2002年3月21日春分の日、ウクライナ代表を大阪・長居スタジアムに迎えてキリンチャレンジカップ2002が行われた。

　仮想ロシアとして迎えたウクライナはシェフチェンコ、レブロフを欠くものの、今秋より行われる2004年の欧州選手権予選突破を目標に、ブリャク監督が準備中の好チーム。対する日本は、多くの故障者と招集を見合わせた“海外組”を除いた、トルシエ監督のいう“新しい戦力”を多く含んだメンバーで挑むこととなった。

　日本代表にとって今年最初の試合となったこの一戦、期待の三都主が国際Aマッチ初出場で先発に名を連ねたほか、トルシエ監督下では同じく初出場の市川や、福西といった“新しい戦力”が先発出場を果たし、大いに注目を集める。

　序盤、日本は前線からの積極的な守備と最終ラインの押し上げによって優勢に試合を進めるが、ウクライナの一本のパスで高く保ったラインの裏を突かれる危うい場面も。しかし、相手のミスに加え、昨年のフランス戦以来のAマッチ出場となる楢崎の安定感を取り戻したプレーや、昨年のイタリア戦から森岡に代わりフラット3のセンターを務める宮本をはじめとする守備陣が、何度かあった決定的なピンチをしのぎ、終始優勢に試合を運んだ。

　三都主、市川の左右のアウトサイドが積極的に攻め上がる日本は、前半24分、市川の突破によりコーナーキックを得る。三都主がショートコーナーから中央へクロスを送ると、複数の選手が絡み、最後は柳沢のバックパスに、駆け上がった戸田がインサイドキックでシュート。コントロールの効いたボールがネットに刺さり、自身代表初ゴールとなる先制点を奪った。

　その後も、三都主はドリブル、FKなどにとどまらず、カウンターを受けた場面での素早い戻りなどで存在感をアピール。市川ともども“新しい戦力”の積極的なプレーが光るなか、同じ清水の戸田の精力的な働きが中盤を活性化し、日本が1点のリードを保ったまま後半を迎える。

　後半に入ると、三都主に替えて、これもフランス戦以来一年ぶりの出場となる中村を投入。
　中村は大きなサイドチェンジなどで視野の広さや、正確なパスをアピール。逆サイドの市川とのピッチを目一杯に使ったパス交換のシーンでは、この日観客席を埋めた4万5千人のサポーターから大きな歓声が挙がった。

　後半15分に森島に替わった小笠原も初出場ながら、シンプルかつ正確なプレーでビッグチャンスを演出した。
　日本は決定的な場面で決めきれず、追加点こそ奪えなかったものの、後半もゲームを支配し、ウクライナの時折見せる鋭いカウンターをしのぎきって1-0のまま試合終了。“新しい戦力”がそれぞれに持ち味を発揮した働きにより、この日誕生日を迎えたトルシエ監督に勝利をプレゼントする格好となった。

　調整というよりも新戦力のテストという意味合いの強い内容になったが、本大会に向けた今年最初のゲームを白星で飾った意味は大きいと言えよう。

[文: 戸塚啓]