キリンカップサッカー2002
4月29日 日本代表×スロバキア代表
5月2日 日本代表×ホンジュラス代表
従来の3カ国対抗戦ではなく、日本代表vsスロバキア代表(第1戦)、日本代表vsホンジュラス代表(第2戦)の2試合のみに変更された<キリンカップサッカー2002>。日本代表にとって本大会へ向けた貴重なステップともいうべきこの大会は、各試合の勝者にキリンカップを授与するという変則的な形式で行われることとなった。
第1戦:vsスロバキア代表
第1戦は、ヨーロッパの中堅スロバキアを国立霞ヶ丘競技場に迎え、4月29日(月・祝)に行われた。
久々のデーゲームは、55,144人もの観客を集め、日本代表は、前日の会見でトルシエ監督が「みなさんを驚かす」と予告したとおり、右アウトサイドに本来FWの柳沢、左アウトサイドに三都主、トップ下に中村と森島を据える“超攻撃的”な布陣で臨んだ。
終始優勢に試合を進めた日本代表は、前半38分に柳沢とのワンツーから中村が前線へスルーパスを通すと、裏へ抜け出した西澤がこれを受け、中央へ折り返す。相手DFと森島がもつれ合い、ゴール前に転がったボールを、最後は西澤が押し込んだ。中村の美しいパスに始まり、森島と西澤の粘りが生んだこの1点が決勝点となり、1-0で快勝。日本は追加点こそ奪えなかったが、危なげない試合運びで勝利を収めた。
実験的ともいえる“柳沢の右アウトサイド起用”や、“中村と森島のトップ下での併用”など、スロバキアとの実力差を試合前から読みきったトルシエ監督の采配が光り、多彩な攻めを見せた日本代表の新たな一面が垣間見えた一戦となった。
第2戦:vsホンジュラス代表
会場を神戸に移し、5月2日に行われた第2戦の相手は、昨年の南米選手権でブラジルを2-0で破った実力を持つホンジュラス。試合は前半からエキサイティングな展開となった。
15分、ホンジュラスはトゥルシオスの左CKからフリーになったピネダがヘディングで先制。0-1とされた日本は続く26分、FKのチャンスに一度波戸に預けた中村が、得意の左足でゴールを狙う。ボールは代表戦初出場のGKエスコベルの手をすり抜け、同点。しかしその1分後、カウンターを受けた日本は、フリーにしたパボンにヘッドで押し込まれ、1-2とされる。
再び1点を追う展開となった41分、中村の右CKが美しい弧を描いて直接ゴールネットに突き刺さる。中村の芸術的なゴールで日本は2-2の同点に追いつくが、前半ロスタイム、ホンジュラスに三度目のリードを許すこととなる。前線からのプレスをかいくぐるホンジュラスに対し、前がかりになった稲本・福西の両ボランチと、フラット3とのバランスが不安定だった日本は、素早く狡猾なカウンターにあっけなくゴールを奪われ、2-3で前半が終了。ここ数試合メンバーを変更せず、安定感を見せていた日本のフラット3だったが、ミスが重なり前半だけで3失点を喫した。
後半立ち上がりから三都主、市川を両アウトサイドに投入した日本は、森島に代わり中村がトップ下に。ホンジュラスが自陣に引き気味になったこともあり、日本はシステムの安定を取り戻した。その76分、西澤がペナルティーエリアで倒され得たPKを、三都主が冷静に蹴り込み3-3。三都主の代表初ゴールで同点に追いつく。
そのまま勢いにのり、逆転を狙う日本だったが、その後のチャンスを決めきれず、スコアは3-3のまま試合終了。90分を戦い、両者引き分けに終わった。
大量失点と、セットプレーからの得点のみという、大味なドロー試合。三度先制され、三度追いつくものの、最後まで勝ち越せないという展開だったが、「必ず戻してやる、という心意気が今日の大きな収穫になった」とトルシエ監督が試合後語ったとおり、決して引かない選手のメンタリティーが、会場の雰囲気を熱く盛り上げた。
大会を通して
日本代表は2戦を通じ1勝1分け。決定力不足や守備への不安などが浮き彫りになる一方で、新しいオプションを実践し結果を残した第1戦、先制された展開での試合運びを経験した第2戦と、テストとしての収穫は十分にあったといえる。そして「努力していれば、いつかこういう時が来ると思ってやってきた」と語った中村俊輔の活躍は、見る者に大きな歓喜と今後への期待をもたらした。
この大会で二つのキリンカップを勝ち取った日本代表。様々な収穫と課題、メンバー争いとコンビネーションの追求、といった痛みを伴う4年にも及んだチーム作りも、いよいよ大詰めを迎える。中田英、小野といった“海外組”を加え、日本代表はどういったチームになるのか。トルシエ監督は、本大会前の最後の試合となる<キリンチャレンジカップ2002>ファイナルチャレンジ・対スウェーデン戦で、チームを完成させることになる。
■4月29日 東京・国立霞ヶ丘競技場
日本代表 [1ー0] スロバキア代表
■5月2日 兵庫・神戸ウイングスタジアム
日本代表 [3ー3] ホンジュラス代表
1) FW 柳沢敦 2) DF 中田浩二 3) DF 松田直樹 4) FW 西澤明訓 5) MF 戸田和幸 6) GK 曽ケ端準 7) MF 三都主アレサンドロ 8) MF 中村俊輔 9) MF 森島寛晃 10) MF 稲本潤一 11) DF 宮本恒靖 |
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1) FW 柳沢敦
2) DF 中田浩二
3) DF 松田直樹
4) FW 西澤明訓
5) MF 戸田和幸
6) GK 曽ケ端準
7) MF 三都主アレサンドロ
8) MF 中村俊輔
9) MF 森島寛晃
10) MF 稲本潤一
11) DF 宮本恒靖
<代表監督> フィリップ・トルシエ
<出場選手>
■4月29日/東京・国立霞ヶ丘競技場
日本代表 (1) 1 | <西澤> | |
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スロバキア代表 (0) 0 | ||
日本 | ||
GK | 曽ヶ端 | |
DF | 宮本 松田 中田 | |
MF | 三都主(鈴木) 戸田(明神) 森島(小笠原) 稲本(福西) 中村 | |
FW | 西澤(久保) 柳沢(波戸) | |
スロバキア | ||
GK | ブチェク | |
DF | チショブスキー シュピラル バブリク コザク(ハネク) | |
MF | キセル(デブナル) ズリク(ファブシュ) ミンタル(チネゲ) | |
FW | ビテク(アンチッチ) ベンチク ダルダ |
■5月2日/兵庫・神戸ウイングスタジアム
日本代表 (2) 3 | <中村2、三都主> | |
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ホンジュラス代表 (3) 3 | <ピネダ、パボン2> | |
日本 | ||
GK | 楢崎 | |
DF | 宮本 松田 中田 波戸(市川) | |
MF | 森島(三都主) 稲本(明神) 福西 中村(小笠原) | |
FW | 鈴木(久保) 西澤 | |
ホンジュラス | ||
GK | エスコベル(モラレス) | |
DF | カバジェロ ロサレス(イサギレ) カルカモ アルバレス モラレス ボニージャ(マルティネス)(マラディアガ) | |
MF | ピネダ スアソ(メンドサ) トゥルシオス(ベルナルデス) | |
FW | パボン |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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