15年以上腸活に取り組んできた私が、心からほしいと思った飲み物を商品化するまで
キリン公式noteより(公開日2023年4月24日)
朝おなかがスッキリしないと、その日一日がなんだかどんよりとした気分で覆われる。逆に朝からおなかの調子がいいと、晴れ晴れとした気持ちで一日を過ごせる。
そんなことはないだろうか。
私にはある。
たくさんある。
これは、高校生で「腸活」に目覚めた私が、大人になってから「腸内環境を改善する飲料」を開発するまでの物語である。
(※)腸活とは、健康維持するために腸内環境を整えるさまざまな生活習慣を指します。
私は高校生まで名古屋で育った。
名古屋ってどんなところ?とときどき聞かれるが、とにかく食べ物はなんでもおいしいのが自慢だ。味噌カツ、ひつまぶし、手羽先、台湾ラーメン、きしめん…あげきれないほどのグルメがたくさんある。食べるのが大好きなのも、そんなグルメシティ名古屋で育った影響が大きいのかもしれない。
部活に塾、習い事のピアノなど、なかなか忙しい学生生活を送っていたが、幸いにも私は元気に毎日を過ごしていた。
そんな私が、「腸活」を意識するようになったのは高校2年生の頃である。
朝おなかがスッキリしないということが増えたのだ。
ただ、朝おなかがスッキリすると、晴れ晴れとした気持ちで一日を過ごせることに気づいた私は、腸活について情報収集するようになった。
たかが腸内環境だが、私にとっては一日を気分良く過ごせる秘訣だ。
私の「腸活」への目覚めだった。
多感な思春期を、私は腸活と共に送った。
腸活についての情報を集め、腸によさそうなものはなんでも取り入れた。「これだ!」と思ったものを継続することでおなかの調子に振り回されることもなく、その甲斐あって(?)、希望の大学にも無事合格した。
いよいよ夢に見た“上京”である。
(腸活の話から一旦離れるが、少しの間お付き合いいただきたい)
*
東京には高校生の頃からずっと憧れがあった。なぜなら当時放送していたドラマ『オレンジデイズ』にどハマりしていたからだ。私も東京でこんな大学生活を送るんだ、と気持ちを高ぶらせた。
「都市の中心でしか学べないことがある」というパンフレットのキャッチフレーズに惹かれて都内の大学に進学を決めたが、実際のキャンパスは23区外だった。
「全然“中心”じゃない!」と突っ込んだが、学生生活は本当に楽しかった。
経営学部に入り、3年生からはゼミで専攻したマーケティングのおもしろさにのめりこんだ。特に市場環境や顧客ニーズの移り変わりが早く、マーケティング戦略が重要な役割を担う「FMCG(※)」と呼ばれる消費財領域の世界に興味をもった。
キリンに興味を抱いたのは、当時一世を風靡していた『キリン フリー』がきっかけだ。ビールメーカーがアルコール0.00%のビール風味飲料を発売したことは大きな話題を呼び、マーケティングの授業でもよく取り上げられていた。
その後いよいよ始まった就職活動で、日用品領域でのマーケティングに携わることを軸に挑んでいた私にとって、キリンはぴたりとマッチする企業だった。
幸運なことに社風や自分の興味関心との相性も良かったようで、2010年3月、めでたく内定をいただいた。
そして2011年の春、私はキリンビール株式会社の新入社員として社会人デビューを果たしたのである。
(ちゃんと腸活の話に戻るので、あとちょっとだけお付き合いいただきたい)
(※)Fast Moving Consumer Goodsの略で、飲料・食品・化粧品などの比較的短期間で消費される製品のこと
私が入社したとき、新人の多くは営業に配属された。いずれはマーケティングをやりたいと思っていたけれど、まずは現場でお客さまと接し、お客さまのことを知らなければいけない。
私の配属先は、大阪の支店だった。
毎朝営業車に乗って、担当エリアへ向かう。まずはお付き合いのある酒販店さんへ訪問し、昼はランチ営業をしている料飲店さんにお邪魔して、お昼ごはんを食べがてら新商品の案内をする。そして午後は、夜の仕込みを始めている多くの料飲店さんを引き続き回り、ビールをはじめとする各種お酒の取り扱いを商談する。ときには工事中の新しいお店のドアをノックして「取り扱うビールは決まっていますか?」と飛び込み営業もする。
一日の流れは、ざっとこんな感じだ。
慣れない土地で、その地でずっと商売をしている方たちの世界に飛び込んでいく。それは正直なかなか大変な経験で、毎朝高速道路を走って営業先に向かうときは、気持ちを上げる音楽をかけて自分を鼓舞していた。
そんなある日のことだった。
ここでようやく、腸活の話である。
朝に社内でチームミーティングがあり、私は当時常飲していた小型の乳酸菌飲料とパソコンを手に会議室へ向かった。
高校生の頃に腸活に目覚めてから数年、私は「腸によさそうなもの」をいろいろと試していた。たとえば乳酸菌がたくさん含まれた高価な青汁を取り寄せてみたり、ヨーグルトを食べてみたり。
その中でも、新入社員時代に日課としていたのが、乳酸菌飲料を飲むことだったのである。
チームミーティングが始まると同時に、私は会社で販売されていた愛飲の乳酸菌飲料にストローを刺し、他のメンバーがペットボトルのお茶や水を飲むのと同じ“飲料”という認識でちゅーちゅーと飲み始めた。
その姿を先輩は怪訝な顔で眺め、こう言った。
「TPOを考えようね」
えっ、と思った。一瞬何を言われているのかわからなかったが、どうやら乳酸菌飲料を会議中に飲むことに加え、ストローを刺して飲んでいるようなビジュアルがよくなかったらしい。
そのとき「飲み物にもTPOがある」ことを学んだのだった。
この経験が仕事に存分に生かされるのは、もう少し先の話である。
マーケティング部に異動するチャンスが巡ってきたのは、「乳酸菌飲料ちゅーちゅー事件」から約6年が経った頃のことだった。
キリンでは社内公募制度があり、条件を満たせば応募のチャンスがある。公募案内を見て「今だ」と思い書類を出した。
社内公募のプロセスは、小論文を書いたり面接をしたりといったステップを踏んで、合格すればその部署に異動となる。
面接では、ずっとマーケティングに携わりたいと思っていたことや、お客さまが20歳以上になって初めてキリンと接点を持てるアルコール飲料だけではなく、小さいころから接点のある清涼飲料商品を担当して、お客さまの人生とキリンブランドの関わりを強めたいといった考えなど、熱く語った。
後日届いた結果は、合格。
配属は紅茶カテゴリーNo.1ブランドの『午後の紅茶』だった。
初めて飛び込むマーケティングの現場は、意外なことの連続だった。まず、覚えることがとにかく多い。社内システムもこれまで使っていたものとは全然違う。社内調整も、これまでの仕事と比べて格段に多い。新入社員のように勉強しながら、商品開発のプロセスやマーケティングに関するさまざまな知識を学んでいった。
自分が初めて担当した商品が棚に並んでいるのを見たときももちろん感慨深かったが、コロナ禍で発売した担当商品『午後の紅茶 エスプレッソティー微糖』について、コロナ病棟に勤務している看護師さんらしき方が「病棟は毎日が戦場だけど、つかの間の休憩に飲む『午後の紅茶 エスプレッソティー微糖』がおいしくて救われる。」とツイートしているのを見たときは本気で泣いた。コロナ禍でいろいろ大変なプロジェクトではあったが、その苦労がすべて報われた気がした。「こちらこそありがとうございます」と思った。
そして、マーケティング部に配属されて約3年経った頃。
ついに、である。
「腸内環境の改善」をテーマに新商品を開発する機会が訪れたのだ。
あるタイミングで実施した消費者の健康関心調査で、「免疫」と共に上位にあがったのが「腸内環境改善」だった。免疫に関する商品はすでに社内のラインナップにあるため、「腸内環境」のニーズに応える商品を開発するという方向性に定まった。
腸内環境に関する商品を作るためにマーケティング部を志望したわけではないが、この瞬間、私がたどってきた腸活の歴史がまざまざと思い出された。
「腸にいい食べ物」を検索しまくってきた過去、苦い青汁の味、乳酸菌飲料ちゅーちゅー事件…。
私は腸活歴15年以上の経験を総動員して、「日常生活に取り入れやすく、続けやすい腸内環境を改善する飲料」を世に生み出すべく、奮起したのである。
腸活には、超えなければいけないハードルがいくつもある。
俗に言う、「腸活の壁」だ。(※私が考えました)
一時期は腸活にいいとされているドリンクを毎日飲んでいたこともあるが、成分重視のものだったこともあり、どうにも味に慣れない。結局義務感で飲み続けるのが苦痛になってやめてしまった。
一日や二日で効果が出るものならいいが、腸活はなにより「継続」が大事である。「ローマは一日にしてならず」ならぬ、「良好な腸内環境は一日にしてならず」。
そのことを、私は経験からよーく知っていた。
だからまずは、自ら飲み(食べ)たくなる「おいしいもの」でなければ意味がない。
腸内環境を改善するサプリや腸マッサージを試した時期がある。が、どちらもあくまで日常生活の行動に「+α」するもので、それまでの習慣になかったものを取り入れるのは難しい。忙しいと飲み忘れや、やり忘れてしまうこともよくあり、なかなか継続につながらないのだ。
チームミーティングで乳酸菌飲料を飲んで注意を受けた話をしたが、物事にはTPOというものがあり、腸活はどこでもできるものではない。
たとえば電車に乗りながらヨーグルトを食べたり飲んだりはできないし、外で歩きながら納豆を食べることも難しいだろう。また、いかにも「腸活してます!」といった雰囲気のものを人前で口にするのは恥ずかしい、という人もいると思う。このようにシーンが限られてしまうと、忙しい毎日を送る現代人にとって、腸活を継続することはなかなか大変なのである。
自分に合った腸活方法を見つけても、手軽に継続できなければ意味がない。たとえば出張や旅行先に持っていくのは大変で。通販でしか販売していない商品の場合、ストックを切らしてしまうと次の購入までにブランクができてしまい、これまた続けるためのハードルになる。継続のために大事なものの一つが「手に入れやすさ」なのである。
*
開発の過程については、開発パートナーのファンケルさんとの対談記事で詳しく語られているので割愛するが、発売までの道のりは想像以上に険しかった。
▼キリン×ファンケルの対談記事はこちら
当初予定していたフレーバーの配合が現実的に難しく、「これは発売延期になるのでは…?」とチーム内に不安が立ち込めたこともある。(これに関しては、開発チームが別処方で同じ味を再度作り上げてくれたことでことなきを得た。)
味のパターンも、いくつもサンプルを作って調査をした。甘酸っぱいりんごの香りがいいのか、芳潤なりんごの香りがいいのか。何よりも大事な「おいしさ」を守りつつ、「毎日飲んでも飽きない味(というかむしろ毎日飲みたくなる味)」を目指して試行錯誤が続いた。
そして、2022年5月。私の腸活人生の集大成とも言える『午後の紅茶 アップルティープラス』が誕生した。もちろん私だけの力ではなくチームや、関わった多くの部署の方の力があって完成した商品だが、できあがった商品を見たときは、我が子の誕生に立ち会えたかのような感動を覚えた。
いざ発売してみると評判は上々で、
「機能はもちろん、単純においしいから毎日飲んでいる」
「ペットボトルの紅茶なので、デイリーの飲料として飲める」
「移動中や駅のホームなどどこでも飲めるからいい」
「コンビニや自販機でも手に入るので、外出先でも気軽に腸活ができる」
などのうれしい感想をたくさんいただいた。
いただいた感想はどれも私自身が腸活を続ける中で「こうなればいいのに」と感じていたことばかりだったので、これまでの経験がすべて伏線回収されたようなカタルシスがあった。
会議室で注意を受けたあの頃の自分も笑い話となった。
この春、『午後の紅茶 アップルティープラス』はパッケージをリニューアルする。
おいしそうなりんごのシズルと「腸内環境改善」という機能性がより伝わりやすく、思わず手に取りたくなるような見た目に仕上がったと思う。これならお茶の代わりにコンビニで買ったり、移動中にさくっと飲んだりと、シーンを問わずに日常の一部として取り入れられる。
ヨーグルトや納豆、キムチ、白湯などいろんなアイテムがある中で、一つの選択肢として『午後の紅茶 アップルティープラス』を手に取ってもらえたらうれしい。
気の乗らない仕事や、気が重い会議に向かうときにも、これと一緒なら「こんなときでも私はちゃんと腸内環境を整えているんだぞ!!!」と自己肯定感が生まれそうだ。
新生活、新学期が始まる人も多いであろう4月。
心機一転何かを始めるときに、新しい習慣を取り入れてみるのもおもしろいんじゃないかと思う。
そしてもし、かつての私のように、オフィスでストローをちゅーちゅーして注意を受けている新社会人の方がいたのなら。
そっと隣に行って、この商品を手渡してあげたいな。
散り始めた桜を眺めながら、私はぼんやりと妄想するのである。
茶葉の豊かな香りとアップルの芳潤な香りがダブルで楽しめる、甘酸っぱいおいしさのアップルティー。(国産りんご果汁0.4%使用)
そのおいしさを表現しながら、機能特徴の視認性を高め、“おいしく紅茶を飲みながら手軽に腸内環境を改善できる”ことが伝わるデザインに仕上げました。※中身の味わいの変更はありません
【機能性表示食品】
●届出表示:本品には、ガラクトオリゴ糖が含まれています。ガラクトオリゴ糖は、ビフィズス菌を増やして腸内の環境を改善し、便通を改善することが報告されています。
●食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。
●本品は国の許可を受けたものではありません。
●本品は、疾病の診断、治療、予防を目的にしたものではありません。
【プロフィール】張 碩(ちょう しょう)
キリンビバレッジ株式会社 マーケティング部 『午後の紅茶』ブランド担当。
2011年入社。キリンビール近畿圏統括本部大阪南支店で業務用エリア営業や、東北統括本部で営業企画を経験後、社内公募制度で2018年にキリンビバレッジのマーケティング部に異動。現在は『午後の紅茶』の健康シリーズや新商品を中心に、イベントやコラボ企画なども担当。