キリングループの歴史:ラベルに描かれた「聖獣麒麟」とは?

(公開日2025年3月24日)

麒麟といえば、「キリンビールのラベルの、あの麒麟!」
ありがたいことに、そのようなイメージをお持ちの方が多いかもしれません。実は、麒麟の伝説や逸話はさまざまで、その姿形は時代や地域によって違うのです。

キリンの聖獣麒麟

伝説の聖なる動物、麒麟

麒麟は紀元前から中国に伝わる伝説上の動物です。慶事の前に現れると言われ、おめでたいしるしとも考えられています。
伝説では、他を慈しみ、思いやりを持った動物で“仁獣(じんじゅう)”とも表現され、“生きている虫を踏まず、草を折らない”、“百獣の長”である、また“天下泰平のしるし”、とも言われています。日本国内の神社・仏閣の彫刻や装飾にも多く用いられ、日光東照宮や正倉院の宝物、また京都の祇園祭の山鉾でもその姿を見ることができます。

容姿や特徴についてはさまざまで、麒麟の発祥地である中国でも、時代や地域によって異なります。歴史的文献に多く残されている記述では、「身体は鹿、尾は牛、1本の角がある」というような表現が多く見られますが、数あるものの中には獅子や馬のような体つきだったり、翼を持っていたり、角が2本ある麒麟の彫刻や絵画なども現存しています。

動物園のキリンとは、違うの?

動物園にいるキリンと、麒麟は違います。英語名がGiraffe(ジラフ)のキリンが日本の動物園に初めてやってきたのは、奇しくも麒麟麦酒株式会社創立の年と同じ1907年です。この時に和名をキリンと定められ、上野動物園で人気者となり、日本ではキリンという動物として知られるようになりました。

一説には、この時の上野動物園の監督・石川千代松が、購入する予算を獲得するため、ジラフと呼ばれる動物を伝説上の麒麟と騙って購入した、という逸話もあります。

ラベルに描かれた「聖獣麒麟」

「聖獣麒麟」は、キリングループのシンボルとしてさまざまな伝説をもとにデザインされた、みなさまのところへ幸せを運んでくる生きものです。キリンビールの前身会社ジャパン・ブルワリー・カンパニーは、1888年に発売した「キリンビール」という商品のラベルにはじめてこの聖獣麒麟を採用しました。

1888年 発売時の「キリンビール」ラベル

当時、西洋から輸入されてくるビールにはオオカミや猫などの動物を描いたラベルが多かったことから、三菱社(現・三菱グループ)の本社支配人であった荘田平五郎(※)が「東洋には麒麟という霊獣がいるのだから、それを商標にしよう」と提案したと言われています。

  • 三菱グループの創始者・岩崎彌太郎の弟で二代目当主の彌之助がジャパン・ブルワリー・カンパニーの株主を務めるなど、三菱グループとジャパン・ブルワリー・カンパニーの関係は深く、荘田自身も株主の一人となっていることから、荘田の提案が採用されることになったと考えられています。

発売時のラベルには聖獣麒麟が小さく描かれていましたが、翌1889年、ジャパン・ブルワリー・カンパニーの重役であったトーマス・ブレーク・グラバーの提案により、聖獣麒麟が大きく描かれた、現在もおなじみのデザインへ変更されました。

1889年 現在のラベルの原型となったラベル

1928年に発売された「キリンレモン」のラベルにも、聖獣麒麟が描かれました。

1928年 発売時の「キリンレモン」のラベル

聖獣麒麟のデザイナーは?

ラベルに描かれた聖獣麒麟のデザイナーやモデルについて、問い合わせをいただくことも多いのですが、実はわかっていません。漆工芸家の六角紫水がデザイナーであるという説が有力ですが、残念ながら証拠となる資料は残されていないのです。

1907年 麒麟麦酒株式会社創立時のラベル

1949年 青一色刷りのラベル

1957年 多色刷りになったラベル

現在のラベル

ご覧のとおり、1888年にラベルに採用して以来、聖獣麒麟はほとんどデザインを変えていません。
伝説では、よいことがある前触れとして姿を現すと言われている麒麟。キリンは130年以上に渡り、聖獣麒麟とともにみなさまの幸せを願ってきました。
そしてこれからも、幸せであることのよろこびをつなげていきたいと考えています。

このページを共有する

お酒に関する情報の20歳未満の方への転送および共有はご遠慮ください。