試合詳細レポート

2003

キリンチャレンジカップ2003
9月10日 日本代表×セネガル代表

 ホームで0−1という結果だけを見れば、物足りない印象もあるかもしれない。しかし、新潟スタジアムでは01年6月以来の国際Aマッチとなった9月10日のセネガル戦は、世界のトップクラスとの正しい距離を図ることができた、非常に意義深いゲームだった。
 セネガルは昨年のFIFAワールドカップでベスト8に進出した強豪である。エースストライカーのディウフは来日しなかったが、彼を除けばベストと言ってもいい布陣を揃えてきた。そのうえで、試合の9日前に来日し、ジェフ市原とのテストマッチも消化していた。
 試合後の記者会見で、ギー・ステファン監督は「しっかりとした準備ができ、時差の影響もなく戦えた」と語っていたが、コンディションに関しては日本にホームのアドバンテージはなかったのである。この一戦に向けたトレーニングだけならば、月曜日に集合した日本代表のほうが短かったほどだ。

 セネガルの仕上がりの良さは、前半開始早々の5分でいきなりスコアに反映された。昨年のFIFAワールドカップでフランスを下すゴールを決めたパプ・プーバ・ディオプに、強烈なヘディングシュートを浴びてしまったのだ。マーカーの坪井は「先に身体を当てられて態勢を崩されてしまった」と悔しかったが、身体能力の高さを見せつけれた場面だった。
セネガルはディフェンスも整備されていた。フラットな4バックは巧みなラインコントロールで日本のFWやMFからスペースを奪い、中盤のプレッシャーもスピーディで連動していた。結果的に日本は、前半だけでオフサイドトラップに8度も引っ掛かり、最終ラインの背後をなかなか突けなかった。

 しかし、後半に入ると流れは一変する。中田英寿や中村俊輔から際どいスルーパスが前線へ供給されるようになり、ジワジワとセネガルを追い詰めていく。58分には中田英から右サイドに開いた大久保嘉人へパスがつながり、センタリングのこぼれ球を中田が拾い、ゴール前の柳沢敦へつなぐ。柳沢のシュートはゴールに至らなかったが、セネガルの守備陣を完全に揺さぶった場面だった。
 ジーコ監督の選手起用も的確だった。64分、大久保に代えて本山雅志を投入し、73分には遠藤保仁を下げて小野伸二を起用する。この二人の登場により、試合の流れはさらに日本へ傾いていく。
 74分、小野が右サイドの本山へ柔らかなラストパスを通す。DFと入れ替わるように抜け出した本山の右足シュートは、ゴール左へわずかに逸れていった。3月のウルグアイ戦以来、およそ半年ぶりの国際Aマッチ出場となった小野は、「リズムを変えなければいけないと思った」という言葉どおりに、長短のパスを使い分けて攻撃を活性化した。
 終盤は日本のワンサイドゲームとなった。82分、左サイドを突破した小野のパスを起点に、中田英が正面から左足でゴールを襲う。89分、山田暢久のスルーパスから稲本潤一がフリーで抜け出し、右足で決定的なシュートを浴びせる。稲本はロスタイムにも決定的なボレーを放った。圧倒的に攻め込みながらゴールを奪えなかったとはいえ、守備を固めたセネガルをここまで崩したのは評価されていいだろう。

 選手たちも手応えをつかんだようだった。
「決められるときに決めていれば、日本が勝てた試合だった。ただ、ゴールまでの形はできている。ナイジェリアより強い相手に対して、自分たちのサッカーができた。一年以上やってきて、いい形ができてきている。チームが良くなっていることを感じる」
 いくつかの課題をあげながらも、稲本はこう言ってチームを評価した。「結果が欲しかったので、勝てなかったのは残念。リズムを変えることと、もう少し決定力が欲しい」と反省点をあげた中田英も、「とりあえず、どんな相手でも自分たちのサッカーができるようになった」と、内容は評価していた。
 結果を悲観していないのは、ジーコ監督も同じだった。試合後の記者会見で、監督は強い信念を示している。
「結果がついてこなくても、何もないわけではない。いまはワールドカップで日本がいい成績を収めるための強化を、第一に考えるべきだ。コンフェデ杯でも結果は出なかったが、そのなかで感じ取ったものはある。それが、次の試合で『ああ、あのときはこうだった』という経験として生きてくる」
 目先の結果だけを追求するのであれば、格下相手に歓喜に浸ればいい。しかし、ジーコ監督と日本代表の目標は、FIFAワールドカップドイツ大会での上位進出にある。だからこそジーコ監督は、「強い相手と戦うことで、自分たちに何が足りないのかが見えてくる」という姿勢を、就任当初から貫いているのだ。
 年内最後となる<キリンチャレンジカップ2003>は、11月19日にカメルーンを迎えて大分スタジアムで行われる。10月に予定される欧州遠征を経て、チームはどのように変わっていくのか。間違いなく言えるのは、この日の敗戦が、<キリンチャレンジカップ>カメルーン戦で生かされるということである。

[文: 戸塚啓]

試合データ

■9月10日 新潟スタジアム ビッグスワン
日本代表 [0ー1] セネガル代表

日本代表選手集合写真 説明イラスト  1) DF 宮本恒靖
 2) DF 三都主アレサンドロ
 3) DF 坪井慶介
 4) MF 中村俊輔
 5) MF 遠藤保仁
 6) GK 曽ヶ端準
 7) DF 山田暢久
 8) FW 大久保嘉人
 9) MF 稲本潤一
10) FW 柳沢敦
11) MF 中田英寿
  • 日本代表選手集合写真
  • 説明イラスト
  •  1) DF 宮本恒靖
     2) DF 三都主アレサンドロ
     3) DF 坪井慶介
     4) MF 中村俊輔
     5) MF 遠藤保仁
     6) GK 曽ヶ端準
     7) DF 山田暢久
     8) FW 大久保嘉人
     9) MF 稲本潤一
    10) FW 柳沢敦
    11) MF 中田英寿

写真提供/(c)Jリーグフォト

<代表監督> ジーコ

<出場選手>

■9月10日/新潟スタジアム ビッグスワン
日本代表 (0) 0
セネガル代表 (1) 1 <PB・ディオプ>
日本    
GK 曽ヶ端
DF 山田 坪井 宮本 三都主
MF 遠藤(小野) 稲本 中田英 中村
FW 柳沢(黒部) 大久保(本山)
セネガル    
GK シルバ
DF PM・ディオプ ディアッタ(ベエ) ダフ ディアワラ
MF ディアオ ファイ(ヌジャイ)  PB・ディオプ
FW カマラ(ディアバング) ニアング(S・カマラ) D・カマラ(ヌドイ)

*月日/場所
 国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)

<ポスター・パンフレット>

  • 試合ポスター 前回のナイジェリア戦に引き続き、ビニール袋が大会の告知になったポスター。注目を集めました。
  • 試合パンフレット
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