キリンチャレンジカップ2007
8月22日 日本代表×カメルーン代表
4位に終わったアジアカップからのリスタートは、大分県の九州石油ドームが舞台だった。8月22日、カメルーン代表を迎えて『キリンチャレンジカップ〜ALL FOR 2010!〜』が開催されたのである。
海外クラブに所属する選手は招集されず、Jリーグでプレーする選手でチームが構成されたが、見どころは多かった。センターバックの闘莉王が3月24日の『キリンチャレンジカップ2007〜ALL FOR 2010!〜』、対ペルー戦以来の復帰を果たし、前線には所属クラブで好調の大久保嘉人、田中達也、前田遼一が並んだ。大久保はイビチャ・オシム監督就任後初出場で、田中(達)は昨年9月以来の出場となる。最前線の中央で攻撃の起点となる前田は、この日が国際Aマッチデビュー戦だった。
しかもアジアカップでベースだった4-4-2ではなく、4-3-3ともいうべきフォーメーションである。アフリカの強豪カメルーンを相手に、新たなメンバーを加えた日本がどのようなゲームをするのか。注目の一戦が18時31分にキックオフされた。
最初に相手ゴールに迫ったのは日本だった。3分、左サイドのFKから阿部がヘディングシュートを放つ。惜しくもワクをとらえることはできなかったが、こうした場面ではフィニッシュで終わることが大切であり、その後のセットプレーへの布石にもなる。日本は12分にもFKをつかみ、キッカーの遠藤保仁と闘莉王が打ち合わせをする場面がみられた。
こうした作業が実を結んだのが25分だった。敵陣左サイドでFKを獲得した日本は、遠藤がニアサイドへライナー性のクロスを供給する。これを走り込んだ闘莉王がバックヘッドで合わせ、鮮やかにゴールネットを揺すったのだ。闘莉王の国際Aマッチ2得点目で、日本はリードを奪うことに成功した。
強者のプライドを刺激されたカメルーンは、ここからプレーのレベルをあげていく。MFムビアやお馴染みのエトーが、巧みなステップで日本のゴールに迫ってきた。しかし、中澤と闘莉王を軸とした守備陣にスキはなく、カメルーンに決定的な場面を許さない。シュートもわすが3本に抑えた。
後半開始とともに、オシム監督は駒野友一(サンフレッチェ広島)に代えて今野泰幸(FC東京)を投入する。50分には大久保を下げて山瀬功治(横浜F・マリノス)が起用されるなど、この試合の目的のひとつである戦力の見極めが進められていく。前田と田中達も59分に退き、それ以降は高松大樹(大分トリニータ)、佐藤寿人(サンフレッチェ広島)、それに山瀬の3人で前線が構成された。
一方で、このまま引き下がるわけにいかないカメルーンは、エトーが前半よりも高いポジションをとり、ジョブと2トップを形成する。日本の守備のブロックはすぐに反応し、ボランチの阿部が最終ラインに下がり、中澤、闘莉王との3バックとなる。
試合後のオシム監督は、選手たちの自主的な判断を評価しながらも、3バックへの変更で中盤がひとり減ってしまったことを指摘した。前半よりも押し込まれた原因が、中盤での優位性を保てなかったことにあったからである。
それでも失点を許さなかったのは、チームの成長の表れと言っていいだろう。アジアカップを戦ったことで各選手の責任範囲が明確になっており、それは、同大会を欠場した闘莉王が加わっても変わらなかった。
後半だけで6本のシュートを浴びせてきたカメルーンの攻撃をしのいだ日本は、89分に勝利を決定づける2点目を奪う。中村憲剛(川崎フロンターレ)の右CKは相手DFにクリアされるが、ゴール正面のこぼれ球を山瀬が右足で豪快に蹴り込んだのである。これが国際Aマッチ出場2試合目の山瀬にとって、記念すべき代表初ゴールとなった。
「前半はそんなに悪くなかったと思います。サイドも突破できていたし。ただ、後半はちょっと。もう少しボールをキープできれば、よかったですけど」
試合後の遠藤のコメントは、おそらくほとんどの選手に共通するものだろう。アフリカの強豪から2-0の勝利をつかんだものの、満足している選手はひとりもいなかった。
オシム監督は「何ができて、何ができないのかがはっきりした試合だった」と語った。そして、指揮官はこうも話している。
「カメルーンのような強いチームと対戦する機会はなかなかない。ここで選手が、何かをつかんでくれればと思う。フィジカルの違う相手との戦い方、ボールをめぐっての競り合い、そういった経験を積んでもらえたと思う」
<世界のトップクラス>を体感することに、『キリンチャレンジカップ2007〜ALL FOR 2010!〜』の意義がある。それだけに、このカメルーン戦がチームにもたらしたものは大きい。九州石油ドームのピッチをあとにした選手たちは、これから進むべき道をはっきりと見定めることができたはずだ。
[文: 戸塚啓]
■8月22日 大分・九州石油ドーム
日本代表 [2ー0] カメルーン代表
1) MF 阿部勇樹 2) DF 田中マルクス闘莉王 3) FW 前田遼一 4) DF 中澤佑二 5) DF 加地亮 6) GK 川口能活 7) MF 遠藤保仁 8) DF 駒野友一 9) FW 田中達也 10) MF 大久保嘉人 11) MF 鈴木啓太 |
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1) MF 阿部勇樹
2) DF 田中マルクス闘莉王
3) FW 前田遼一
4) DF 中澤佑二
5) DF 加地亮
6) GK 川口能活
7) MF 遠藤保仁
8) DF 駒野友一
9) FW 田中達也
10) MF 大久保嘉人
11) MF 鈴木啓太
<代表監督> オシム
<出場選手>
■8月22日/大分・九州石油ドーム
日本代表 (1) 2 | <田中> <山瀬> | |
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カメルーン代表 (0) 0 | ||
日本 | ||
GK | 川口 | |
DF | 中澤 田中 加地 駒野(今野) | |
MF | 遠藤(中村) 鈴木(橋本) 大久保(山瀬) 阿部 | |
FW | 田中(佐藤) 前田(高松) | |
カメルーン | ||
GK | スレイマヌ | |
DF | バハナグ マトゥク エサマ アムグ(フォトゥシーヌ) | |
MF | マクン(ヌゲモ) エトゥンディ ムバミ(イドリス) | |
FW | フィルス ジョブ(アテバ) ムベラ(コメ) |
*月日/場所
国名(前半得点)総得点<得点者>
*メンバー(交代メンバー)
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