とジーコ監督が振り返ったように、緊張感のとれた日本はここから攻撃のエンジンをあげていく。
開始10分過ぎにして、GK土肥洋一がほとんどボールに触らないほどのワンサイドゲームとなる。本山雅志、久保竜彦らのFWが鋭い突破とフィニッシュで相手ゴールに攻め込み、藤田俊也と小笠原が臨機応変にポジションを変えていく。遠藤と山田卓のダブルボランチも、タイミングよく攻撃に絡んでいった。
追加点が生まれたのは37分だった。小笠原の右CKを、宮本恒靖がダイビングヘッドで突き刺したのだ。27歳の誕生日を自ら祝う代表初ゴールには、「早く2点目がほしい時間帯だったので、決められて良かった」とキャプテンも笑顔を見せていた。
前半終了間際の45分、今度は右サイドバックの山田暢久が代表初ゴールをゲットする。左サイドからオーバーラップした三都主アレサンドロのクロスが逆サイドに流れ、本山がマイナスに戻したボールをそのまま右足で蹴り込んだのだ。「まずチームが勝つことが先決だけど、いつもよりチャンスが多かったし、そのなかで点を取ることができて良かった」と、山田も満足そうな表情を浮かべた。
勝敗の行方は前半にして決定したが、日本代表はペースを落とさない。後半開始直後の46分、ゴール前のこぼれ球を遠藤がきれいな左足ボレーで叩き込む。マレーシアの戦意を喪失させるに十分なダメ押し弾だった。
オフ明けの選手たちに試合感覚を取り戻させるため、後半のジーコ監督は積極的に選手を交代させた。63分、最終ラインの4人を総入れ替えする。右サイドから加地亮、中澤祐二、茂庭照幸、三浦淳宏という4人は、昨年10月のチュニジア戦でもテストされた4バックである。
さらに75分、GK都築龍太、MF奥大介、石川直宏、FW黒部光昭の4人も登場する。GK楢崎正剛を除くすべてのフィールドプレーヤーを起用できたことは、「18日を見据えた準備ができた」とジーコ監督を喜ばせている。
試合後、後半途中からキャプテンマークを譲り受けた小笠原は、「トラップやパスなどの細かいミスが多かった」と振り返った。本山も「もっと得点できたと思う」と話している。オマーン撃破への手応えをつかむために、選手たちはこのマレーシア戦に結果だけでなく内容も求めていた。だからこその厳しいコメントだったのだろう。
いずれにせよ、日本代表がワールドカップ予選へ向けて確かな一歩を刻んだのは確か。
「国内組が成長し、ヨーロッパ組は質の高さがある。どの選手を試合に出していいのか悩むところだが、それこそは監督になったときに望んでいたシチュエーションだった。18日にはチームを最高の状態にする自信がある」
ジーコ監督のこんな言葉が、いまはとても頼もしく、説得力を持って響いてくる。
[文: 戸塚啓]
■2月7日 茨城県立カシマサッカースタジアム
日本代表 [4ー0] マレーシア代表
1) FW 久保竜彦 2) DF 三都主アレサンドロ 3) MF 遠藤保仁 4) GK 土肥洋一 5) DF 坪井慶介 6) MF 山田卓也 7) MF 小笠原満男 8) DF 山田暢久 9) FW 本山雅志 10) DF 宮本恒靖 11) MF 藤田俊哉 |
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1) FW 久保竜彦
2) DF 三都主アレサンドロ
3) MF 遠藤保仁
4) GK 土肥洋一
5) DF 坪井慶介
6) MF 山田卓也
7) MF 小笠原満男
8) DF 山田暢久
9) FW 本山雅志
10) DF 宮本恒靖
11) MF 藤田俊哉
<代表監督> ジーコ
<出場選手>
■2月7日/茨城県立カシマサッカースタジアム
日本代表 (3) 4 | < 小笠原><宮本><山田暢><遠藤> | |
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マレーシア代表 (0) 0 | ||
日本 | ||
GK | 土肥(都築) | |
DF | 山田(加地) 坪井(中澤) 宮本(茂庭) 三都主(三浦) | |
MF | 小笠原 藤田(石川) 山田(奥) 遠藤 | |
FW | 久保(黒部) 本山 | |
マレーシア | ||
GK | アズミン(ハムサニ) | |
DF | ユザイマン スブリ(ファイザル) チャン カイロニサム | |
MF | ヘルミ トゥンクハズマン(サンバガマラン) チャオ(リュー) ナンタクマル | |
FW | ハメルディン(サラバナン) ニザルディン |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
<ポスター・パンフレット>
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