120年ブランドを守るために必要なことは? 『小岩井 純良バター』の“小さな”挑戦
キリン公式noteより(公開日2022年3月24日)
明治時代から変わらぬ製法で作られてきた『小岩井 純良バター』は、今年で誕生から120周年を迎えました。
クリームに乳酸菌を加えて発酵させるヨーロッパの伝統的な製法で作られる同商品は、発酵バターと呼ばれるタイプのバターです。芳醇な香りとコクが大きな特長で、これまで長きにわたって人々に愛されてきました。
そんな『小岩井 純良バター』が120周年という節目のタイミングでリリースしたのは、従来のサイズよりも小容量化した新商品でした。
そこにはどのような意図があり、次の時代に向けてどんな意思を繋いでいこうとしているのか。ブランド担当の松瀬希穂に話を聞きました。
ー松瀬さんは『小岩井 純良バター』のブランド担当になってから約1年半で、昨年はnoteの『小岩井とはなやぐ暮らし』という企画にも何度か登場していただきました。自分の言葉でブランドや商品について話す機会が増えて、何か心境の変化はありましたか?
松瀬:『小岩井 純良バター』に対する誇らしさは入社してからずっと変わっていませんが、この商品を担当させてもらう重みを強く感じるようになりました。
ー「重み」というのは、どういった部分に感じているのでしょう?
松瀬:『小岩井 純良バター』は、今年で誕生から120周年を迎えます。長い歴史のなかで言えば私が担当する期間はほんの一部にすぎません。ですが、これから先も『小岩井 純良バター』はお客様から愛される存在でいてほしいと考えています。そのために、私たちの代でブランドを途切れさせるわけにはいきません。そういう部分に重みや責任を強く感じるようになりました。
ー120年の歴史を持つ商品の未来が自分たちにかかっているというのは、ものすごいプレッシャーでしょうね。
松瀬:そうですね。だから、もっとたくさんの方に『小岩井 純良バター』を召し上がっていただけるよう、魅力をお伝えしていかなきゃいけないという気持ちでいます。
※写真は旧パッケージです。現在は販売されていません。
ー改めて『小岩井 純良バター』の魅力はどんなところにあると思いますか?
松瀬:やはり1番の特長は華やかな香りですね。口に入れたときの香りの広がりがとても芳醇で、パンに塗っていただくだけでなく、お料理でも活躍してくれます。
最近作ってみておいしかったのは、フライパンに千切りの白菜を敷き詰めて、下味をつけた白身魚と『小岩井 純良バター』をのせて蒸した料理です。白菜とバターの相性が最高なんですよ。
ーおいしそうですね!最近は家で料理をする人が増えているという動きもありますが、そういった影響は『小岩井 純良バター』にもありますか?
松瀬:そうですね。おうち時間が増え、家での食事にお金をかける人が多くなっているなかで、以前よりもバターを買う人も増えています。お中元やお歳暮などのギフト需要が減っているので、もっと日常使いしていただける商品に育てていけたらなと思っています。
ー3月1日には、これまでよりも小さなサイズの『小岩井 純良バター』が発売されましたが、どのような商品なのでしょうか?
松瀬:これまでは160g入りで705円(税別)の1サイズのみを販売しておりました。今回のリニューアルで、90g入りで495円(税別)の小容量タイプを新たに加え、2サイズからお選びいただけるようになりました。
『小岩井 純良バター』は120年間ずっと同じ製法で作られていて、容器の蓋やラベルの素材の変化はありましたが、デザインや内容量は1976年から変わっていませんでした。商品としての存在が大きすぎて、簡単に手を加えられるものじゃなかったんですよね。
ーそうであるにも関わらず、小さいサイズの新商品を出すことになったのは、なぜだったのでしょうか?
松瀬:理由はいくつかあるのですが、まずは、お買い求めやすい価格帯で提供したいという想いがありました。一度食べていただければ『小岩井 純良バター』にしかないおいしさを体験していただけると思うのですが、価格によって手に取りづらいというお声もあったんですよね。そういう機会損失を減らしたいと思って。
もう1つは、世の中全体として世帯人数が減ってきているという理由です。昔は大家族が当たり前でしたが、今は単身世帯も増えています。それに伴って小容量のニーズが高まっているという背景もあったので、使い切りやすく、鮮度が保てる小瓶の販売を決めました。
松瀬:期間限定でラベルのデザインも変更していて、瓶に「変わらないおいしさ120周年」という文言を入れているんです。もともとは「120周年」という文言だけを入れるつもりだったのですが、お客さまにとって有意義な情報がより伝わるように、「変わらないおいしさ」という一言を付け加えました。
ただ、全面的にデザインをリニューアルしてしまうと、このパッケージに慣れ親しんでくださっているお客様が戸惑ってしまう懸念があったので、一部のみの変更で、期間限定仕様ということになっています。
ー新しい層に届けたい新商品だけど、同時にずっと買ってくださっているお客様への配慮も必要だったんですね。
松瀬:そうですね。「これじゃなきゃダメなんです」と言ってこの商品を選んでくださるお客様もいらっしゃるので、ちゃんとお店で見つけやすいということも意識しました。
ー120周年という記念の年に派手なことをするのではなく、今の時代の生活に沿った新商品をリリースするというところにブランドの姿勢を感じますね。
松瀬:はい、今の時代に自分たちができることを考えたときに、こういうアイデアが形になりました。
ー「もっと日常使いしていただける商品に育てたい」というお話がありましたが、今後は食卓における『小岩井 純良バター』が、どういう存在になってほしいですか?
松瀬:あくまでもバターなので、主役を引き立てる存在であってほしいという想いはずっと変わらずにあります。だけど、日常に欠かせないものとして、食卓の真ん中に置かれる商品になってくれたら嬉しいですね。
あとは、”『小岩井 純良バター』そのものが「醗酵バター」であること”をもっと知ってもらいたいと思っています。
今回のリニューアルで、非発酵バターではなく発酵バターであることを、より認知していただくために、シーリングスタンプに「醗酵バター」と入れています。あえて「醗酵」の2文字にしているのもこだわりのポイントです。
昨今、発酵食品が注目されていますが、『小岩井 純良バター』も発酵食品の1つとして、おいしくて香りもいいバターだということを伝えていきたいです。
食の多様化の中で、バターに限らず様々な食品が流通していますが、『小岩井 純良バター』の良さに気づいてくださる方が増えるとうれしく思います。
また、最近はフォーマルなギフトを贈る機会が減ってきています。ギフトを贈る習慣のある世代の方は、『小岩井 純良バター』をご存じで、今でもよくお使いいただけるのですが、その他の世代の方々にはあまり届いていないのが現状です。なので、今回発売する小瓶を入り口に、若い世代の方々にも手にとっていただけたらなと思っています。
ーブランド担当として、次世代を担っていく後輩の方々にどんなことを伝えていますか?
松瀬:『小岩井 純良バター』は、小岩井乳業のなかでも象徴的な商品であることや、その重要性を伝えています。商品のことだけでなく、循環を意識した農場での取り組みや、脈々と受け継がれてきたものづくりの姿勢など、私自身が担当として感じてきたことも伝えていきたいですね。きっと次の世代の人たちは、小岩井乳業のDNAを守りながら、私が考えつかなかったようなことにもチャレンジしてくれると思うので。
ー「小岩井乳業のDNA」とは、どんなものなのでしょう?
松瀬:乳を大切にして商品を作るってことですね。私たちは乳がないと何もできないので、それを無駄にしないような製造を心がけています。
『小岩井 純良バター』の小容量化には、「最後まで食べきれないことが減るように」という考えも反映されています。小瓶にすることで食べ切りやすくなるのは、乳を無駄にしないことにも繋がってくるので。
ー自分たちが乳を無駄なく使うだけでなく、その先のことまで考えないといけないんですね。乳を大切にして作った商品を無駄なく食べてもらうための工夫が。
松瀬:そうですね。『小岩井 純良バター』に関して言えば、味や製法は守り続けていくべきものですが、内容量やデザインは時代に合わせて変わっていかないといけないところなのかなと思っています。もちろん、どんなに見た目が良くても、中身が良くないと使い続けていただけないので、1番コアな味と製法の部分は守っていかなくてはいけません。
ー昔から同じ味を守ってきた商品が、形を変えながらも存在し続けてくれることって、長く使っている人にとっては大きな支えですよね。
松瀬:これからも変わらないおいしさを守っていくためにも、今回の小容量化をきっかけに新しいお客様にも届くといいなと思います。
『小岩井 純良バター』は、90g(税別 495円)と160g(税別705円)の2サイズ展開で販売中です。初めての方は、小容量タイプから試してみるのもおすすめです。ぜひ、食卓に取り入れて「小岩井とはなやぐ暮らし」を楽しみませんか?