キリンチャレンジカップ2002
10月16日 日本代表×ジャマイカ代表
あの興奮から4ヶ月。2002年10月16日、<キリンチャレンジカップ2002 −Go
for 2006!−>対ジャマイカ戦が行われ、ジーコ新監督率いる新生・サッカー日本代表が、待ちに待ったその姿を現した。
新しく生まれ変わった日本代表の初陣として、国立霞ヶ丘競技場にジャマイカ代表をむかえての一戦。ジャマイカ代表は、今年対戦したコスタリカ、ホンジュラスと同じ北中米カリブの強豪で、FIFAランクは57位(2002年10月16日現在)。一方、ジーコを監督に迎えた日本は、前回大会ベスト16の誇りを胸に、欧州で活躍する中田英、小野、稲本、中村を擁し、これを迎え撃つ。互いに2006年をにらんだ大事な一戦となった。
現役時代、ブラジル代表の「黄金の4人」の一人として世界を魅了したジーコは、“組織”より“個”に重きを置いたチーム作りを掲げ、今まで同時にピッチに立つことのなかった4人が並び立つ「夢の中盤」が実現した。4-4-2の布陣は、GKに楢崎(名古屋)。DFに左から服部(磐田)、松田(横浜FM)、秋田(鹿島)、名良橋(鹿島)。MFはボランチに小野(フェイエノールト)、稲本(フラム)、中盤の攻撃的右サイドに中田英(パルマ)、左に中村(レッジーナ)の「黄金の中盤」。FWは高原(磐田)と鈴木(ゲンク)。右サイドバックに入った名良橋は、98年フランス大会のジャマイカ戦以来の代表。ジーコに「私がやろうとしていることに必要不可欠な男」と言わしめた30歳が代表復帰を果たした。
この日本版「黄金の4人」を擁する新生ジーコジャパンを見ようと、国立には5万5000人もの観客がつめかけた。魅惑のチームが万人の注目を集める中、試合開始わずか7分でネットは揺れた。
ゲーム開始から積極的にプレスをかける日本は、中盤で相手ボールを奪い、中田英から高原とつなぎ、高原のドリブルから出されたパスを小野が左足でシュート。ダイレクトであるにも関わらず、コントロールされたボールはジャマイカGKロレンスの手を絶妙なスピードとコースでかすめ、左サイドネットへ。激しいプレッシングと、ボランチである小野のオーバーラップから生まれた序盤での鮮やかな先制点は、新生・サッカー日本代表のゴールラッシュを予感させ、スタンドは歓喜と期待で沸いた。
その後も日本は、プレスをかけ、高い位置でボールを奪うと、中盤の4人が積極的にポジションチェンジをしながらハイテンポな攻撃を繰り返す。
わずか2日の練習での実戦。“システム”ではなく“個”の能力を中心に据えたチーム作りは、華やかな攻撃を生んだが、それとは対照的な影響を守備面に及ぼした。カバーリング、マークの受渡し、プレッシング、ラインコントロールなどでおこる微妙なズレ。中でも前半、中村が守備に追われるシーンが目立ち、ディフェンスラインまでポジションを下げる場面もあった。
しかし、後半に入ると、中田英と中村がポジションチェンジすることでチームは修正を試みる。精力的な動きと優れた状況判断でダイレクトパスを繰り出す中田英に、ジャマイカはマンマークをつけるが、日本の攻撃はさらにペースを上げ、加速していく。
後半開始早々、中田英のクロスからこぼれたボールを稲本がつなぎ、服部がミドルシュートを放つが、惜しくもバーを直撃。その後も立て続けに中村、中田英と果敢にシュートをねらっていくものの、GKに正面で抑えられ追加点が奪えない。
めまぐるしく変わる攻守の切り替えの中、稲本は所属するフラムでも魅せているような好パフォーマンスを披露。狙いすましたボール奪取、力強いドリブルからのラストパスで、その存在感を示した。
後半31分になると、先制点をアシストした高原が柳沢と交代。2列目からの飛び出しが頻繁な日本は、これをさらに引き出すFWのスペースメイクが期待された。
ジャマイカが徐々に鋭い反撃を見せ始めた後半35分、左サイドのDFスカーレットのクロスが、ペナルティーエリア内に進入したFWフラーへ。後半16分に投入されたフラーの放った一度目のヘディングは服部に当たったが、再び拾われ、右足で同点ゴール。試合は1-1の振り出しに戻った。
その直後、小野、稲本に代えて中田浩、福西を投入した日本。しかしチャンスは作るものの得点には至らない。
結局、両チームとも積極的に攻め合うが1-1のまま笛が鳴り、試合終了。新生ジーコジャパンの船出はドロースタートとなった。ジーコ監督は試合後「及第点を与えられる。2日間の練習しかなかったが、個性を出すことができた」と、この試合を評した。
ジーコの考える現時点でのベストメンバーを招集した日本代表は、2点目こそ奪うことはできなかったが、速いパスワークと自在なポジションチェンジで押し気味に試合を進めるなど、多彩かつ魅力的な攻撃をみせた。一方、守備に関しては、個々のポテンシャルの高さは証明したものの、組織的な未成熟さを露呈。守備面での修正の必要性が浮き彫りとなった。
11月20日に開催される<キリンチャレンジカップ2002 −Go for 2006!−>対アルゼンチン戦。2006年への第一歩を踏み出した新生・サッカー日本代表が、FIFAランク5位(2002年10月16日現在)のアルゼンチンを相手に、どのような戦いをみせるのか。次の試合で日本代表が出す答えに期待したい。
■10月16日 東京・国立霞ヶ丘競技場
日本代表 [1ー1] ジャマイカ代表
1) GK 楢崎正剛 2) MF 中村俊輔 3) FW 鈴木隆行 4) DF 松田直樹 5) DF 服部年宏 6) MF 中田英寿 7) MF 小野伸二 8) MF 稲本潤一 9) FW 高原直泰 10) DF 秋田豊 11) DF 名良橋晃 |
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1) GK 楢崎正剛
2) MF 中村俊輔
3) FW 鈴木隆行
4) DF 松田直樹
5) DF 服部年宏
6) MF 中田英寿
7) MF 小野伸二
8) MF 稲本潤一
9) FW 高原直泰
10) DF 秋田豊
11) DF 名良橋晃
<代表監督> ジーコ
<出場選手>
■10月16日/東京・国立霞ヶ丘競技場
日本代表 (1) 1 | <小野> | |
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ジャマイカ代表 (0) 1 | <フラー> | |
日本 | ||
GK | 楢崎 | |
DF | 秋田 名良橋 服部 松田 | |
MF | 中田英 中村 稲本(中田浩) 小野(福西) | |
FW | 鈴木 高原(柳沢) | |
ジャマイカ | ||
GK | ロレンス(リケッツ) | |
DF | グッディソン マクドナルド デイビス デイリー(フラー) スカーレット ゼイディ | |
MF | ハイド(ジョンソン) ホール(テイラー) ウィリアムズ(ディクソン) | |
FW | ヘイルズ |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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